【まほ★まほ】虚無
ログイン四十五日目。
昨日、私がFEOにログインしてうさぎ達から袴作成講座を受講していた頃。
『まほ★まほ』では、またもや事件が発生していた。
『まほ★まほ』の中心であり社長的ポジションの無茶苦茶な運営方針と、子供向けであろうとするあまり、経営を考慮していない姿勢。
更に、誕生日イベントに対する無茶な要求などなど。
不満が積もり積もって、運営メンバーがストライキを決行。
そして『まほ★まほ』は再度メンテナンスを行い。色々仕様変更したという。
二度あることは三度ある。
最早ここまで来ると呆れてしまう他ない。
炎上しているのに、サービスは継続し、補填も行う。
私も「やっぱりな」と思いながら、仕様変更後がどうなっているか調査する。
だが……私もだが、恐らく他ユーザーたちも困惑しただろう。
まず、ログインした際のロード時間。
圧倒的に速い!?
何度もログインしていたからこそ、ロード時間の速さを実感できるのだ。
本気で急にどうした!?
昨日の内にいい技術者が導入されて、修正を施したのかってくらいの変わりよう!!
店舗に移動した事で理由が分かった。
マイルーム空間がオープンワールドと一体化していない。
今までサーバーごとにオープンワールドがあり。
そこに居住区から公共施設、探索エリアが全部丸ごと一体化していた事でサーバー負荷が大きかった。
でも、これなら仮にオープンワールドが鯖落ちしても、マイルーム空間は鯖落ちしない。
マイルーム空間内でクラフトしている人には安心仕様だ。
というか……
マイルーム空間だけではなく、都市役場、学園などの公共施設、NPCの販売店、探索エリアまで個別仕様になっていた。
オープンワールドになっているのはそれぞれの中央都市だけっていう。
そして……補正については結構大幅に修正されていた。
昨日作成したチャロさんの誕生日プレゼント予定の水晶玉が、以下のようになっている。
『バースデークォーツの水晶玉』
はい、これだけ。
数値どころか品質の概念すらなくなりました。
スキルも補正もなくなりました。
武器だけではなく、フクエさんに作って貰った服の補正すらなくなっている。
レジンのペンデュラムにあった補正も、妖精の補正もないです。
ああ……終わった。
阿保みたいな補填アイテムとか、どうでもよくなるレベルで終わってしまった。
「きゅ?」
常盤くんが「どうした?」と首を傾げているのを撫でてあげる。
やっと、常盤くんと触れ合える程度に仲良くなってきたのだ。
まぁ、うむ……君は悪くない。
絶賛炎上中の現状を見て、再々メンテナンスが行われるかもしれないし、気が変わるかもしれない。
でも、果たして、まともな人材が出て行った跡。
頭子供優先社長を止める人はいるのか……?
期待はできない。
一旦、効果がなくなったタロットカードを店頭から取り下げ、再度AIによる値段設定を行う。
『イトスギの死神』 値段:100M
やっぱり、このゲーム終わった。
在庫が勿体ないので店頭販売は再開しておく。再度値段設定したものにね。
すると『NPCが商品を購入しました!』とログが流れる。
どうやら、マーケットからネームドではないモブNPCが勝手に購入していくシステムに変更されたらしい。
プレイヤーが購入しなくても、問題ない仕様ってか。
一応、ぶるーはわいさんに今後どうするかのメッセージだけ送っておこう。
今回の騒動で、再び彼女が萎えていれば、無理にフィールド探索をする理由も……てか、もう素材集める必要性すらなくなっているんだけど。
ますます、パーティ組んで探索する必要性がねぇ!
あとは……ちょっと確認がてら、メニュー画面も確認していく。
おっと? プロフィール設定が出来るじゃないか!
ログイン有無だけでなく、ログイン時間の非公開ができるぞ!?
てか、ワールド形態が大幅に変更されて、主婦集団みたいな凸攻撃も受けないよな。
あとは……再度、仕事をやってみる。
適当に翻訳作業を行う。
………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………
…………………………………………
な、なんてことだ!?
常盤くんが! 寝ているぞ!!? 仕事の邪魔をしない!
補正が全てぶっ飛んだ影響で、カーバンクルの仕様も変化しているのでは?と睨んだ通り。
とは言え。
じゃあ、ログイン時間非公開にしますっていうのは、バイター疑惑を高める要因だ。
私はあえて、ログイン時間公開の状態にする。
お店も開業し続け、それでいて在庫補充を行う予定だ。
バイター疑惑を高めない為に、ここは徹底しておく。
こんな状態では仕事がまともに出来ないって?
いいや、違うね!
バイターの良いところは、自分のペースで仕事が出来る事。
それ即ち――常人よりも早く仕事を終わらせても問題ないのである!!!
加速時間を利用して長時間仕事をするっていうのが怪しまれる要因なのだ。
故に私は、手際よく仕事を切り上げる事で、自分のフリータイムを増やす。
如何に『まほ★まほ』が終わったゲームになろうと、加速時間がある限り私は利用する。
私が引退する時は――『まほ★まほ』が採算取れず、経営限界により加速時間を廃止する時である!




