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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その1


『ヴァルフェリアオンライン』において、企業ギルドは通常のギルドと異なり、ランキングの掲載はされない。

『宣戦布告』システムというPvPからは除外される。

ギルドの維持に必要なクエストクリアによる貢献を確保する必要はない。


などなど……通常のギルドにある枷から解放されている。

だが、それ以外のシステムは共通なのだ。

ギルドのランクを上げ、敷地や他国に進出し、内装を整備する。


そうする理由は、フィールドや掲示板、メニュー画面の広告の掲載頻度に影響があった。

活躍している企業は注目される。当然の事だ。

ワールド内、全てに広告を載せるには全てを巡る必要があるという。

企業にも苦労させる仕様となっていた。


一方で『ヴァルフェリアオンライン』の影響力は高い。

何だかんだ、事前登録者数は同時期にスタートした『Fatum Essence Online』を優に超え、過去のVRMMOの中でも歴代最大を叩き起こしたという。

加速時間もそうだが、プレミアムパックによる安心仕様は、一般プレイヤーにはウケが良かった。

PKやVRMMO特有の仕様が怖いという人も一歩を踏み出す切っ掛けになっている。


そして、企業ギルドがランク上げと施設拡大に勤しんでいる理由がもう一つ。

ギルド内の施設や個室を他プレイヤーに提供する為である。


これは他VRMMOの企業ギルドでも行われている一種の戦略。

VRバイターや受験生、会社員が作業場として利用する為、安全な場所を企業が提供する。

その為のギルドの会員費で新たに儲けるシステムだ。


利用する者は無論多くいる為、彼らが快適に利用できるよう個室の整備や、ギルドの拡大をする為にプレイヤーが雇われるのだ。

『タク』はそういう企業助っ人で活躍するプレイヤーの1人である。


彼の過去を語ると話は長くなるが、昔からVRMMOに慣れ親しんでおり、仕様を理解しているので企業ギルドにスカウトされた。

正確にはタクの学生時代の生徒会長が、彼の実力を見込んでスカウトしたのである。


「よしっと。これで、このギルドに設置する家具は全て完成したよ!」


彼の主な活動はクラフト。

施設内の個室の家具や内装から外装、庭の整備などする他、ギルドの面々の装備を用意していた。


「やったにゃ! これで一段落ついたにゃ、タク!!」


タクを褒めるピンク髪の猫の獣人『ミミ』は彼の幼馴染。


「は~。腹減ったよ。タク、完成祝いにパーッと上手いモン食わせてくれよ~」


ガサツな口調の赤オーガ『アキ』は彼の中学時代の同級生。


「タク(にい)のオムライス食べたい」


淡白な表情の紫ベースの銀髪エルフ『シィ』は彼のいとこ。

タクからすれば身内同士で囲われているに過ぎないが、ハタから見ればハーレムのような構図。

リアルでも美人な彼女達は、一昔前VRMMOで騒がれていたプロプレイヤーでもあった。


「うん! 今日は皆の好きな物を作ろう!!」


だが、タクは気にしない。

物心ついた時から一緒にいた仲間のような存在の彼女たちから、恋愛感情を向けられても鈍感。

それでいて、人一倍に積極的で、物事に集中したら周りが見えなくなってしまう。

しかし、そんな彼によって昔救われた彼女たちは、彼の動向を「タクったら」と甘やかすように許してしまっていた。


彼らの元に、彼らを企業ギルドに誘った元生徒会長でありプロプレイヤーであった青ロングのヒューマンの『琴葉』が浮かない表情でログインする。

彼女の顔を見てタクは真っ先に「どうしたの、琴葉」と心配した。


揃った面々を見て琴葉が言う。


「ちょうど良かった……これを見て欲しいの」


タク以外にも見れるように画面共有する琴葉。

何かのグラフで、そのほとんどが真っ赤に染まっているのだ。

全く分からない様子で頭をかきながら、タクは「これって?」と尋ねたら、思わず溜息を漏らして琴葉が教えた。


「タクの()()()()()()()。ほとんど丸一日ずっとログインしているじゃない……! どういう事なのっ」


ミミたちが目を見開いてしまう中、タクは「アハハ」と申し訳なさそうな態度なのだ。

しかも、通常のVRゲームではない。

8倍の加速時間を用いたVRゲームを丸一日ぶっ通しで行う……凄さではなく、彼の容態に不安を抱くだろう。

タクは反省している様子を見せるどころか、嬉し恥ずかしさのようなリアクションで語る。


「だってログイン初日だったから、とにかくやりたい事が多くて……気が付いたらずっとログインしちゃったんだ。あ! でも食事とかトイレ休憩は挟んであるし、睡眠もゲーム内でとってあるから……」


「つ・ま・り。ずっ~~~~とやってた事には変わりないのね。ちなみに今日は? 今だってアキのシフトの時間でしょう?」


「えっと……」


戸惑い気味のタクに代わって、シィがしれっと告げた。


「タク兄はわたしの時からずっと一緒にいたよ」


「ええっ!? シィのシフトって今朝の七時からじゃないの! どうして交代しなかったのよ!!」


「ご、ごめん! 琴葉!! シィの魔法の練習に付き合っていたら、色々緊急のクエストとか入って、それをやってたら時間が……」


「もう! ミミとアキは? どうしてタクがいるのに疑問とかなかったのかしら?」


ミミは「タクが大丈夫って言うから」、アキは「別にタクがやりてぇって言うから」と決まり文句な返事をする。

シィも「タク兄がいいって言うんだから別にいいでしょ」と言う始末。

流石に琴葉は言った。


「タク。()()()()()()()()()()()()()()()どうするの? 私は心配で言っているのよ」


「あ……ごめん。つい、癖で」


「皆もタクが病院に運ばれた時、一緒だったでしょ? もうあんな事が起きないよう、タクに無理はさせないで」


「ご、ごめんにゃ」 「そうだったな…悪い」 「………」

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