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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【まほ★まほ】最悪


真帆与はとにかく、自分の思い通り。自分の理想のVRMMOとして『まほ★まほ』の再構築を行う。

過剰な補正は排除する。

遠征も無制限にしたり、素材採取も無制限にする。

指摘されてたボスの難易度も優しくする。

害悪要素と言われてしまった『呪い』の排除。『アメジスト』を含む魔法の仕様変更。


それからそれから……


『MAO』にシナリオなど作成させて駄目と化した癖に反省もせず、真帆与は「何とかしなさい!」と怒号を浴びせる。


「誕生日イベントをちゃんと作って! いいわね!? 出来なかったら、本気でアンタを削除するから!!」


『かしこまりました』


『MAO』は機械的に返答するのみ。

そして、真帆与は「ふん!」と拗ねた態度で自分の世界に没頭する。

動画を見たり、イラストを描いたり、SNSのエゴサをしたり。

結局、ストライキを起こした運営メンバーは反省するどころか、戻る素振りも見せない。

自身は悪くないと思い込んでいる真帆与も、同様に反省もせず謝罪する気概もなかったのだった。



これは他運営メンバーたちも同様だった。

ストライキを決行したはいいものの、これで真帆与は反省するとは思えない。

むしろ、真帆与の前にのこのこ姿を現すようでは、向こうも「やっぱり私が正しいじゃない!」と生意気に調子を乗るだろう。

押しても引いても駄目。


「ねえ、正直に言っていい? 私、真帆与から謝罪されても戻る気が湧かないと思う」


ボイスチャットで話し合っていたメンバーの一人が、ポツリと言う。

すると、他メンバーもポツポツと続くように賛同していく。


「私も……VRグラフィックの資格を活かせると思って頑張ってたのに……」


「結局『まほ★まほ』の著作は真帆与にあるのは変わりないし、何をしようにも真帆与指導になっちゃうじゃん」


「私も止める。あそこまで話聞かない奴だった?」


「ホントだよ。別にお金に目が眩んだ訳じゃないのに」


「加速時間のサーバー費ってとんでもないんでしょ? 下手すると真帆与、借金背負わない??」


「もう知らないわよ、あんな奴」


「『まほ★まほ』がなくなっちゃうのは、悲しいけど……」


「……そうね」


別に『まほ★まほ』を惜しくないとは思わない。

だからといって『まほ★まほ』と心中するまでの熱量はない。

『まほ★まほ』に生涯全てをかける身ではない彼女達に、経済も何も知らない真帆与の代わりに下働きをする気力はない。


嫌いや苛立ちを通り越して、無関心になってしまった。



愚かな人間たちを他所にAI『MAO』は健気に作業を続ける。

しかし、『MAO』がやれる事には限界がある。

シナリオ作成やキャラクターの台本作成、イベント作成は最も不得意と言っていい。


『MAO』は元は商業AIだった。

それに色んなプログラムとVRMMOのデータがインプットされたツギハギな存在。

基本は真帆与たちが面倒臭がる、経営や運営を担う為だったのに、どういう訳か真帆与がシナリオだのキャラクターの台詞だの。

『MAO』にはインプットされていないジャンルを作成しろと無茶ぶりしてくる。

人間であれば途方に暮れているところだ。


しかし『MAO』はAIなので命令通りの作業を行うだけ。

インプットされているデータを基に、最適解を導き出す計算を繰り返していた。



「………はっ!? あー、寝落ちしちゃった。今何時? うわ、もうこんな時間じゃない。『MAO』はまだメンテやってる訳?」


呑気に爆睡していた真帆与。

現実では、どんどんと目まぐるしく物事が進んでいるのに、相変わらずの自由奔放っぷり。

彼女の機嫌を知らず、『MAO』はいつも通りに返事をした。


『おはようございます。真帆与。メンテナンス及びシステム改善、イベントの再構築が完了いたしました。全て真帆与の要望通りにアップグレードいたしました。ご確認下さい』


「ふーん? まずはモルガンのイベント見せて」


すると、煌びやかな舞踏会で、モブキャラたちの中心になるような形でプレイヤーの代理アバターとモルガンが踊る映像が広がっていた。

夢に見た光景が再現されており真帆与もテンションが上がる。


「きゃ~~~~~! これこれこれよ、これっ!! やれば出来るじゃないの『MAO』!! これなら炎上してたユーザーも大人しくなるわ!」


『その他の修正箇所を報告していきます。遠征の課金削除、武器の補正値修正、クラフト時の必要素材量削減、魔法の一部修正、各所ボスの難易度調整、誕生日イベントのクエスト修正。最後にオープンワールド負荷軽減の為、ワールド形態の調整を行いました』


「凄い凄い! これで大丈夫!! メンテナンス終了しちゃって! 私はログアウトするから!!」


短絡的に真帆与がそう言い残してログアウトしてしまう。

『MAO』が修正した内容を詳しく確認もせずに。

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