【Fatum Essence Online】別人
FEOの方でも色々と進展があった。
新たに『ゼウス』さんが私にエッセンスリンクの申請をしてきた。
最初、タクが復活したかとビビったが、そもそもタクのエッセンスリンクを受け付けないように設定していた筈なのだ。
なのに何故?
そう、ややこしい話だが、この『ゼウス』さんはタクではないのだ。
珍しく運営側から、私の所属するグループに対してお知らせがされており。
タクを迷惑者として判断しBAN処理したとの報告だった。
お……遅い! 対応が!!
有難い話ではあるんだけど、イベント始まる前にやって欲しかったなぁ!?
あ、勿論。新しいゼウスさんとのエッセンスリンクは承諾しました。
ある意味、斬新というか。
新しいゼウスさんは、クラフト面倒くせぇ~と言ってたり、グループチャットで駄弁ってたり。
関わり方がタクとは別人だ。
いや、別人だから別人なのだけど!
FEOの演者は最初の性格分析で設定されるので、タクと似通った人?と身構えてしまう。
でも、全然タクとは違う。
変に関わってこないし、彼は普通に攻略でつまずいてる所を素直に聞いて来たりするくらいだ。
やっぱり、タクとは似てない!
いや! タクと別人だから当たり前なんだけどさ!!
逆に何で彼はゼウスの適合者になったのか疑問ものだ。
タクの性格で該当するキャラがいないから、仕方なくゼウスの適合者になったとか?
色んなキャラが沢山いるとは言え、グループ枠を埋める為に仕方なくってのはありそう。
さて、イベントのシナリオでも見て行こう。
レイドボスは討伐しているから、イベント完了クエストって感じだけど。
張角が町で構えている最中。
我々プレイヤーの攻撃で倒されていく敵エネミーたち。
やがて、私が戦ったクトゥルフ(偽)のような靄のかかった人型が現れる。
「どうやら姿形までは留めておらんようだな。だが、洞窟にあった設備といい、意識がないとは思えんが……」
『いえ? ここまで来ればこちらのものです』
先程まで靄がかかっていた人型が、赤髪の女性騎士に変貌する。
外見は張角やクトゥグアのように別人の皮なのだろうが……
現状を見渡し、本イベントのラスボス『ヴルトゥーム』は呆れた風に溜息をつく。
「姿が安定するまでに、ここまで時間を要するのは手間でしたが……あとは貴方からハスターのエッセンスを回収すれば良いだけです」
「おい、ちょいと待ってくれないかい。『ヴルトゥーム』さんや。ここはワシと協力関係を結ぼうじゃないか」
「はぁ……それはどのようなメリットが?」
「理屈は差し置いて、お前さんもここに踏みとどまれるのは厳しいだろう? だが、ワシ自身は確かにこの地球にいる人間であったもの。そして、お前さんの兄弟たる『ハスター』の断片を引き寄せる特異点となっておる。ワシがいる方が得であろう」
どうやら張角は本気で交渉を試みているようだが、ヴルトゥームはあっけらかんとした態度で即答する。
「いえ? 必要ありません」
「あー。それはアレか? ある程度は自分自身でエッセンスを引き寄せられるから問題ないって判断しちゃってる奴??」
「エッセンス体顕現のエネルギー計算はご指摘されずとも、既に完了しております。貴方が所持しているハスターのエッセンスを回収すれば、彼の『時空間転移』を取得可能です。なので貴方は不要なのですよ」
「時空……? ま、待て。おかしいぞ。ハスターは風の力を有して」
「一体どういう勘違いか分かりませんが、彼は我が父『ヨグ=ソトース』の時空能力を引き継いでおります。その力であらゆる時空間を行き来する。私が最も必要な能力でして――」
すると、地面が激しく揺れ出し。
逃げ出す準備をしていた町の人々が倒れる。
怪しい花粉を撒き散らす花が地中より生えまくっていく。
脱臭機の機能で、花粉の幻覚作用はないようだが――人々がぼやいた。
「うう……力が抜ける……」
「一体どうなって……」
ヴルトゥームが告げる。
「私は無駄な行動をしません。時間稼ぎですよ。地中からハスターのエッセンスを吸収、回収していくだけで済みます。なので、私がここに到着した時点で作業は完了したのです」
「やはり交渉決裂か! ならばワシ自身の能力を行使する!」
張角の逸話である『黄巾の乱』の能力であろう。
黄色衣装のエフェクトが灯って、人々が再び立ち上がる。
「おお! 力が湧いてくる!!」
「早く避難をするぞ!」
張角は致し方ない様子で言う。
「ワシの補助があれば彼奴には勝てる! お前さんに任せたぞ!!」
こうしてヴルトゥーム戦が始まるのだが――
彼女ないし彼は、戦車だったり、大砲だったり、大槍や戦闘機やら、火力あるものを悉くぶっぱしてくる!! 馬鹿たれ!!!
しかも今回は強制イベント衣装で戦うので、いつもの竹戦術が使えない状況!
竹の繁殖力を活かして地面の補正範囲を抑制したり、竹の耐熱性や柔軟性を活用できれば……
なんだろう……露骨に私への対策されてる気がしない?
気のせいか……
代わりに、お供のうさぎ達が用意してくれた伸縮性ある糸や星を利用して、砲弾を跳ね返したり、銃弾を弾いたりしたが、明らかに操作感が難しい。
今回のイベントでお供たちのサポートアップを上げてなかったら、大変だったぞ。
そして、炎の壁で広範囲攻撃をするヴルトゥーム。
これは『瑠璃鯨』と同じ!
壁が波のように高くなる手前の段階で急接近して、回避する!!
私はお供のうさぎ達に伸縮勢ある糸による加速接近を頼み、ヴルトゥームへ攻撃を仕掛けた。
お、おお!?
猛攻が激しかったが、意外と耐久はない。
何度か攻撃を入れて無事に倒す事ができたのだった。




