表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

249/370

【ヴァルフェリアオンライン】【まほ★まほ】復讐者【Fatum Essence Online】【あなたがアイドル】


またもや、タクは落ち込んでいた。

しかし、いつもとは異なる意味で気分を暗くしている。

FEOで交流していたプレイヤー……『みずの』にブロックされた。


「僕は、そんなつもりじゃなかったのに」


これまでも何度も何度も繰り返してきた彼の決め台詞だが。

逆上して切れてきた今までの相手とは違い、『みずの』は「ごめんなさい。生理的に無理です」と拒絶した。

縁を切ったのではなく、向こうが逃げた。


タクは本当にそんなつもりではなかった。

これまでも、そうだった。

タクが『みずの』の為を想って、『みずの』の欠点を指摘して、正そうとした。


彼はタクの前から逃げ去った。

唯一、今までとは異なるのは、彼はタクに対し謝罪を告げてたこと。

彼は今までの被害者たちとは違い「すみません」「ごめんなさい」「申し訳ございません」と自分を卑下しながら立ち去った事。


最後まで、彼はタクに逆上をぶつける事がなかったのである。

『みずの』は最後までタクに寄り添っていたのに、タク自身が突き放した。

完全なタクの自業自得であった事になるのだ。


それが、タク自身にも響いていた。

今までの被害者たちは、タクの正しさに反抗し、拗ねて、自分勝手で我儘なのだと解釈していた。

しかし、『みずの』はタクの正しさの行為が、自身のトラウマを呼び起こすと怖がっていた。

タクに()()()()逃げたのである。


当然だが、タクは相手を脅しているつもりなんて一切ない。

傷つけている自覚すらなかったのだから。


「僕……は……」


すると、タクの部屋を誰かがノックする。

里香ではなく、職員でもなく、ぴっちりとしたスーツを着こなす女性秘書だった。

困惑する彼を他所に、女性秘書が告げた。


「社長がお呼びです。ご案内いたしますので、ついてきて下さい」


「社長? って……里香、じゃなくって。ええと」


「里香様のお父様です」


「り、里香のお父さん!?」


「……失礼のないよう、お気を付けください」


ますます理由が分からないタクは、流されるまま、施設内のエレベーターに乗り、部屋に案内された。

そこは、大企業の社長室――ではなく。

複数のVRウィンドウが浮かび上がる会議室のような空間。

淡い光を灯すVRウィンドウを強調する為、室内の灯は消されていた。

会議室の中で、たった1人、席に座る男性こそ里香の父親だろう。

男性が立ち上がり、口を開く。


「君が田中君だね。君には本当に申し訳ない事をした」


「え? えっと、僕はむしろ里香に助けられたんです。今は気分も落ち着いて……これも里香のおかげです」


「いいや……何から伝えるべきかな。まずは座ってくれたまえ。長い話になるからね」


「はい……」


何となく口調が里香に似ている里香の父親が重く語り始める。


「里香は……君に復讐しようとしていたんだ。君に恨みがあったんだよ」


「え……!?」


「『タロッツ・オブ・オンライン』……というVRMMOに聞き覚えはあるかな」


「あ……その、オフライン版を最近やらせて貰いました」


「当時、君はオンライン版をプレイしていたんだ。もう記憶になくて仕方ないだろうけどね」


「え!?」


「オンライン版を遊んでいた君は、あのゲームのワールドアイテムや重要NPCを全て手にしただけではなく、ネームドモンスターも全て倒してしまった。だが、それでは他ユーザーの不満が募る。他の人達だってネームドモンスターを倒してみたいだろう? だから復活措置を取ったんだが、それすら君は討伐してしまった。NPCに被害を及ぼし、危険なモンスターだから自分に任せて欲しい、と。他プレイヤーから横取りする形でね」


覚えていない。

全く何一つ覚えていない。

タクは自身がやった行いですら記憶に残っていない。


「それで、どうなったか……他のユーザーは離れてしまった。最終的に君を含めて、()()()のプレイヤーしかログインしない状況に陥ってしまったんだ。その極数人のプレイヤーも、戦闘をしないクラフトメインで、マイルームに引きこもって作業する人達だったからね。VRMMOとして成立しない。利益を齎さないゲームとなってしまったんだ。サービスを終了する他なかった。サービス期間は僅か1か月だけだった」


「いっ……!? そ、そん、な、僕の、せいで……」


「いいや。君のせいではないよ。ネームドモンスターの仕様やワールドアイテムの仕様、使用アルカナやNPCだって、後からいくらでも修正する事はできたんだ。でも、あのVRMMOを作った里香が嫌がってね」


「里香!? あ、あのVRMMOって、里香が作ったんですか……!?」


「そう、初めて作った、彼女が拘りの詰まったVRMMOだった。仕様変更なんてしたくないって、ダダをこねたんだ。全部、君が悪いって。空気を読まないで、他プレイヤーに譲らない、ネームドモンスターを横取りする君が悪いってね」


タクは真実を聞かされ、愕然とした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ