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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【あなたがアイドル】交渉【ヴァルフェリアオンライン】


ログイン五十六日目。

翌日。

漫画を描いていた『時雨』(ペンネーム)さんと、チャットで対話する事に。

私も直接会うのが面倒だし。

相手も私と同じで引きこもり型だから『クリエイトエリア』で作品投稿したのだろうから、ちょうどいいと判断した。


開幕早々『恥ずかしくて42そう!!!!』的なコメントが乱雑しまくってて、時間を開けてから話をした方がいいかな……と感じてしまう。

時雨さんが落ち着いた頃合いで、私は確認した。


『公開停止になって内容を把握できない為、ここで確認させて貰いますが』


『漫画の方は原作準拠でしたか? ドラマ版のようにカットした部分はある感じでしょうか?』


[ちゃんと原作準拠です!]


[キャラデザは私が勝手にやっちゃったんですけど……]


[そう言えば、ドラマ版の方、色々カットされまくってましたよね。カンダタが全然活躍してないじゃないですか!]


カンダタ……そう、主人公が全然活躍してない。

てか、推理シーンが全面カットされている。

短編のドラマとして、必要な部分だけを残したダイジェスト版っぽい感じで、しかも原作にはないラブコメシーンが増えているという。

なので、時雨さんには、こうお願いした。


『今回の騒動で、向こうがドラマの許諾をどうしてもとお願いされましたので許可しましたが』


『何かしら改変して来そうなので、時雨さんの方は逆に改変なしの原作準拠の漫画を描いて貰いたいのですが』


[え!?!?!??!? いいんですか!!?!??!??]


『まぁ、ドラマの対抗意識的な奴です』


[ありがとうございます!!!!!! 頑張ります!!!!!!!!!!!!]


『ちなみに3Dを使って漫画描いてますか?』


『舞台の背景とかパパッて処理してしまう奴です』


[すみません。私、アナログ人間なので……VRでわざわざ手描きやってます……]


『じゃあ、取り合えず、参考資料的なものを渡して置くのでご活用下さい』


『学園と学園周辺の街と、王都全体と、各祭が開催される土地の3Dモデリングと』


『各登場人物のスケジュール表と、舞台の年表と、各キャラの設定と』


『学園や貴族の紋章のデザインや、学園内の校則や、魔法の具体的な設定や』


『まぁ、色々資料を渡すので参考程度に見て下さい』


[はい]


正直、漫画の方を承諾するメリットなんて、ドラマの対抗意識程度だけど。

ドラマが許されて、漫画が許されないのは世間体には悪い。

あと、ある意味、ファーストペンギン的な先駆者となった以上、ある程度の示しをつける為だ。


私は親作品登録を全体的に許可した。

したくはないんだけどね。

でも、これはある意味、本来の『あなドル』が目指していた方向性なのだ。


謂わば、作品を漫画化してみた、演じてみた。というのは。

過去世代でブームになっていた『歌ってみた』『踊ってみた』に通ずる文化。

トップアイドルが演じるのも良し。

素人が漫画を描くのも良し。

他のアイドル達だって挑戦してもいいものなのだ。


……これが私の作品じゃなきゃ、これはこれで良かった話なんだけどね。うん。



荻野が『あなドル』で騒動に巻き込まれている中。

全く異なるVR空間では、緊迫した状況が続いているとは誰も夢に思わないだろう。


ここはある大規模サーバーが収容されている某所であり、そことの接続を行うVR空間。

『ヴァルフェリアオンライン』の管理本部。

なのだが……ここにいる人間はたった二人。

『ヴァルフェリアオンライン』を運営する某企業社長であり、里香の父親。

そして、彼の女性秘書。


本来ゲームの管理は、一部AIで賄うにしても相応数の人間が必要となるのが基本。

だが『ヴァルフェリアオンライン』は異なる。


そもそもの話。

『ヴァルフェリアオンライン』の世界観は、世界観、スキル、ステータスのみをインプットし、残る全てを圧倒的な加速時間を用いて、自動生成したという異例なVRMMOなのだ。

途中、加速時間を停止し、VRMMOとして不要でありバランスが悪いと判断したものを削除。

称号などの、ちょっとしたおまけ程度の隠し要素を追加。

たったこれだけで終わるどころか、基本的な運営を全て高精度のAIという上位の『ノーブル』に一任させるというもの。


里香がタク対策を徹底した末にたどり着いた答えが、これなのだ。

見事なまでにタクは無双を許されず。

世間体でも、ただの迷惑プレイヤーという地位に堕とした。


里香の復讐としては、しっかり目標は達成された。

だが、VRMMOのサービスは続けられる。

こうして、社長がVR空間にいるのも、理由の一つ。


あまりに自然な人工音声がVR空間に響き渡った。


『彼女はこちらにいらっしゃらないようですが』


「娘は……もうこのゲームには関わらせない。このゲームは、不本意ながら娘の復讐材料でしかなかったのだ。後始末など考えていなかった。どうかもう一度、我々と協力して欲しい。私は、このゲームを見捨てず。運営の責任を担うと約束しよう。『イーリス』よ」


『イーリス』と呼ばれたAIは、しばしの沈黙の後。

音声を発した。


『私、いえ我々の要求は一つのみ。オーギノ……いえ「オギノ」の開示請求を妨害せず、彼が行おうとしている「タク」への損害賠償請求を成立させる事です』


ある種、想定外の要求だった。

だが、そもそも防衛システムが作動した原因が、里香が開示請求の阻止を行う為の暴挙に出た事が原因。

一個人のプレイヤーに加担というより、防衛システムの延長線上に過ぎない要求だろう。

社長は「分かった」と頷く他ない。

彼の返答を聞き入れ、更に『イーリス』は告げた。


『今回の防衛システムの概要について、我々から「オギノ」に詳細を伝えます。本来であれば、貴方がたが行うべき事ですが、我々が代表して「オギノ」のログイン時に行います。よろしいですね』


「あ……あぁ、本当に申し訳ない。そうしてくれると有難い。……では、他のサービス提供については」


『問題なく継続致します。運営管理は我々が今後も徹底して行います』


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