【Fatum Essence Online】目的
「常識の習得とか、エッセンスで賄えないんですかね……」
折角、ツクヨミの核を搭載しているのだから、知識の共有とか出来ないんだろうか。
他シリーズを習得しておけば、エッセンスについて理解を得られただけに。
ここで原作未把握の弊害が出てしまった。
室長さんの方が『うーん』と何とも言えない様子で私の疑問に答えてくれる。
『一応、ツクヨミの核があるから、彼から多少の知識が得られるかもしれないけど。どの知識がどう反映されるかはランダムとしか言えないね……それに、今は現状の打開策を優先させた方がいい』
それはそう。
少なくともクトゥグアは大人しくなっている方なので、現状はドレイクの船とアルゴー船をどう対処するべきか。
そもそも、アルゴー船に関しては敵対するべきものなのか。
あと、タマモちゃんの目的も見えて来ない。
今回に関しては、タマモちゃんが主催となって海上バトルロイヤルを開催している訳で、イベントがてら興味本位で開催した訳ではない筈。
ってことは、やはり『オケアノス』そのものか。
何故か大陸は再現されておらず、海だけが再現されており、アルゴー船は場所の都合により、エッセンスが発生しやすかったから出現したイレギュラー。
まだ、目的は達成していない?
……ポセイドン。
まさか、とは思うけどポセイドンっぽいんだよね。狙いが。
突然出て来た感じの『デメテル』も、実はポセイドンと関係があったりする。
しかしながら、ポセイドンのエッセンスを集めて何がしたいんだ?
他に海と言えば……まぁ、別口だけどクトゥルフ神話の『クトゥルフ』ぐらいか。
いや、でも待てよ?
クトゥグアも『デメテル』に混ざって現れた訳だし、無関係と言えないのが何とも。
「室長さん。クトゥグアは何故『デメテル』と混ざっていたんでしょうか? クトゥグアって単体では顕現できない存在だったりします?」
『え? あー……そうだね。みずの君はその辺りを把握していないか。ややこしい話、エッセンスだけで顕現できないパターンはいくつかあるんだけど。クトゥグアを含む「クトゥルフ神話」の彼らは、地球に信仰が宿っていないのが顕現できない要因なんだ』
「信仰、ですか」
『神としての信仰、英雄としての信仰……物語の存在であっても、ある程度の認知度が信仰となって地球に定着すればエッセンス体での顕現は問題ない。でも、彼らは違う。地球に信仰はないし、彼らを称える存在も限られている。適合者と契約しても顕現は難しい……だから相性のいい存在とミックスになって介入したんだろうね』
成程、そういう感じなのね。
「多分ですけど……クトゥグアは狙っていたのかは不明ですが、他の神格を呼び寄せる為に、わざとオケアノスを生み出した。ぶっちゃけると、ポセイドンとクトゥルフ辺りをミックスさせようとしているのでは?」
『ポセイドン!? そ、そっちか……ハデスの可能性もあったけど、海の神ならポセイドンが適任か……』
「え、ハデスさん?」
『オケアノスとハデスの冥界は繋がりがあるからね。そっちの線も追っていたところだよ』
あ、確かに。
でも、逆にハデスさんとミックスなら、むしろ安心するような?
だってハデスさんは割と常識人?でマトモな方だよ。
大体の目途が経ったので、アルゴー船を無視する事は決定した。
……完全無視って訳にもいかんが、少なくともクトゥグアの件が偶然でなければ、タマモちゃんの目的は海上バトルロイヤルでも、アルゴー船の神格たちでもない。
私と室長さんの話に耳を傾けていたメアリーが話しかけて来た。
「何か変な話してたけど……どういう事?」
「海上戦自体がカモフラージュの可能性が高いのではないかと。表向きは皆さんに戦って貰って、裏では別の目論見を進行させてた、かもしれません」
すると、アンが慌てて割り込む。
「ちょ!? ちょっと! メアリーのお願いは叶えて貰えないって事!!?」
「いいよ。アン……都合のいい話なんて、なかった。最初から、そんな気はしてたよ」
ああ、なんかそういう趣旨だったなー。
私は流れで「何かお願い事があったんですか」と尋ねる。
メアリーは意味深に答えた。
「………子供のこと」
げぇっ!?
そ、それは……メアリーとアンは妊娠しているから死刑を免れた逸話があるんだけど。
メアリーの方だけは、病気で獄中死……
ガチで妊娠してたなら、本当に申し訳ない話だ。
「ああ、史実で知ってます。気使えなくてすみません」
「ううん。私の妊娠は嘘だけど」
嘘かよぉ!?
「ええ!? 嘘だったのぉ!!?」
アンの方もビックリしてるんだけど……
気まずそうなメアリーは話を続ける。
「アンが本当に妊娠してて、ちゃんと子供を産んだって聞いたら。アンに私の子供を見せてあげたかったなって。本当に妊娠しておけば良かったのに」
「も、もー。なにそれっ。……でも、私もメアリーの子供、見てみたかったな~。なーんて。……はぁ、本当に残念よ。こうなったら、あのタマモって奴に問い詰めに行きましょ!」




