【Fatum Essence Online】袴
エンディングと共に、歪空間の消滅が急速に進行した。
元凶がヴルトゥームであったが為に、仕方ない終わり方ではあるが、張角は名残惜しそうにぼやく。
「はぁ。生前と同じだのう……上手くいきそうな場面で、上手く事が進まん。風の神ではなく時空の神であったなど、誰も想像つかんわ! てかエッセンスの情報にも『風の神』ってあるんだけどー?!」
そうなんだよね……
まぁ、クトゥルフ神話というか、ハスターというか。
色々ごっちゃまぜで、設定が定まってないのもあるから、しょうがない奴だよ。
改めて張角が告げた。
「しかし、大勢で戯れるのは、いつの時代も楽しいものだな。退屈ではなかったぞ」
「さらばだ、名も顔も知らぬ適合者よ!」
こうして歪空間が消失。
適合者たるプレイヤーたちは帰還するのであった。
というのが、イベントのエンディング。
最後に『演者の駒』という特殊なアイテムを入手する事ができた。
『演者の駒』……多分だけど、今後のアップデートで追加される課金要素だ。
エッセンスリンクしている自身の演者以外の、他の演者。
つまり、他キャラを仲間――使用キャラにする事ができる特殊アイテム。
推しキャラを操作したいって人はいるっちゃいるから、そういう人向けの要素ね!
さて……誰に使うべきか。
ここは男性キャラを仲間に選ぼう。
だって、自分が操作するキャラであり、アバターになる事もあるからね。
だけど――ぶっちゃけると、FEOのキャラの九割、いや八割かな。
そのくらい女性キャラが占める割合が多い。今まで仲間にしたキャラも女性キャラ。
エッセンスリンクを再開したけど、それでも男性キャラは数少ない方。
ジャックさんとか、ハデスさんとか、カルナさんとか……うう~ん……
ツクヨミにない能力は……デバフ系かな。
レイド戦で、効率よく周回する為にフレンドにエレシュキガルさん辺りを選出してしまう理由がそれ。
って考えると『テスカトリポカ』さん一択だ。
以前からリンクしようとした矢先に、色々あって結局リンクできず終いになっておられる方。
攻撃もデバフも、あとクラフトもできちゃう。
結構、万能性能らしいが器用貧乏って奴らしく、全体的に補正が低めなんだとか……
太陽関連キャラのリンクを辿ったけど、間が悪くリンクできず。
今日は、別の事をしよう。
バイター……でも小説でも漫画でも、FEOの把握作業でもない。
現在、マイルームは畑や料理の仕込みをしているお供のうさぎ達以外にも、何やら製糸を行い、衣服クラフトの準備をしているお供のうさぎ達もいる。
イベントの新衣装の影響で衣服のクラフトが活発状態で、勝手で衣服の為の素材を作成するようになった。
そう、衣装。
珍しく服についてお供たちの力を借りたく赴いたのである。
「すみません。和服と袴の作り方を見せていただけませんか?」
お供のうさぎ達は『がってん!』みたいなノリで丸太を構えるが如く、道具を構えてくれた。
その際、確認画面が表示される。
[衣服クラフトにはエッセンスを消費します。使用するエッセンスを選択してください]
てな感じで、衣服クラフト。
もといキャラの新衣装作成にはエッセンスを消費するのだ。
今回は、周回しまくって余った『ツクヨミのエッセンス』を選択。
ちなみに一つ作るのに、エッセンスが五万必要。
うん、アホみたいに周回しまくって、レイド戦で回収しないとやってられない量が求められるのだ!
お供たちが、時短でちゃっちゃと作る時もあるが、私が最初に頼んだように作成工程が見たいと要望すると、粛々と作業する光景を観察させて貰える。
……で、何故この光景を観察、動画の録画も行っているかと言えば。
『まほ★まほ』のモルガンさんの誕生日プレゼントは、適当に購入しようかな~と思ったが。
馬鹿ほど高値だったので断念したってオチだったからだ。
ならば、自力で作成した方がお得である。
補正は拘らず、製糸作業を行い、布を織って、着物の型を作る。
手作業のクラフトポイントを稼ぐ狙いなのだ。
え? 武器屋なのに服は作れるのかって??
作れる。
でも作れるだけ。販売は不可能。
衣服屋ではないので、衣服屋の特権である服の型はないし、道具は自分で購入する必要があるぞ。
って、うさぎ達よ!
これ男性用の袴じゃないかい!!
ま、まぁ、そういう細かい注文はできないから、参考程度って事で。
色々観察してて、製糸作業や染料の着色作業は妖精たちに任せられそうかと思案する。
ただ、刺繡模様などは自力でやるべきか?
これも妖精たちに頼めるのか?
刺繍なんてした事ないもんな……流石に。
色々と言い聞かせられるから、何等かの形で妖精に模様を教え込んで、その通りにやって貰えるか試すか?
成功すれば、フクエさんの悩みも解決できるのでは。
最終的に完成したのは『月の神職』。
袴は藍色で月模様が白で映えるようになっている。ただし、派手さは抑えて控えめに。
上着はシンプルな白の和服――に遠目から見えるが、結構いい肌触りの和服だ。
神職の衣装にしては、ちょっと洒落ている。
どうやら、私が着用する事で、ツクヨミと一心同体となった際、補正が得られると説明があった。
専用装備かぁ。
強敵相手には使い道がありそうである。




