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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【あなたがアイドル】公開


乙女ゲームの世界において、お邪魔キャラである『カンダタ』。

彼は不運にも転倒し、前世の記憶に目覚めた。

ただし、前世持ち主人公にありがちな『前世でやった乙女ゲームの世界に転生した事に気づいた』なんて定番展開にはならず。


それどころか、カンダタの前世には『乙女ゲーム』なんてものが存在しない。

前世は貧民街出身で窃盗も犯罪も何のその。

汚れ役どころか、泥水啜るのが常の世界観に生きていた男性が転生してしまったのだった。


彼は領地のない男爵家の長男……名義上は。

物心ついた頃には、真っ当な暮らしはしておらず、父親は酒におぼれて、母親は蒸発。

カンダタは前世と同じく貧民街で食事や物の奪い合いに乗じていた。

そんな彼が魔力持ちだと判明し、仕方なく学園に入学する事となる。


「あ~クッソいてぇ~……俺、こんな所で何してんだ?」


カンダタは、学園の何たるかも理解していない。

というか。

彼を学園に放り込んだ国家も、法に乗っ取って義務的に放り込んだに過ぎず。

特別カンダタに期待している訳ではないのだ。

むしろ、彼が勝手に自滅してくれた方が助かるまである。


「貴族の連中と一緒にいても、しゃーねぇだろ。ここから出るか」


「らい? らい! らいらい!!」


「あ? んだよ、野良犬か」


独特の鳴き声をする白毛並みの小動物『カーバンクル』が駆け寄って来る。

大人になると額に現れる宝石がない子供のカーバンクルなので、カンダタが勘違いするように子犬のような見た目だ。

カーバンクルはカンダタから何かを感じたのか、自棄に鳴き声をあげる。


「らいらい!」


「ライライ? 変な鳴き声の犬だな」


「らい?」


「俺は餌なんか持ってねぇからな。貴族連中の所いってこい。えーと、こっちか?」


カンダタは学園の塀を発見。

ここから外に出られると塀を乗り越えようとしたが――


「待て」


突如、何者かがカンダタを呼び止める。

学園を巡回する兵士ではなく、汚れても問題ない簡素な作業着を着た平民の恰好。

つまり庭師の男性が彼を制止した。


しかし、カンダタは相手が貴族だろうが平民だろうが関係ない。


「なんだ? テメェ。俺はここに居なくてもいいらしいぜ。貧乏人は近寄るなって散々言われてるからよ!」


堂々と学園から脱走を図るカンタダの頭部だけが肉体から離れ、庭師の手元に移動してしまった。

これは庭師の彼による闇の魔法で起きた事象。

最早、回避することもできない状況のカンダタは、そのまま頭部を高速で回転させられる。


「う、おおおおあああああああああ!!?」


「らいーーーーーー!!?」


常人であれば耐えられず、三半規管が狂って吐くなり酔うなりしてしまうだろう。



「いや、俺はこんくらいで酔わねーからな。伊達に『DRDR(ドラドラ)』やってねぇよ」


と、『カンダタ』を演じた幸助本人は平然としている。

第一話最後の撮影シーンであり、物語では一番初めのシーンを取り終えた所。

AIマネージャーは唸りながら関心した。


「私は『どらどら』が何なのか知らないけど……でも、凄いわ。大宮くん!」


「『DRDR(ドラドラ)』……あのFPSの奴だろう?」


そう会話に入って来たのは、庭師の『ノア』を演じた薬師寺。


「自由度の高い故に、上位は体幹やら反射神経のスキルが求められるゲームだ。それをやっているなら、何故『あなドル』にログインしているのか不思議なのだが……」


「運動神経鍛える目的だよ。でもあの施設、他のアイドル連中が占領しやがって全っ然できねぇ!」


「あ、あぁ……あそこか……」


薬師寺は複雑な表情で納得する。

幸助の言う運動神経を鍛える場……『スポーツエリア』にある施設の一つを示していた。

だが、そこは基本ステータスの強化を終えたアイドルが、更なる上を目指す上位ランクの強化施設。

有名アイドル達が貸し切りをしたり、貸し切りでなくとも知名度の高いアイドルが占領する事で、過激ファンが防波堤の如く威圧や妨害をする有り様。


一方で、AIマネージャーが「ええ?」と素っ頓狂な声を上げた。


「そうだったの!? 私、初めて聞いたんだけど!」


「お前に言っても仕方ねぇだろ」


「うっ、それは……でも、ひょっとしたら、あそこを借りる事が出来るようになるかもしれないわよ!」


「え。お前そんな凄い力あったの?」


「私じゃなくて! 大宮くんがアイドルを頑張れば、よ!!」


「そっちかよ。無理だろうけどな」



幸助たちが撮影したドラマは何事もなく普通に第一話が公開された。

しかし、再生数は()()()伸びない。

前回は人気アイドルグループである花たちが演者として登場したからこそであって、知名度ない幸助たちになど誰も目もくれないのだった。


一方で、全く伸びていない()()()()()

何故かと問われると『あなドル』の特徴の一つ。

NPCによる判定システムが影響していた。

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