【ヴァルフェリアオンライン】目撃者?
「ちゅら~……ちゅら~」
ん?
どこかで聞いたような鳴き声と共に、それとなく姿を現したのはドラゴンの子供……
あっ、この子は例の集りドラゴン君じゃないか。
今度は私達の所に来たのかい。
こんな人気ない場所で彷徨っているとは……街の人達に無視されてしまったんだろうなぁ。
すると、アレクさんが珍しく、すくっとスムーズに立ち上がるとドラゴン君に問い詰めた。
「貴様、聞いていたか?」
「ちゅ、ちゅら!? ちゅら! ちゅらちゅらっ!!」
知らないと言わんばかりの態度のドラゴン君に対して、アレクさんが低い声色で言う。
「どちらにしろ、始末した方がいいか」
「ちゅ、ちゅら~!」
流石の展開に私も困惑してしまう。
ドラゴン君は、咄嗟に私のところへ駆けて来るのだった。
私は、険しい表情をするアレクさんを宥めようと、声をかける。
「落ち着いて下さい。この子はちょっと訳アリでして、周囲の人達からは信用されていません」
「先生。そうは言ってもテイムで正しい記憶を読み取れる。私がノーブルだとバレれば……色々困る」
「ああ……まだ資金が集まっていない事でしょうか?」
「私には、兄弟がいる、らしい。三つ子の、姿が……似ていると」
三つ子ォ!?
更なる追加情報に困ってしまうよ!
い、いや……でもよく考えれば、あの漫画の購入者割合。
ドワーフとノーブルのハーフが3人……三兄弟、皆さん購入されていたんですか。
アレクさんは、何とか話を続けてくれる。
「それで、1人は普通に医者をしている、から。流石に、まだ、と思って。バレるのは」
「う、ううん。成程」
ジェルヴェーズ王国で国籍取得したら、したで、何かバレそうっていうか。
NPCでも移住しただけでも、色々問題なりそうな気がする。
プレイヤーたちの情報網だってあるから……とは言え。アレクさんも限界みたいだし。
私はドラゴン君を確保しつつ提案する。
「アレクさんの御兄弟の身分を考慮すると、ジェルヴェーズ王国へ移住するのも問題になりかねませんね。国籍取得している異邦人は少ないですが、観光で訪れている異邦人の方がいらっしゃいますし、彼らからアレクさんの存在を噂されてしまう事がありえます」
「……そ、そう、です……ね」
「なので。一旦、私が所有する別空間で過ごすというのはどうでしょうか? その間に、私がジェルヴェーズ王国の関係者の方にアレクさんの処遇を相談します」
「え。別空間。凄い」
「はい。ちなみにこの子も一旦、そちらに移します。怪我しているようなので」
「ちゅら!?」
驚いているドラゴン君に念を押して「怪我しているんですよね?」と再度確認する。
便宜上、怪我している名目で保護という訳だ。
ドラゴン君も「ちゅら……」と若干、戸惑い気味に返事をしてくれる。
そう、別空間とは『館』の事である。
フレンド登録したキャサリンさん達を館に招待できるように、アレクさんも招待可能だ。
というのも……アレクさん、NPCもフレンド登録する事が可能!
彼らもプレイヤーと同様にIDを所有しているのだ。
てな訳でアレクさんとフレンド登録……
「せ、先生。その、どこ、フレンドっ……分からないっ……」
「アレクさん、落ち着きましょう。ええと、ですね。まずは、メニュー画面のココを……」
しようとしたが、ちょっと苦戦しつつ。
無事にアレクさんとフレンド登録する事ができたぞ!
<称号:現地の友達>を獲得しました。
特殊な称号を回収しつつ、アレクさんは私と早く合流し、漫画を教わりたいので資金集めを急ぐと言い。
颯爽と、駆けていく姿は先程とは別人であった。
で、巻き込まれてしまったドラゴン君だけど。なんか様子がおかしいぞ?
「ちゅ……ちゅら」
本当に具合が悪いそうだ。
力をなくして、私の腕の中でだらしない状態になっている。
ドワーフのステータスやスキルでは判断できないので、私はドラゴン君に呼び掛けた。
「容態を確認する為にも『テイム』してよろしいでしょうか」
「ちゅ、ちゅら……」
何だかんだ、無料ガチャで獲得していたテイムスキルを活用し、ドラゴン君を館に転移。
ノーブルに切り替えて、再度館へ。
ドラゴン君は若干、驚いている様子だが、そんな場合ではない!
『後輪』を使って精密検査!
……むむ?
「君、ハーフだったのかい?」
「ちゅ、ちゅら?」
子供には分からんか。
しかし、精密検査したところ。この子は『クリムゾンガーネットドラゴン』と土属性の『ゴールドアンバードラゴン』のハーフ。
気にかけていた翼は……何と『鉱石症』が発症していた。
『鉱石症』は土属性の魔素が固まる事で結晶化、文字通り体内で鉱石となってしまう土属性特有の病気。
土属性の動物から、人族も普通にかかるものだ。
ドラゴン君はまだ幼い子供だからか、土属性の魔素をコントロールできていないのか。
どちらにせよ、パッと見では判別できない症例に、悩まされていた訳か。
ううむ。
テイマーの方々もここまで詳細に検査はしなかったんだろうし、仕方ない、事ではあるけど。
「取り合えず、君はこれから特訓をしましょうか」
「ちゅら!?」
捕捉説明
<称号:現地の友達>
取得条件 NPCをフレンド登録する
効果 チャットスタンプ10種追加




