【ヴァルフェリアオンライン】後日談
久々に不知火のマイルームである一軒家に来ると、雑草が伸びまくって、部屋も埃臭い。
握り飯を軽く食べて、まずは清掃をやろう。
念の為、家の概要にあるイベントヒントも取り下げる。
さて……香辛料の確保以外にも、やるべき事がある。
モルモー騒動で有耶無耶となっていたギルドマスター試験と流派の全取得だ。
『黄金ノ村』の復興は落ち着いた模様。
異邦人たちの受け入れをしてくれるかは怪しいものだが……避けられない関門でもある。
そして、ついでに『黄金ノ村』でドラゴン君の診断をして貰いたい。
「そういう訳で、症状が良くなっているか検査に向かいますよ」
「ちゅら~……」
いつも通り、瑠璃さんと一緒に、今回はドラゴン君もテイムし同行する。
魔素の巡りが良くなっているようだが、医療やテイマーの資格すらない私がやっている療法に過ぎない。
ちゃんと、検査を受けようとは思っていた。
そう考えると……無難に『黄金ノ村』となる訳である。
道中、山脈――鬼ヶ峰周辺でしか確保できない食材を多く確保。
それらをドワーフのダンテのアカウントに送る。
数打てば当たる理論で、とにかく食べまくって検証するしかフルコースを発見できないだろう。
しかし……『逢魔鴇』限定の食材は結構あるので大変!
食べて検証するのも時間がかかりそう。
「ぷいぷい」
「ぷーい! ぷーい!!」
山脈の洞窟内も探索してみる。ここでしか取れない鉱石や食材もあるのだ。
道中、モルモーたちの可愛い鳴き声が聞こえる。
彼らも平和で暮らしているようで何より。
「なおん」
「瑠璃さん、発見しましたか」
瑠璃さんの水の感知能力を生かして、洞窟内にある『地底湖』を発見してくれた。
暴走状態のモルモーたちが山脈内部を無茶苦茶にしてしまったせいで、地形が変化しており。
図書館の地図がアテにならない状態となっていたのだ。
てっきり、ノーブルの改変処理で戻してくれてたと思ったのに……
改変処理をしたのは、被害を受けたモルモーたちだけらしい。
山脈内部以外も周囲の地形は、荒れたまま。
モルモーたちが落石させた岩とか、そのまんま放置。
このくらいは、自分たちで何とかしろと、まさしく神様からのお達しって奴。
話を戻して。
この地底湖でしか入手できない食材――魚が数匹いる筈。
私は釣り。瑠璃さんは潜水。それぞれの手段でゲットに挑む。
ドラゴン君には、火の暖を担当して貰った。
当然だけど、地底湖なので寒い! ドラゴン君の役割は結構重要なのだ。
私も私で防寒具としてモップシープの毛で編んだセーターとニット帽を装着しているぞ。
「温かくて助かります。ありがとうございますね」
「ちゅら♪」
どっちにしても、寒いものは寒い!
瑠璃さんとて、寒さには強い生態ではないので、時間勝負だ。
よし! まず一匹!!
凄い……ほぼ透明で臓器まで透き通った『スカシハギ』という魚。
そう、臓器まで透明なもので調理するのが大変なのだが、美味で有名である。
瑠璃さんは『オビノボリ』という、帯のように平べったく長い胴体が特徴の魚をくわえて陸に戻って来た。
……ぬう。
一応、地底湖に罠を仕掛けたけど、魚は来なかった。
簡単にはいかないものだ。長居はできないので、瑠璃さんの体を乾かして、体を温めてから出発。
いよいよ『黄金ノ村』へ向かおうとした時……
「きゅいいいいいいいいいいいいい! きゅい! きゅい! きゅい!」
え!? 何事!!?
尋常ではないモルモーの鳴き声を聞いて、また害悪プレイヤーの仕業かと勘ぐる。
困惑するドラゴン君を他所に「なおん」と瑠璃さんが一声鳴いて導いてくれた。
やはり、猫は猫で嗅覚が良い。
悲鳴を上げているモルモーの現場まで駆け付けられた。
そこには……
「ぷいいいいいいいいいいいい! きゅいいいいいいいい!!」
暴れている、いや、興奮している1匹のモルモー。
その雄モルモーには『モル助』というニックネームがあった。
ニックネームがあるって事は、プレイヤーの誰かが捨てた個体なのだろう。
『モル助』は数匹のモルモーの周辺で興奮状態になっている。
数匹のモルモーたちは放心状態で蹲っており、全員が雌。しかも妊娠の状態。
ああ~……なぁんだ。
発情で興奮しているだけかぁ~、ビックリしたよ、もぉ……
瑠璃さんも心配したのに、目の前の光景に呆れた様子。
ドラゴン君は、どういう事か理解できない模様。
子供の君にはまだ早いぞ。
にしても、洞窟どころか山脈にもプレイヤーの姿が一切ないのは、ちょっと怖い。
内心ビクビクしながら『黄金ノ村』へ訪れてみると……
何と、沢山のプレイヤーたちがいるではないか!




