【Fatum Essence Online】VRモード
ポッドから外へ出れば広大な土地が広がっていた。
現在の舞台であるフランスは、戦場と化してる。
黒煙が立ち上り、人々の争う怒声が響く。
ええと。
私が躊躇していると、私の隣にツクヨミが自動的に出現したのだ。
流石に驚きの声を上げる。
「…………」
「…………」
あれ? 喋らない?? あっ、会話機能とかない感じ? 戦う時に掛け声出る程度ってこと?
私が呆気に取られていると、ちょこちょこと足元に動く影が。
兎である。
簡易戦闘でも登場していたツクヨミが召喚?していた兎たちは、ちゃんとここにもいるようだ。
戦闘のサポートをしてくれるのかい?
「適合者よ。彼らに期待しない方がいい」
うわああああああ!?
急に喋らないで! てか喋れたんかい!?
ああ、うん。兎さん達だから、あまり強いサポートは期待しないよ!
私はツクヨミに対し、頷いておいた。
気を取り直してVR探索である。
簡易探索とは異なり、フィールドを自由に駆け巡って、敵と戦ったり、アイテムを入手したりできる。
あ、モンスターだ。
戦闘になると自動的に一心同体へ移行する。
切り替えの挙動は、スムーズだが奥義で硬直状態になると聞くし、あまり使いたくないなぁ。
使用感のチェックを続ける。
攻撃手段はツクヨミの背後に『勾玉』が八つ浮かび上がる。
これで遠距離攻撃をする。
『勾玉』を射撃する以外にも、帯状や円状に動かし、中近距離も対応可能。
また、地中から竹を無数に生やして攻撃、竹を武器にして自在に戦う事もできた。
時折、周囲にいる兎が竹をロケットのように飛ばしたり、食材を投げ渡してくれる。
食材を入手したら体力やSP(技のスキルポイント)を回復。
もしくは身体能力が上昇する。
ちなみに簡易戦闘と同じくフレンドも戦闘に呼び出せるが、
一定のゲージが溜まると奥義だけ使えるだけだ。一緒に戦ってはくれない。
これは、何故なんだろう?
ストーリーの設定上、プレイヤー1人で活動しているから、それに合わせて1人戦闘で! って事か?
ツクヨミに関しては攻撃のバリエーションが多いし、ジャンプしたら浮遊感がある。
と思ったら、普通に浮遊移動が可能。
すげー! 空中アクションできる!! 意外と動きが快適!
VR戦闘は文句なしの満点だ。
アクション部分だと、同時進行している他VRMMOの中では一番爽快感があるぞ。
[ツクヨミのエッセンスリンクLv2にアップ!]
しかも、こっちの方がエッセンリンクが溜まる!
パーティのフレンドのエッセンスも溜まるから……これハデスさん辺りにフレンド変更した方がいいかも。
VRモード中はパーティのフレンドをハデスとアルテミスに変更。
[ツクヨミのエッセンスリンクLv3にアップ!]
[冥府のエッセンスリンクLv2にアップ!]
[月のエッセンスリンクLv2にアップ!]
マジで、こっちの方が効率良過ぎ!
簡易探索は時間ない人用のモードなんだって理解しました!! しばらくはVR戦闘で強化します!
あと、宝箱からのアイテム回収も忘れない。
[スタミナオレンジ(金)を入手しました]
簡易探索で消費するスタミナを回復させるアイテムだ。金、銀、銅を三種類ある。
想像つく通り、金が一番回復し、銅が回復量が少ない。
他にも特産のアイテムを入手すると聞く。
[フランス産 生牡蠣を入手しました]
……………………………………………………か、牡蠣だあああああああああああああ!?
これ食べれる奴!?
うおおおお! やったぞ!!
今の内に生牡蠣を大量確保じゃああああああ!!!
そんな勢いでフランス編は終了した。
序盤だし、そんな強いボスは登場しなかったからね。
身構えてたけど、いうて難易度は高くなくて安心したよ。鬼畜ゲーだったら憤死してたかも。
フランスが舞台と聞いて大凡予想がつくだろうラスボスは『ジャンヌ・ダルク』。
聖女ではなく、闇墜ちしたジャンヌである。
中ボスは『ブリュンヒルド』。
原作を知らないので何出展の人か知らなかったけど、ジャンヌと同じ炎攻撃と古代文字で強力な攻撃をしてた、のかな?
でも、竹が炎に強かったので助かった。
竹は弾力性あって衝撃を吸収したり、よくしなる以外にも、コンクリートを突き破る生命力。
強みは様々あるけど、耐熱性にも優れているのだ。
中ボス、ラスボスの業火に焼かれることは無く。竹の攻撃は届いていた。
一方で竹の一撃で終わるという、間抜けな構図になったのは、まあ仕方ないよね!
最後の最後にタマモちゃんという狐耳のメイドがチラッと登場する。
「あれまあ、相性は悪くなかったのに。次は性能重視にしておきましょうかね」
彼女を発見したプレイヤーは発言や行動は出来ず、選択肢を選ぶだけ。
>タマモちゃん!?
所長は無事なのか!?
選択肢の意味がないんだって。
ストーリーの選択肢がほぼこんな感じ。
一方通行のストーリーを何が何でも歩ませたいから、実質プレイヤーが取れる行動が皆無なのよ。
まあ、別にプレイヤー……
ユーザー側は純粋にストーリーを楽しみたいから、気にしないのかもね。
ファウストさんの安否は聞きたいので下の選択肢を選ぶ。
タマモちゃんは呆れた様子で答えた。
「ふふふ、他人の心配なんてしている状況ではありませんよ? このままですと、貴方も歪の中で一生を彷徨う事になりますからね?」
それはそうなのだが、一体どうして私達はここから出られないのか?
原理が分からない。
ツクヨミが私に呼び掛ける。
「適合者よ。この歪も修復されようとしている。拠点へ帰還しよう」
この後、兎たちに調理して貰った牡蠣を無茶苦茶食った。
結構しっかり味がある! 満点!!
FEOでの楽しみが増えた、が。演出の切り替わりが長いのと奥義の切り替えを何とかしてくれい!




