【スパーダ・アベントラ】七色の牡鹿
ここまでなら、序盤の意外と耐久あるモンスターなんだな~ってスルー出来たんだけど。
途中から様子がおかしくなった。
最初は簡単な波状オーラを放ったり、角からオーラビーム的なものを放ったりだったが……
追尾型のオーラの柱が発生するようになり、オーラで作った分身を複数出現させ。
オーラの波による大規模な攻撃まで……いやいや、これは流石に無理!
って思ったけど、大樹に剣を突き刺してよじ登り、何とか回避できた。
回避はできたが、どうすんのこれ。
てか、明らかにレベルが違うモンスターだよな!?
バグか何かで下層に降りて来たとか……? あの第一プレイヤーさんが嘘ついたとは思えんのだけど。
私が途方に暮れてたら、急に攻撃が収まって『セッテコルリ』が消えてしまった。
あぁ、なんだろう。
討伐までの制限時間があったのか……と落胆していたら。
『称号:七色の牡鹿 を 獲得しました』
『称号:七色の試練 を 獲得しました』
『SPの上限値が100アップしました』
『スキル「オーラ」を習得しました』
な、なになになに?
急に色々来て私も困るよ?! 一応、内容を確認してみると……
『称号:七色の牡鹿』
取得条件:セッテコルリと遭遇する
効果:SPの上限値100アップ
『称号:七色の試練』
取得条件:セッテコルリの試練をクリアする
効果:スキル『オーラ』の習得
スキル『オーラ』 消費SP:2~100
オーラの攻撃を放つ
消費SPにより放たれるオーラの威力と範囲が変動する
あ~……成程ね。
特別なモンスターからスキルを得られる訳か。
『オーラ』とやらも、セッテコルリが発動させていたビームとか分身とか、大波を作る感じね。
若干不安なのは、あれ下層で出現しても良かった奴?って事。
バグで上層とかにいたのが、下層に出現してましただと、色々チーターだって騒がれそうでな。
取り敢えず、森抜けた先にあるだろう町でリスポーン固定しようっと。
今の内にと私は『オーラ』を使用してみる。
……いや、汎用性高!?
斬撃と同じ攻撃を『オーラ』でもできちゃうし、『オーラ』の分身特攻も意外と消費SPが5と軽め。
複数体特攻させれば中層のモンスターも余裕っぽいのでは???
消費SPを抑えた『オーラ』の波攻撃も範囲が広く、隠れたモンスターを炙り出すにはちょうどいい。
『オーラ』でバリア的なもんまで……
強いて欠点を上げれば、消費SPの消耗ぐらいか。
調子乗って使いまくるとガンガン減ってしまうので注意。
これこそ、称号を入手してSPの上限値を上げて行けば、克服できる。
森を抜けた先で『ノルトタウン』という町に到着。
深い森の中にある町だからか、薄暗いながらも幻想的なホタル的な昆虫の黄緑の光が照らしている。
雰囲気が気に入っているプレイヤーが多いようで、『クレイクタウン』よりプレイヤーの人口密度が多い。
町に到着して早々、運営に『セッテコルリ』はバグですか大丈夫ですかと確認メールを送る。
そして、ログアウト。
下手な事しないで連絡待ちをしよう。
で、ログアウトついでに情報収集を行う。
あれ……意外と攻略情報載ってないタイプ?
『スパーダ・アベントラ』って賞金つきの大会あるんだっけ……ああ、あったわ。
賞金つき大会が開催されるVRMMOだと情報に価値が生じる為、中々プレイヤー同士で情報交換どころか。
攻略サイトにも情報を渡さない徹底ぶり。
スキルや称号を得ても、効果内容を伝えないなんて基本。
じゃあ、あの『セッテコルリ』がバグなのかも分からねぇじゃねえか……!
こういう時、情報統制されているVRMMOは困るのだよ!!
ちょっと気を取り直して。
改めて私が調べたのは、第一プレイヤーさんが教えてくれた下層の大規模捜索の件。
一体、どういう感じの、どういう調査だったのか。
…………うーん?
ええっと?
下層のエリア各所に捜索プレイヤーを配置し、ゲーム内時間1日中、イベントが発生しないか観察。
……これだけ??
おいおいおい、そらないでしょ!?
もし『セッテコルリ』が、あの森の夜の間、低確率で出現する限定モンスターなら、絶対に1日だけじゃ検証期間足りないでしょうが!
それに必ずしも、低確率の出現が条件じゃないでしょうに!!
あーあ、なんだよぉ。
つまり『大規模探索』なんて銘打っておきながら、ガバガバ捜索だったって奴?
……それとも、印象操作か?
上位プレイヤーが取得しているスキルで、同じスキルを所有されたくない、下層を捜索されて下手に有利な称号を得て欲しくない的な。
あえて、捜索をすると呼び掛けて、何も成果は得られませんでしたと発表すれば、下層は見向きもされなくなる……
この『大規模探索』を発案したギルドのギルドマスターであるプレイヤー。
何でも、謎の砂を操るスキルを持つそうな。
砂……私が行こうか悩んでいた下層の砂漠があったよな。
つまり、そういう訳だ。




