【スパーダ・アベントラ】畑
ログイン三十九日目。
『スパーダ・アベントラ』にログイン後。
『ルナ』さんが忠告した通り、街を少し歩いたところで急に女性NPCから声がかけられた。
「貴方、『アクア』を覚えているのね! ちょうど良かった。実は畑に水を与えて欲しいの。お金も出すから、お願い!!」
一応、選択肢が表示されて、拒否もできるようだけど……
私はちょっと気になって、依頼を受けてみた。
自動的に畑へ転移される。
色んな野菜が植えられている結構広めな畑であった。
私は土の様子を確認した。
うーむ、この感じ……やっぱり、土の質が悪い!
以前、ルナさんが忠告したのが気になり、調べた所。
罠要素として『アクア』所有時にNPCから絡まれる要素として、公の常識として動画や掲示板などで紹介されていた。
一方、私はこの手のNPCイベントには裏イベントが用意されていると知っている。
典型的なMMOに隠されている要素。
ただ……こういうイベントは他プレイヤーだって、察して何か糸口を探る筈。
何かないかと探った結果、何も発見できなかった結果――放置された。
つまり、以前行われた大規模な下層探索と同じ。
一旦、普通にクエストを完了させて、私はサリレで『マーレポール』を出現させワールドを移動……
「くぉ~~~~ん!!!」
ぎゃあああああ!
こ、コイツ。とんでもないスピードで走る!!
どさくさに紛れて、雑魚モンスターは突進でひき殺している凄まじさ!!!
酔う酔う!
だが、全力疾走は最初の内だけ。
スタミナがある程度消耗したら、段々と速度を落としていくポール君。
到着したのは、森林エリア。
まずはポップする雑魚モンスを片付け、街で購入しておいたサリレ用の餌をポール君に与えて休ませる。
ここで回収するのは落ち葉。
私はこれより、疑似的な腐葉土を作成を試みるつもりである。
以前も触れたが『スパーダ・アベントラ』にはクラフト要素は皆無。
基本、戦闘中心でプレイヤーの選択項目にも何かと何かを組わせて何かを完成させるアクションは存在しない。
それでも、NPCからモンスターの骨が肥料にいい、など情報を得られる程度の要素はある訳で。
あの畑も他のアイテム使用が可能なのは確認済み。
ならば試す価値は十分ある。
必要なのは落ち葉以外にも、モンスターの骨や糞、良質な土。
そして、『アクア』だ。
普通ならどこか枠スペースを確保して、クラフトするべきものだが、非クラフトのゲームなので割愛できると期待しておく。
できれば『米ぬか』があれば良いのだけど……一先ず、これで試してみよう。
疲労回復したポール君にサリレし、再び『マリアンタウン』に戻ると……
「あ! この間の……ねぇ、お願いがあるのだけど。また畑が乾いてしまって! もう一度だけでいいから水をお願いできる……?」
と、女性NPCに声をかけられた。
よーし。これで試してみるぞ。
再び依頼クエストを受け、畑に転移した私は回収しまくった落ち葉を敷きまくり。
次に、モンスターの骨や糞を撒きまくり。
最後に土を被せて『アクア』で振りまくのだった。
当然、畑全体にやってやる。
すると――ピロン!と前回はしなかった効果音と共に、畑の様子が変化。
畑から移動した私に、女性NPCが驚いた表情で話しかける。
「え!? 何か様子が……土を変えてくれたの? 確かに前よりも湿っている感じがするわ。ひょっとしたら、良いお野菜が出来るかも! あの。このお野菜を提供しているレストランがあるのだけど、是非行ってみて! これをお店の人に見せれば予約しなくても大丈夫だから!!」
彼女から『「ノワール」の会員証』を貰う。
おお、やったぞ! 私の予想通り!!
私が賭け半分で今回のクエストに挑んだのは、食事の為なのだ。
『スパーダ・アベントラ』の料理店は何らかの条件で、良質な料理が出現すると情報があった。
それを確かめたかったのである。
とは言え、肥料作りの素材集めですっかり時間が過ぎてしまった為、料理は後日楽しもう。
久々の投稿に、生きとったんかワレ!と言われそうですが生きてます。




