【ヴァルフェリアオンライン】到着
なるべく川沿いに合わせて進んでいく私。
町にしろ、国にしろ、水源は必要だから川の近くにありそうな気がするんじゃが……
発見したのは廃村の方だった。
耐久度が低くなってボロボロな家具や道具が放置されている。
畑っぽいところには植物が乱雑に生えて、もう何十年放置されているのが分かった。
何か持っていけそうなもの、あるかな~?
[黒イモを入手しました]
[隆起豆を入手しました]
畑の跡地で野生化した農作物を幾つか採取できた。
それから地図!
古い地図だったが、一応参考にしておこう。
ふむふむ、先程から続く川の水源は山の雪解け水が主らしい……ではなく。
川を辿っていくと水源になる山の手前に王国がある。
そう、ジェルヴェーズ王国が!!
良かった、あともう少しだ。ぶっちゃけ、マーケットで地図買うか悩んでたよ~
しかし大丈夫か?
何だかんだ夕方近いじゃん。
ちょっと無茶して光魔法で肉体強化! 移動速度を上昇!!
急いでいるからモンスターは基本スルー!
邪魔だったら、ペンに土魔法を付与して刃の線を形成、風魔法と火魔法で速度を高めて――
「ギャウン!」
群れで襲い掛かって来た狼共を一掃!
こんな感じでよろしくゥ!!
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はぁはぁ、やっと着いた。それっぽい明かりが見えて来ると、遠目からも城のような建造物が分かる。
あれがジェルヴェーズ王国国立図書館だ。
暗くなる前でよかったよ~。
入国手続きの受付嬢が「こんばんは」と挨拶をする。
「長旅お疲れ様です。こちらはジェルヴェーズ王国入国受付所です。観光でしょうか? 長期のご滞在でしょうか? それとも国籍取得でしょうか」
あー、どうしよう。
「こ、国籍取得をお願いします」
駄目元でやってみよう。
受付嬢が「かしこまりました」と告げたら、何か宙に変な文字みたいなのを大量に浮かび上がらせる。
え、なんだろ。
書いてある事がわからないけど、プログラミングっぽくないか?
……待てよ? 種族スキルの『創造言語』??
それっぽい! やり方は……図書館で調べろってことね!!
実際、何をしたか分からないけど作業を完了させた受付嬢が「お待たせしました」と言葉をかける。
最初に掲示板で報告されていた国籍取得の説明。
次にジェルヴェーズ王国の地図を渡される。
公共施設、店や宿の位置。宿に関しては空き状況も確認できた。
「それでは、より良い新生活をお楽しみください」
入り口の向こう側は、絵に描いたようなヨーロッパ風の街並みが広がっていた。
壁の作りも、煉瓦道も、綺麗に整備されながらも古さがアクセントになっている雰囲気。
そして、何より――
誰もいない!
え、こわっ!?
サービス開始二日目のVRMMOの居住区域だよね!!?
とんでもなく過疎ってないと、こんな事ないよ!
例の迷惑プレイヤーのせい!? いやまさかぁ~……ここまで影響ある位、酷いの?
あ、公式HPに載ってたNPCがいる。
異世界式キッチンカーで食糧販売しているNPC『コーデリア』さん。
無表情で銀髪ツインテールの少女だ。
こういうキャラって人気ありそうなんだけど、周囲に誰もいない。
近づくと淡々な声色で話しかけて来る。
「いらっしゃい。何買うの」
えーと……えっ?
販売しているのはゼリー飲料。
コーデリアさんのオリジナル商品もあるが、一部よく見かける現実のゼリー飲料がいくつか並んでいた。
き、企業宣伝……NPCに販売させなくても。
同情がてらオリジナルのゼリー飲料を購入しておいた。バナナ味を。
「一個100Gね」
消費期限は結構長持ちするから、急いで食べる必要なくて安心だ。
すると、コーデリアさんがついでに話す。
「オギノー。宿屋には門限があるから、早くいきな」
「門限?」
「大体18時から4時まで閉まるから」
え、もうすぐじゃん。ギリギリすぎ!
「分かりました。教えて頂き、ありがとうございます」
急いで礼を告げて近くで一番安い宿屋へ駆けこむ私。
ちなみに途中まで誰とも遭遇しません! コワイ!!
入ってすぐの所に受付カウンターがあって店主の男性ノーブルがいる。『観察』スキルで[ヘーゲル]という名前なのが分かった。
向こうは本を読んでいて私の来店と共に、顔を上げた。ダウナー系って言うのか、ちょっと疲れ切っただらしない顔立ち。例のモブ顔のタクとは大違いである。
面倒そうな深い溜息を吐きながら「一人か」と聞いて来た。
私は頷いてから、悩む。
ううむ、何日泊まろう……長期宿泊していいのかな。
「一月くらい泊まっても大丈夫ですか?」
「一月」
あれ? 異世界だと暦ない? あるかも知らない……ないのか??
「さ、30日です。30」
「3000G」
「あ、はい」
「朝食は8時から9時、夕食は19時から20時。それ以外の時間は出さない」
「わかりました」
「門限は18時から翌朝4時」
はい。聞いてます。大丈夫です。
私が料金を支払って、ヘーゲルさんが書類に書き込む。何かの判を押した時、バァン!ってデカイ音したのはびくっしてしまった。
部屋の鍵を無言で差し出してきて、やり取り終了。
私は平気だけど、あまりに愛想ないから人によっては受け付けないタイプだなぁ。
宿内にある時計が18時の音を鳴らすと、私が入って来た扉自体がふっと消えてしまった。
え、完全に外出れない感じ!?
しかし、門限か。
……でも掲示板で門限云々の話題はなかったと思うんだよなぁ。
まぁいいや。ワシはもう疲れたよ。
全力疾走で入国したので、かなり疲労感溜まっていた私は部屋を目指した。
捕捉説明
『オギノー』のイントネーションは『ヨ○ボー』と同じ




