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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【ヴァルフェリアオンライン】影響


気まずそうに職員が解説を行う。


「えーと……はい。彼の捕食は『()()』スキルによるものですね。本来食さない対象を捕食する事で一定確率で取得できるスキルです。彼はそれと『暴食』スキルを併用して、色々と……例の魔界へ向かうリソースも『悪食』と『暴食』で確保しております」


「なんだそれは……」


里香も飽きれてしまった。

一体どういう流れで、土だの武器だの食べようと思ったのか。

女性株主は「なんとか規制して下さい!」と訴えるが、他の株主からは否定的な意見が意外と大きい。


「倫理的って、要は子供が真似するとかって奴ですか?」


「貴方みたいな過剰な規制派が多いから、日本のVRMMOの品質が下がってしまうんですよ」


「私も試したけど、土は土の味がしっかりしますから、真似しようとしても無理がありますよ。ありゃ」


「え、実際に?」


別の職員が咳払いして告げる。


「これにあたり『悪食』スキルの制限を検討しております。また、倫理精査については、サービス開始前に問題ないと判断されております。それと、土などにも土の味がありますから……簡単に真似をするプレイヤーはいないかと……」


女性株主は納得していない表情を浮かべる一方。

他の株主たちからは別の不満が上がった。


「えっ、制限しちゃうんですか?」


「折角、面白いと思ったのに。勿体ないですよ。もう少し様子見してみませんか?」


「いやいや、プレイヤー格差が生じてしまうから、制限は設けるべきでしょう」


「武闘大会では制限をかけるとか、どうですか?」


「うーん。私には彼の行動の意図が分からないのだが、実際に土や武器を食べて、どうなるのかね?」


里香が資料を把握して説明を始める。


「彼は『悪食』と『暴食』の併用で蓄積した土などをクラフトや即興の武器生成で引き出しております。つまり、自身の胃袋を素材保管庫にしている訳ですね」


「ほー……中々面白いな」


株主の中ではバルフォードのプレイイングを感心しているようだが、里香にとってはある意味、タク以上の想定外に困惑していた。


(他プレイヤーがギルドなどを駆使して素材保管をしているのに、奴はそれを度外視している。確かにやろうと思えば他プレイヤーも行えるが、こんな狂気じみた事は一般プレイヤーには出来ないではないか)


しかし、株主たちはタクの前例がありながらも意外と否定的な意見はない。

あったのは、倫理的にどうなんだというズレた女性株主の指摘。

むしろ、彼らとしては、保護システム作動によるユーザー離れを解決したいようだ。


「今は規制や制限ではなく、ユーザーの関心を離れさせないよう注力するべきです。サービス再開までに再度注目を集める為にも何等かのイベント開催や、賞金ありきの大会の開催などを検討するべきです」


(イベントか……)


里香はあくまでタクに対抗し、タクのようなプレイヤーを排除する為に『ヴァルフェリアオンライン』を世に送り出したが、表向きは普通の、独自性が強いVRMMOなのだ。

株主らの意見を踏まえ、職員は話を再度軌道修正する。


「今後のイベント方針については、この後、討論致します。続いて、プレイヤーの交流進行度です。ワールド内における、プレイヤーが及ぼした影響度についてです。ワールド内にいるNPCおよび国家に対する通常の交流関係、クラフト等の文化的交流、戦闘技術の伝授、商業の戦略性など、様々な分野に対する影響度をまとめたものが、こちらとなります」


『ヴァルフェリアオンライン』だけに限らず、現実性あるオープンワールド形式のVRMMOでは、プレイヤーの傾向を調査する必要がある。

顧客が、どのような目的で、どのようなものを望んでダイブしているか。

高性能のAIを用いたNPCのデータは、それらを算出する為に使われている。

そんな中、特出するべきものがあった。


「うーむ。意外と漫画や小説……『クリエイターマーケット』の需要が高いのか」


「結構、クラフト系が流行しているんですね」


「五感データが最新鋭のものだからか、料理を楽しんでいる方が多いのは主婦層を獲得しているから……?」


「はい。やはり、企業ギルドの採用が大きく影響を与えています。企業ギルドのキャンペーンで主婦層、加速時間を活用する在宅ワーカーや正社員でアクティブ数を獲得しております。一般的に、プレミアムパックでのブロック機能と加速時間が魅力的に映っているようです」


表面上、SNSなどではイベントがどうこう、バイターがどうこう、戦闘がどうこうと指摘されているが。

何だかんだ『ヴァルフェリアオンライン』は一般層に受け入れられていた。

しかし、探索や攻略、戦闘目的ではなく、時間を有効活用したい。ちょっとした気分転換を楽しみたい。企業ギルドのサービスを受けたい、というものだった。


故に、料理の食材が結構売れる。

漫画や小説など『クリエイターマーケット』が流行している。

これもまた、里香にとっては想定外だった。


(総合的にみれば利益は多い結果となっている……が。VRMMOとしては、どうなんだ? いや、別にクラフト系を蔑ろにしたい訳ではないが。上手く探索や戦闘目的のユーザーを獲得するには……)


簡単に到達されては悔しいのが運営側の立場だが、かといって誰も到達されないのも悲しい。

もどかしい気持ちのまま、里香は会議に参加し続けるのだった。


……また、ワールド全体の影響度を最も影響を与えたプレイヤーがいる。

それが『オギノ』だった。

『オギノ』の影響度も議題に上がるべきだったが、意外にも誰も彼もスルーしていた。


なんせ。『オギノ』の影響度というのは――

ノーブルの国家『ジェルヴェーズ王国』に言語を伝え、言語の翻訳が国家内に反映された。

隠れていたハーフノーブルの捜索にちょっとだけ貢献した。

彼が描いた漫画が他の作品より、ちょっとばかしNPCに流行するようになった。


……以上である。

影響が割とあるけど地味で、いまいちパッとしない内容ばかり。

今後、それがワールド全体の影響を与えるとは、誰も想定しないだろう……

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