【Fatum Essence Online】リセット
[ツクヨミ:示談金で解決になると思いますけどね]
[マリー:そうなんですか? あそこまで証拠を取ったのに??]
[ツクヨミ:私よりもアイドル事務所からの損害賠償の方が高くつくでしょうからね]
[ツクヨミ:逆に彼でも支払える額にしておかないと、未払いで逃げられます]
[マリー:ひえー]
しかも、示談金で解決しても弁護士費用差し引いたら赤字だよ!
クソだね!!
FEOでは生存報告がてらログインし、ブロック解除後、申請をしてくれた『マリー・アントワネット』さんことマリーさんとチャットで会話する。
私の起訴後に、アイドル事務所が起訴発表したのは、とんだ貰い事故である。
向こうは向こうで、私に構わずタクに損害賠償請求をする予定だったのだろう。
理由は、VRであろうと、アイドル事務所に所属するアイドルが被害を受けたから。
下手に甘い処罰をタクに与えてしまうと、示しがつかないのだ。
ストーリーモードを進めると、前回デメテル?さんがクトゥグアに変化したところから始まった。
ちなみに『クトゥグア』はクトゥルフ神話のキャラだと判明。
あれね……原作の原文、くっそ読みづらくて序盤で、もういいやって諦めた記憶がある。
話を戻して――クトゥグアが男性?っぽくなったので、アンがオーバーリアクションで驚く。
「えええええ~~~~!!? 男になっちゃんだんだけどぉぉーーーー!!!」
室長さんが『ツクヨミの核をベースにしたからだろうね』と捕捉説明をする。
比較的室長さんが冷静なのは、エッセンス体で顕現される演者の性別は適合者やエッセンスの配分次第で変化するのが良くあるからだ。
この設定を上手く活用して、男性の偉人を女体化させまくってるのが『Fatum』シリーズである。
しかし、メアリーが訝しげに言う。
「でも……さっきより喋らなくなってない?」
そう、折角変化したというのにクトゥグアは、うんともすんとも言わない。
デメテルさんの姿だった時より無口になってしまった。
室長さんがクトゥグアのエッセンス体を解析し、唸りながら告げる。
『やっぱり、まだエッセンスが足りないようだね。一応、先程より状態は安定しているよ』
ちょっとで足りるようでは世話は要らないって奴か。
ツクヨミが「仕方ない」と提案した。
「適合者はエッセンスコネクションに集中して貰う。我々はその間、船の補強に勤めよう。食事は私と兎たちが作る」
「そうね! みずのが宝箱を沢山開けてくれて装備も整って来たもん。今の内にやる事やっちゃおう!!」
ええ!?
ちょ、私もご飯食べたいなぁ!
タクの騒動もあって、FEOで食事を取る余裕や気分じゃなかったのに……!!
私の願いも虚しく、しばらくパズルゲーを熟す事に。
パズルで得られたエッセンスをクトゥグアのスキル強化へ割り振りできるようだ。
勿論! 『豊穣の恵み』に全ぶっぱ!!
……したいんだけど。
まだ、クトゥグアは仲間になっている訳ではないので補正の恩恵が貰えない。
ストーリーモード中は『混沌に抗う者』の補正を高めておこう。
無難というか……唯一の共通スキルだったから、まぁ、これが重要なスキルなんだろうと考えて。
っと、ここで『ポーズ画面』。
恐らく、パズルの回数が限られているので、下手なスコアで終了させてはいけない。
そして――リセット。最初からやり直すのだ。
試行回数を稼いで、連鎖のコツや『エッセンスコネクション』のパズルのみ出現するアイテムの活用方法を確認し、稼ぎ方やポイントの増え方も観察するぞ。
さて、いよいよ本番だ。
……あ~っと、駄目ですねこれは。リセット!
今のはパズルのピースとなっているエッセンスの配置が悪い。ハイスコアを目指すには、最初が肝心。
で。
最初が良くても、同一のエッセンスに変化してくれるアイテムの出現タイミングが悪かったり。
途中で流れが悪くなれば、リセット決行。
パズルを数回繰り返す内に、マップ上でも変化が。
アルゴー船がこちら側に移動していき、別方向から黒いオーラを纏った海賊船。
そして、もう一隻、黒いオーラは纏ってない海賊船が。
何気、私達が三方向から包囲されている形だ。
同時に攻撃されては溜らない。
新たな海賊船については、メアリーが解説してくれる。
「あっちに反応がある船……多分、ドレイクの船。最初、開戦し合って、お互いに撤退した。立て直して、再戦しに来てるんだと思う」
『フランシス・ドレイクか……かなり、状況は厳しいね。みずの君。クトゥグアのエッセンス補強はここまでにして、彼の実践練習を始めよう』
室長さんからの提案で、クトゥグアを実際に操作する練習モードを行う。
ふむ、ツクヨミともブーディカさんとも違い、結構バリバリな接近戦スタイルだった。
冷気の炎で構成された剣を手に、炎の放出で相手に急接近したり、回避したり。
そして、登場時にみせた、振動の停止による氷結攻撃もある。
ふわふわ空中に浮いているので操作感覚自体は、ツクヨミと同じだ。
練習を終えると、クトゥグアが喋り出す。
「顔が、ない」
そればっかりだなぁ。
元ネタ的に、顔がない神格を探しに来たのだろうけど、と思ってたら。
「ここに、いる、やつらは、顔がない。顔がある、奴はどこにいる?」
逆!?




