【ヴァルフェリアオンライン】【まほ★まほ】挑戦者【Fatum Essence Online】【あなたがアイドル】
「僕……僕、酷い事をしました………昔の事だけじゃない。オフライン版の方もNPCが変とか、武器の仕様が悪いとか、里香本人に言ってしまって……」
「いいや。先程、伝えた通りなんだ。そういう仕様にしたのも、全て君に対する復讐なんだ。あえて君がプレイしにくい仕様にしたんだよ。君が当時使ってた車輪の武器を弱くしたり、NPCを定型文形式の安価なものに入れ替えたりね」
「え……!?」
里香の父親は話の区切れのように溜息をついた。
「里香は、君がそうして他のVRMMOのサービスを悉く終了させていく事に気づき。君への徹底した対策を行ったVRMMO……それを『完璧なVRMMO』と称して実現しようとしていた。その一つが、最近、君がプレイしていた『ヴァルフェリアオンライン』だ」
「え……あれ、も、里香が」
「ただね。『ヴァルフェリアオンライン』は君だけではなく、他ユーザーもやりにくいゲームになってしまった。とっつきにくさを楽しんでいるユーザーが居て、私としては助かったぐらいだよ」
タクだけでなく、ミミたちも難しい、面倒くさいと不満があった仕様。
あれは、里香が徹底的にタクや、ミミたちのようなプロプレイヤーを対策した末の仕様。
とんでもない真実に、タクは更に言葉を失う。
「里香は君に『ヴァルフェリアオンライン』をやるよう、色々と誘導した事だろう。あれも、君を失敗させて、精神的に追い詰めるのが目的だったんだ」
「僕が……里香のVRMMOをサービス終了させた、から。ですか」
「里香は沢山の人に楽しんで貰おうと『タロッツ・オブ・オンライン』を作ったんだ。皆が協力してネームドモンスターを倒したり、ワールドアイテムも1個人じゃなくて、色んな人の手に渡って欲しかった。うん。別に君は悪気があった訳じゃないのは分かる。でも、VRMMOを作る人達は、色んな人達が、沢山のユーザーが楽しんで貰えるよう努めている事を理解して欲しい」
「………はい」
それは当然の事だった。
貴方が主役のVRMMO!なんて煽り文を持つVRMMOがあるが、別にタク1個人を示しているのではない。
沢山のユーザー全てが主役になれる!と銘打っているのだ。
タクはそれを我が物顔で、さも自分が主役と言わんばかりに占拠しまくった。
さて。
と、長い前振りを終えた里香の父親が、先程から表示されているVRウィンドウをタクに見せる形で動かす。
自然にタクも視線を向ければ……内容に愕然とした。
「田中君、見ての通りだ。君はある個人から損害賠償を訴えられている。今まで君がやってきた行いのツケが回って来たんだ。悪いが……私と里香は、君を守らない。君の保護も、里香の復讐の一環で行われていたんだ。精神科の件もそうだ。君は精神的に問題ない。君に処方されてた薬も、ただのビタミン剤だ」
「…………」
タクは怒涛の真実に言葉すら発せない。
VRウィンドウでは『みずの』……荻野の発表を皮切りに、怒涛の勢いで、まるで彼の行動に勇気を貰ったように数多の声が上がっていくのだ。
『当社のアイドルに対する営業妨害行為およびセクハラ行為に対する――』
『あなドル』でタクが軽率な行いをしたアイドルの所属事務所の参戦。
『俺の花ちゃんに手出すとかありえん!!!』
『俺達のな』
『動物虐待の次はセクハラかよ。マジで終わってる』
『クラファンで署名集めるぞ!!!!』
『これで起訴取り下げられたら、国家規模の陰謀が始まるレベル』
アイドルファンの参戦。
『博覧会でのアレで訴えられるなら、俺も被害受けたから起訴できますかね?』
『折角育てた野菜を全部齧られて、設置スペース糞まみれになったワイも参戦していいっすか』
『漫画エリアで晴明の漫画の隣設置してた私も被害受けたので協力したいです』
『博覧会でモルモーの糞の雨に引っ掛かった俺もいるぞ!!!!』
WFOで被害を受けたプレイヤーの参戦。
『タク君、貴方が元所属していたギルドメンバーです。今どこで何をしてますか?
素材を集めて来ると飛び出して、戻って来ない、連絡もない。とても悲しいです』
『これまじ?』
『あいつサボって営業妨害行為してましたよ~』
『ちなみに運営からBANされた模様。二度と戻って来るな』
まほ★まほでタクが所属していたギルドメンバーの参戦。
『クラファン応援します』
『タクの野郎にネームドモンスター横取りされた奴です。参加します』
『絶対に許さない』
『VRMMO企業も参戦するだろこれwwwwwwwwwww』
『最早タクのせいでサ終したVRMMOの怨念だろ』
『タクの暴走でサ終して赤字になった企業の参戦が待たれる』
『倒産したところもあったよな~』
これまでタクに苦汁を飲まされた人々が、次から次へと立ち上がり参戦を表明する。
かつて、VRMMOで、これほどまでに多くの人々を突き動かした事があるだろうか?
皮肉な事に『タク』という共通の敵がいるからこそ、彼らは手を取り合い、立ち向かおうとしている。
そして……彼らは怒りや恨み、それこそ里香と同じタクへの復讐を持つが。
それ以上に……タクによって心や、努力や、クラフトした作品や野菜や、色んなものを傷つけられた悲しみを背負っているのだ。
祝250話突破!
それが主人公の影しかないこんな内容でいいのか!?
残念ながら、これこそが『VRバイター』なのである!!!




