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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【ヴァルフェリアオンライン】進行度


「はぁ、やれやれ……」


タクの一件で里香は溜息をついた。

彼女は、仕方なくタクを切り捨てる事にしたのである。

そのシナリオを父親に説明し――無論、彼からはお叱りを受けたが――タクは賠償金騒動が落ち着くまで交流を控える。


ある意味、里香は慢心していた。

どうせ、タクは再びVRMMOに戻って来る、と。

彼はVRMMOしか取り柄がない。主人公のようなVRMMO特化の補正でマウントを取り、承認欲求を満たされる事を望んでいる。


それと……

タク以外にも注視するべきプレイヤーは存在するのだ。

今日、会議室に集った職員と里香、それと株主を交えて、現状の『ヴァルフェリアオンライン』の進行度を議題とし、今後の運営方針を議論していた。

まず、やはりというべきか、株主の多くがこんな意見ばかり。


「ゲームの仕様が難しくなり過ぎているのではないでしょうか?」


「あまりに不親切な部分が多いと、私個人は感じてしまいます」


「ノーブルの、創造言語でしたっけ。これを簡単にすればプレイヤー層も増えるのでは」


「折角、独自性があるのに、爽快感が乏しいのは致命的では……」


「世界観も現実性が高すぎます。マイルドにしないと新規ユーザーの獲得ができません」


操作性の難しさ。

独自性が強すぎるが故の、新規層が乏しくなる不安。

里香は、全て承知の上でこう述べた。


「サービス開始前にもご説明した通り『ヴァルフェリアオンライン』の運営方針は、ある意味、挑戦的なものでした。皆様のご指摘通り、独自性の強さと世界観の厳しさ、操作感の難易度による不満点は覚悟の上です。何故、このような方針に舵をきったのか……『タク』というプレイヤーが全ての始まりでした」


ざわっ、どよめきが走る。

里香本人から彼の名が口に出されるとは想像しなかったのだろう。

彼女は淡々と説明を続けた。


「彼はVRMMOでは悪い意味で有名でした。事実として数々のワールドアイテムやネームドモンスターの討伐を独占。それによりユーザーが離れてサービス終了に陥る事態が発生しておりました。わが社のVRMMOも被害を受けたものがあります……ですが『ヴァルフェリアオンライン』では、彼による()()()抑える事に成功しました。現時点で、タクによる独占状態は確認されておりません」


「……しかし、彼は他プレイヤーに対する害悪行為をしております。彼の影響で新規ユーザーが離れてしまうのではないでしょうか」


「プレミアムパックを購入し、ブロックを行えば問題ありません。重要なのはタクを含む、1個人の独占状態が確立していないVRMMOが成立している事。戦闘やクラフト、交友など、様々な分野に特化したプレイヤーが独自で活躍できる世界観を構築している事です」


そう、そこが重要なのだった。

数多のVRMMOでも、先に進行したプレイヤーが独走状態になったり、ぽっと出の新規が無双するような運次第でもない。

『ヴァルフェリアオンライン』ではクラフトやギルドや探索や戦闘や称号など。

誰もが平等に競い合える環境が成立しつつあるのだ。


里香が職員に促す。


「現時点でのワールド進行度を報告してくれたまえ」


「はい。えー……『ヴァルフェリアオンライン』にはワールドクエスト等、世界観規模の隠しイベント要素はございません。しかしながら、ある一定の条件を含む事で、能力を得る事が可能です。こちらをご覧ください」


その幾つかに含まれるのは、オーガの『鬼神』、ドワーフの『フルコース』である。

実は他種族も隠し要素があるのだが……

VRモニターに表示されたグラフを指し示しつつ、職員が告げる。


「現時点で種族の極致に到達したプレイヤーは……()()のみ。オーガの『ヘリオガバルス』です。他数名のプレイヤーがドワーフの『フルコース』を発見するなりしておりますが、完全な極致には至っておりません」


「ふむ、次に進んでくれ」


「はい。続いては、ワールドの探索域です。ワールドには随所に危険区域がありますが、そこの探索を行う事で得られる称号やアイテムなどがあります。代表例として『七大陸最高峰』という称号があります。これはワールドの最高峰の山脈を全て踏破したプレイヤーが得られるものですが。どの山脈も踏破の難易度が高い環境があり、容易に攻略はできません」


そして、その称号を得られたものもない。

ワールドの危険区域に到達したプレイヤーも、いない……のが普通なのだが。


「えっと、1人だけ到達目前……と言いますか。魔界に向かおうとしたところ、保護システムが作動し到達できなかったプレイヤーがおります。……ノーブルの『バルフォード』という方で」


「ん……? いやいや、待ちたまえ。魔界だって? いけないように難易度を高く設定しただろう! ノーブルに限っては活動範囲も狭めてある筈――」


「で……ですが、計算上は到達、できる仕様です。事実、色々と条件をクリアして……現在、保護システム作動中に魔界への到達を阻止するべきかを議論しております」


「はぁ!? そんな馬鹿な!」


里香が動揺するのも、最もなのだ。

計算上は可能。

しかし、現実問題、条件をクリアするのは不可能。

ついでのように、株主の1人。比較的若い、VRMMO事情にも精通してそうな女性が挙手をする。


「そのプレイヤーについてなんですけど! あの、()()()()()()()()()()と聞いています! 倫理的にも問題があるので、そういうものを食べられる仕様を止めて貰えませんか……?」


「……は?」


突拍子もない話に、里香が目を見開くしかなかった。

他の株主たちは、逆に挙手した女性株主に訝しい視線を注ぐのであった。


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