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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【あなたがアイドル】忠実


「はぁ!? なんで、私達の動画よりこっちの方がピックアップされているのよ!!?」


花が激怒しているのは、先日あげた幸助のドラマが注目トピック入りしている事。

二十万再生越えている花たちが登場する動画ではなく。

数百再生程度の幸助の動画が取り上げられてばかり。

マネージャーが必死に伝えた。


「美月さん……その、これは『あなドル』の仕様なんです。どうする事もできないんです」


「再生数低い方を注目させたって意味ないじゃない! 納得できないわ!!」


「違うんです……彼らの方は()()()()()()()()()()()()()()NPCのAI判定で高く評価されているだけなんです!」


「……なっ!?」


『あなドル』におけるステータス反映は、NPCの注目度に紐づけられる。

一般的なVRアイドルやゲーム実況とは違い、ステータスとアイドルのアクション判定がNPCの注目ポイントに換算され、取り上げられるのだ。


どんなに歌声が上手くても、NPCのAI判定に引っ掛からなければスカウトされず、公な活動もできない。

一方で、どんなに魅力がなくてもNPCのAI判定に引っ掛かれば『あなドル』内では注目される。

この絶妙なバランスにより、知名度の高いアイドルも知名度の低いアイドルも満足できる内容なのだ。


今回の――ドラマという作品媒体に関しては、原作作品を如何に忠実に再現されているか。

これがAI判定基準となる。

短編としてまとめ、本来あるべきシーンをカットした花たちのドラマ。

原作を忠実に、あるべきシーンをちゃんと撮影した幸助たちのドラマ。

AIは後者を()()()評価しただけなのだ。


花たちの演技が良いか、花たちのステータスや知名度、はたまた動画の再生数ではなく。

ただ、しっかり原作を再現しているか。

普通に、原作をリスペクトしているのか。

花たちのドラマは、初歩中の初歩で躓いている作品なのだから論外なのである。


それを理解した花は、改めてマネージャーに問い詰める。


「ねぇ。どうするのよ」


「ど、どうもできません! 彼らは規約にのっとって作品を投稿しているだけであって……」


「違うわよ! さっき説明した通りなら、私達のドラマがAIで評価されないって事でしょ。AIが、NPCがオートで取り上げられないって、そういう事よね。だから、どうするのって聞いてんの」


「そっ……それはぁ……多分、広告宣伝を積極的に行う、かと」


「多分んんっ!?」


慌ててマネージャーが話を逸らす。


「注目トピックに取り上げられなくても、美月さん達の評価には影響されませんので安心して下さい! そ、それに注目トピック入りしたからと言って、再生数が劇的に伸びる訳でもありません」


謂わば『あなドル』もWFOのようなNPCの評価システムが導入されているだけ。

実際、NPCの評価システムを大体のプレイヤーが察しているので、注目トピック入りしたからと言っても、面白い作品とは限らない。

むしろ、AI判定を利用してトピック入りしたからと、見向きしないのが常なのだ。


分かっている。

そういう仕様なのだと理解はしている。

なのに、アレだけ頑張った自分の作品より適当な姿勢で原作を再現しているドラマが視界に入る事に花が納得できなかった。

花を含め、関係者たちは全てを仕方ないと受け入れる他ない。


更に、花を苛立たせる事が一つ。


一部のレギュラーメンバーのキャスティングが決定し、簡易的な読み合わせを行った。

結局、乙女ゲームのヒロイン役は花。

フローラ役が香のまま。


周囲のアイドル達は、人気アイドルの花をヒロイン役に抜擢する為なんだろうと穿った見方をしているが。

花は原作の転生者ヒロインの暴走を把握しているので、内心穏やかではない。

一方で、香の方は……


「生徒会室には関係者以外立ち入りを禁じているだけではありません。ゼウェス王立学園では校則により生徒会役員以外の生徒が介入ないし立ち入りが発生した場合、該当生徒を退学処分する措置となっております。残念ながら、彼女は……」


驚いた事に、長い台詞を記憶しているだけでなく、滑らかに演技を行っている。

容姿も相まって、香がフローラ役なのは適任だと周囲が実感していた。

ただ、一人。

花を除いて……


周囲が「凄いね」と香を褒める中。

香はこう言うのだった。


「プロデューサーさんからアドバイスを貰ったの。フローラ……ううん。貴族の方々はアイドルみたいなものだって。国や領民の人々の為に頑張って、領民の方々もファンの人達と同じ、貴族の方を応援してくれる。そしたら、いつもコンサートで歌ってる時みたいに、何だか気持ちが込み上げてくるようになったの!」


勝手に調子づいている香を、ますます花は気に食わなかった。


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