【まほ★まほ】調整
『まほ★まほ』運営専用バーチャル空間で、再び真帆与は頭を抱えていた。
シナリオ修正を完了し、次のイベントに向けて不具合がないかと確認したら、先日の騒動である。
真帆与たちが『まほ★まほ』を大声で子供向けと宣伝している要素の一つが、格差だ。
大人が強い補正やプレイングをする事で、子供が置いてきぼりにされる。
複雑な要素のせいで、大人は楽しめても子供は楽しめない。
だから、補正の簡略化に勤めて来たのだ。
これは実際に真帆与や、彼女の同志が体験してきた事が起因する。
子供ながらVRMMOを遊びたかったのに、いつの間にか変な暗黙の了解みたいなのが生まれたり、専門用語が飛び交ったり、仕様を理解できない奴はあっちに行けと突き放されてしまう。
ここは大人だけの遊び場ではない。
そういう格差をなくしたい。
だからこそ、徹底してきたというのに……修正後の大ブーイング。
SNSのトレンドにも載ったせいで炎上商法かと揶揄される羽目になった。
仕方なく、修正前の仕様に戻したのだが、開発者である真帆与自身が納得していない。
「このままじゃ駄目! 格差がなくならないよ!!」
「落ち着いて、真帆与」
「文章だけは選択できるよう変更するから我慢して!」
「……文章。文章はいいの。問題は補正の方よ! このままじゃ、今までの二の舞じゃない!!」
「真帆与……あのね。私のお兄ちゃんに『まほ★まほ』のゲームとしての評価をして貰ったんだけど。根本的な問題があってね。ゲームの難易度が子供向けじゃないみたい」
「えぇ?」
「私達、生成AIに色んなMMOのデータを入れまくってゲーム調整全部任せてたでしょ?」
「うっ、うん」
彼女たちはVRMMOを作成したかった。
でも、VRMMOの運用はサッパリ。
ゲームのバランスやなんやらは、完全に素人。
その辺りの調整は、生成AI任せにし、世界観にグラフィック、キャラクターやデザインに拘った。
「でもAIって取り込んだデータを基準に生成するから……仕様も他のVRMMO基準になってる。各エリアのボスもソロで討伐したら難しいし、いい武器を作る素材の量も馬鹿みたいに多い。アンケートで遠征の改善が一番多かったのもソレが理由」
「なんでよ! 強いボスは皆で協力して倒せばいいし、素材だって一生懸命集めればいいじゃん!?」
「だ・か・ら! そこが子供向けになってないって事! ソロで討伐が難しいって意見出してるのは子供じゃなくて大人のユーザーなんだってば! 素材を一生懸命集めればいいって、子供に同じ素材を千とか万集めさせろって事!?」
「せ、せん? なにそれ。そんな事になってるの……??」
「そう! だから――本当に子供向けにしたいなら、補正云々じゃなくて難易度の調整からしなくちゃ駄目だって。必要素材だって、子供が頑張れば集められる程度に調整しないと」
「……そんなこと言われても……ゲームの調整とか分からない。ねえ、アンタのお兄さんに手伝って貰うとか出来ない?」
「お兄ちゃんは普通に社会人だから無理! 私達でやるしかないの。MMOを立ち上げるって話になった時に、決めた話でしょ」
「うん……」
「取り合えず、難易度とか素材とかは私の方で時間かけて調整していくから。今度こそイベントの方、お願いね!」
「大丈夫よ! 次やるイベントは、シナリオもちゃんとしてる。声を入れてくれた友達の演技も審査通ってる!! 心配しなくて平気!!!」
他のメンバーも「流石にね」と頷く。
次のイベントは、前回のような大規模なシナリオイベントではない。
特別なイベントではあるが、今後定期的に行われる催しの一種だ。
メンバーの一人が声を上げる。
「告知の方はそろそろしておいた方がいいかもしれないわ」
「流石に早くない?」
「さっきの素材云々を聞いたら、イベントの為に素材を集めるユーザーもいると思うわ」
「確かに?」
「うーん、でも規模は想像できないな~。アンタの兄貴は何か言ってた??」
「イベントシステム自体は特に指摘されなかったから、シナリオがちゃんとしてれば問題ない筈だよ。一応、イベントのデバックはしておこう」
しかし、この新たなイベントが一騒動起こすとは、彼女たちも想像していなかった。




