【Fatum Essence Online】『タマモちゃん』さん
汚物は消毒……ではないが。
除草剤を散布するが如く、消火器を噴射するかのように、クリーチャーの悪霊の除霊が開始された。
お供の兎達は、装備していた除草剤機っぽい噴射パイプを用いて蹂躙している。
一方で、私ことツクヨミは、普段用いて戦う竹や勾玉を行使するが、通常攻撃とは異なるモーションで攻撃をする事に。
直接、亡霊に勾玉や竹をぶつけるのではなく。
勾玉や竹から放出される青白い光を亡霊に命中させて除霊、浄化と呼ぶべきか?
それを繰り広げていく。
沢山の雑魚敵を一掃する爽快感と、ツクヨミのエッセンスが大量に確保できた。
何と言うか、チュートリアル戦闘っぽい感じがしたな。
通常モンスターとは異なるタイプだから、最初はこんな感じで、次の章からはレベルアップしていく感じだろう。
戦闘中、ちょっとだけ解説ウインドウ画面が表示されて、こういう特殊な亡霊系には物理攻撃が通用しないとあった。
実際、勾玉や竹を衝突させても、霧のように霧散して、再び元の形状になってしまう。
さて。
チュートリアル的な戦闘が終わると、また戦闘ステージ。
次は先程と同様のクリーチャーの悪霊に加え、クリーチャーの上位互っぽいデカイ個体が複数出現する。
ふむ、ここからが本番か。
悪霊たちの攻撃モーションは独特で、少し観察しないと攻撃のタイミングが掴めない。
一旦、霧散し、攻撃やプレイヤーたちをすり抜け、背後から現れるモーションがあり、気を抜くとダメージを受けてしまいそうだ。
こういう空中飛行の戦闘で重要なのは、周囲のクリアニングを怠らない事。
前方だけではなく、背後を時折振り返る。
今回の場合、油断すると海中から魚人間が襲い掛かるので、四方のクリアニングをしなければならない。
とはいえ、海中の魚人間は悪霊ではないので、普通に物理攻撃は通用するので、攻撃の仕方に気を使う必要はないのだ。
このステージをクリアすると、別視点に移行する。
ローマ編でもあった第三者視点のシーンだ。
場面は、現在のアルゴー船を様子らしいが……ちょっと想定外だったのは、メンバーの少なさ。
私も遠目から、かなりの攻撃を仕掛けていたもんだから、結構な数が乗っていると錯覚してしまった。
登場するメンツは、誰が誰かも分からん。
確かなのは隆々とする筋肉を持ち合わせる巨女『ヘラクレス』。
そのヘラクレスに呼び掛けていたリーダー格っぽいロングブロンドの女性が恐らく『イアソン』。
だろうか?
辛うじて判別できそうなのは、双子の兄妹。
容姿が似ている彼らは、ふたご座になった『ディオスクーロイ』かと思われる。
断片的な映像シーンしか映し出されていないが、彼らは彼らで撤退を――している風ではなかった。
恐らく、死の瘴気で船から出られない状況だが、ヘラクレスともう1人の女性が矢を放ち。
海上にいる何かへ的中させた。
クリーチャーの悪霊に向けてではなく、その奥にいる男性らしい人影。
海中から魚人間たちが這い上がろうとする。
それを魔術的なもので一掃する女性……
イアソンらしき女性が叫ぶ。
「とにかく攻撃しまくってぇ! 何とかアイツを叩きのめさないと、このオケアノスが消滅しない!! あーもー! こんな事なら、あの飛んでる冥府神に恩でも売っておくんだった!!」
魔術を行使していた女性が呆れて言う。
「今更過ぎます、イアソン様! 我らの攻撃に気づき、彼らが来るのを待つ他ありません!!」
……と、ここで場面が終了してしまった。
次のマスへ進むと、イベントシーンから始まり選択肢が表示される。
>今のは……
向こうにクトゥルフがいる?
え? さっきのシーンってメタ視点的なものとして挿入されるものではなく?
プレイヤー本人も見ていた事になっているの??
これに関して、室長さんが解説してくれた。
『どうかしたのかい、みずの君。……変な映像が流れた? ……恐らく、エッセンスによるものだね。適合者はエッセンスを呼び寄せる性質があるから、他の演者のエッセンスの情報が流れ込む事があるんだ』
FEOで導入された演出なのかね。
原作第一作では、こういうシーンはなかったのだ。
何はともあれ、クトゥルフ本体は向こうの、アルゴー船の付近で姿を現したよう。
だが、私の推理が一つ外れていたのは、オケアノスはタマモちゃんそのものが産み出したのではなく。
『え!? クトゥルフ本体がこのオケアノスを顕現させているだって!? アルゴー船の神格たちがそう言ってたのか……事実だとして、一体何故なんだ……?』
確かに、何故という理由はノーヒント過ぎる。
フランスでは闇墜ちしたジャンヌ・ダルクが復讐の為に。
ローマではアイドル渇望していたヘリオガバルスがコンサートを開催。
オケアノスは?
何等かの目的があるのだろうけど、まずはアルゴー船の元へ駆け付けなくては!
「ちょ、今このタイミングで邪魔しないで!」
「待って、アン。船に乗ってるアイツーー」
アンとメアリーが睨む先、進路を阻むのはドレイクの海賊船だった。
乗船する船員に紛れて、意気揚々と女性海賊のコスプレをしている彼女の姿があった。
あれは……
>『タマモちゃん』さん!
タマモちゃん!




