【あなたがアイドル】大食い
プレイヤーが活動するオープンワールドは、現在、六つある。
次回のアップデートでは、新たなオープンワールドを解放すると予告されているぞ。
私が向かったのは『マーケティングエリア』と呼ばれる商業施設の密集地になっている場所。
ここで、何をするかと言うと――
「さぁ、間もなく小籠包大食い大会が始まるよ!」
食べに来たのである!
ぶっちゃけ、食べる目的!!
売上良いVRMMOなだけあって味の再現はかなりされており、絶品だと噂!
しかし、何故こんなものがあるかと言うと……
この『マーケティングエリア』は個人アピールの場所なのだ。
公共広場を使った特技のアピール。
容姿を整え、ファッショナブルに佇むだけでも声をかけられるとか……
つまり、この大食い大会も個人アピールの1つとなる。
ちなみに、この手の大会系で獲得できる賞金も、容姿や技量を磨くのに必要なのだ。
参加者は私以外にも、小柄な少女数名、女性数名、男性は女性よりも比率が高め。
とくに男性はガタイいい体格が多い。
大食い系は、食べられる量は体力基準となっているそうで、男性も女性も体力のステータスが高ければ有利となるのだ。
つまり、私のような初期ステじゃ、あまり食べられない。残念。
でもいいのだ。私は食べに来たのだから!
開始のベルと共に、いただきます!
うむ! 小籠包だから――熱い!
中にあるスープが熱々で火傷するから、普通に食べる時は気を付けよう!
でも、VRだから全然平気。
いやまぁ、ちゃんと熱さの感覚はあるけど、食べ続けられない訳ではないからね。
これで熱さに悶える強制モーションが入るせいで食べ続けられないクソゲーなら文句言ってたよ。
熱々の小籠包の大きさは、レンゲにちょうど収まるサイズ。
これがセイロに3つ入っているもので1皿分。
淡々と食べていくだけ。
やる事は、ビックリするほど単純作業。後半にかけて辛くなるらしい。
しかし……10皿に到達した辺りで、ちょっと辛い。
満腹度ではなく、味に飽きてきたのだ。
ここでNPC補正が効いてくれれば助かるんだが……私は望みをかけて店員さんを呼ぶ。
「すみません。からし欲しいです。ありますか?」
「え? からし……ないです。すみません」
「じゃあ、別の醤油は?」
「醤油はこれしか、ありませんけど……」
「ご飯貰えます?」
「ご飯!?」
「はい、お米のご飯。お茶碗一杯分お願いします」
「……ちょ、ちょっとお待ちください」
おお、ご飯貰えるのか! 助かった~!!
ご飯があるだけでも大分、流れが変わって来るぞ。あと10皿いける!
やっぱり、醤油と小籠包スープの出汁を染み込ませたご飯は美味いぜ!!
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「しゅ~りょ~!」
終了のベルが鳴り響いた。
普通にご飯3杯と小籠包は25皿食べたけど、優勝は他に体力ある男性がかっさらってしまった。
ちなみに彼は小籠包95皿!
マジもんの大食いファイターかよ。
そして、大会終了と共に
[『スキル:いつものペース』を取得しました]
というメッセージが表示。
プレイヤーの行動に合わせたスキル・称号を取得・獲得する事があるのだ。
『スキル:いつものペース』
一定のペースを継続すると体力を維持する事が可能。
ペースゲージのラインに合わせて行動し続けよう。
いきなり新要素が出てきたが、自動的に『ペースゲージ』の解説も表示される。
『ペースゲージ』
特定時、端に表示されるゲージを示します。
ラインが上にあるほど、プレイヤーに負荷がかかっている状態。
下にあるほど、プレイヤーの負荷が軽減されている状態です。
負荷がかかっているほど、体力の減少は激しいですが、ステータスが伸びやすくなります。
負荷が軽減されているほど、体力の減少は抑えますが、ステータスは伸びにくいです。
要するに大食いでも、これで体力増やさなくても沢山食べれるってワケ。
いや、冗談でもなく本当なのだ。
私だって、下調べなしでこのゲームを始めていない。
これから着実に、大食い専用スキルを取得・獲得していくぞ。
次の『回転寿司大食い大会』。
ここでも優勝はできなかったが色んな寿司が食べられて満足。
更に、称号を獲得。
『称号:期待の大食い新人』
大食い大会で、対象の食材を50皿以上完食した称号。
食事による満腹度の軽減、空腹度の軽減の効果。
そろそろ、賞金を得たいので単独の大食いチャレンジをするぞ。
でか盛りラーメンを制限時間完食で賞金ゲット!
とにかく油っこい奴じゃねーか。味も濃厚すぎて別の意味でキツイ……
何とか完食し、賞金入手。
『称号:完食!』
大食いチャレンジで制限時間内に完食する。
完食成功数により満腹度軽減。
よしよし!
最近、全然食べていなかった分も合わせて満腹なので、ログアウトしよう。




