【ヴァルフェリアオンライン】スープ
てな具合に説明してたら、アレクさんが廃人みたいな感じに。
私は慌てて伝えた。
「いきなり、コレをやれってのは無理があるので、真似しなくていいですよっ。取り合えず、私はこういうやり方をしてるというだけですのね。ただ、漫画を描いてマーケットに投稿するとなると『図面作成』をある程度、使いこなせないといけませんから……」
「その、違う、せ、先生のやっている通りです。考えれば、こういう背景とか、構図とか、ちゃんと理解しないと漫画は描けない」
「まぁ。そうですね……」
「別に……必要ないと思って、スキルの成長も何もして来なかった自分が……情けない」
「大丈夫です。今からでも全然間に合いますから」
基本的な『図面作成』の操作方法を始め、まずは背景作成方法から整えていく。
ちょっとしたショートカットも出来るようになったアレクさん。
腐っても、やはりノーブルとドワーフの血が混ざっているからか、飲み込みが早い!
ついでに私は一つ尋ねる。
「ちなみに、どんな話を描くか構想などは?」
「えっと、先生と同じ……」
「謎解きもの、ですか。どんなものか楽しみですね」
「い、いや、そんな良いものかは」
「いえ。純粋にこの世界の現地人目線で何が謎になりえるか、どんなものが未解決事件として扱われるか。どう処理されるのか、など異邦人の私には実感できないものです。むしろ、アレクさんの方が有利ですよ」
「なる、ほど」
一応、私の漫画はNPCにも売れて来ているが、購入者は総人口の1割にも満たない。
原因は、やはり作中での『謎』や『事件』は現地人の方々には共感できない奴なんだろう。
今日の勉強会を終えて、最後にアレクさんのご両親に尋ねる。
「こんな事を伺うのもなんですが、ドワーフのフルコースについて何かご存知の事はありますか?」
「あら! 『運命のフルコース』のことかしら」
「おお、お前さんの体の煌めき。フルコースの1つを見つけたのか!」
「まあ、はい。ただ、異邦人の私にはフルコースの内容が分からないものでして」
「それもそうか。ワシも祖父から伝承として聞いた程度の事しら知らんが……ワシら個人個人のドワーフの肉体と相性のいい『適合食材』があるという。各食材はステータスのそれぞれを強化できるものとなっている……『運命のフルコース』と呼ばれているのだ」
予想通り!
『運命のフルコース』とやらは、ステータスに適した食材。
彼らの話を聞くに、フルコースの内容は……
前菜
スープ
魚料理
肉料理
メイン
デザート
ドリンク
となっていた。
ドリンクって別にあるんだ。
「あと、今回はたまたま該当食材をスープに使っていたので、スープの食材だと判明したのでしょうか? 別の料理に使って、適合食材だと判明できるかどうか不安なんです」
「ううむ……流石に、そこまでは分からんのう。だが、適合食材は中々巡り合う事もない。お前さんは幸運と考えた方がいい」
「他のフルコースを完成させた方はいらっしゃらないのでしょうか?」
「噂にも聞かんなぁ」
「ドワーフの中には『運命のフルコース』を見つける為に、国から出る者が多いけど、完成させた方はいないわ」
マジか……!?
と、思ってましたが。
スープの食材が魔界産の『エンヴィーバード』だったのを考えると、確かに難易度高そう!
メイン食材に、高難易度討伐要求されるドラゴンが入りそうな予感……!!
★
「ふぁ~~、50連討伐キツかった~。これが例のブツですぜ。旦那」
ノーブルのアカウントに帰還した私にナーサリーさんが何か送ってくる。
こ、これは……『ドリームドラゴン』!
夢の世界にしかいない竜、って文字通りの存在だが、全ての部位の味が……甘い!
想像できないけど、スイーツみたいなお肉なのである!
「ありがとうございます。こんなにいいんですか?」
「いつもは普通に売ってたもんだからな。ぶっちゃけ目当ては装備用の素材。ドラゴンはドロップランダムで辛いぞ」
この手のゲームはプレイヤーに周回させてナンボだからね。
って、もしかして
「ナーサリーさんも武闘大会参加するんですか?」
「逃げ専門だけどな~」
あぁ~、私もそろそろ考えないと。
ランキング晒しがなかったら、無難にオーガの不知火で参加してただろう。
それこそ、戦闘用アカとして。
でも、例のランキングもあるから不知火で参加すると、集中砲火間違いなし。
加えて、オギノでは参加したくない。
……となると、現実の体格が標準の種族――獣人? 今から新アカ作る?? マジ?
一応、武闘大会まで時間はあるけれど……うーん……!
やっぱり晒し晒されが怖い。
じゃあ、ドワーフで行くかは微妙。だって動きにくいし。
ハーフリングも同じく。
人間、っていうのも微妙だなぁ。
エルフ……エルフ、か。
ゲームの知識を得る事で、火属性のエルフは汎用性ある立ち回りができると確信はある。
うん。そうだな!
現実の体格が標準の『獣人』アカは最終兵器として残そう。
FEOにログインする気力がない分、武闘大会用のエルフアカウントを作成。育成しようじゃないか!




