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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その39


気分が良くなり自信を取り戻した筈のタクは、一瞬で不機嫌になり、苛立ちを隠せないままWFOの方へとログインする事に。

カタリナの件も片付いた。

これからは、また自由にゲームをやっていこうと思って冒険者ギルドのクエスト受注を行う。

すると、受付嬢から一言呼び掛けられる。


「今、緊急クエストがあるの。引き受けてくれる?」


「はい! 勿論!!」


意気揚々とタクが受付嬢から受け取ったクエストは――


「特定人物の捜索、ですか」


「そう! 人間の男性『アレス』って人を……」


「え!? ちょ、ちょっと待って下さい! この依頼って、メリッサさんが前に出してた奴ですよね!? 結構時間が経っている筈なのに、どうして……」


そう。

アレスの捜索届が出されて、タクが現実時間に戻り……加速時間も相まって、ゲーム内時間は相応に経過している筈。

なのに、アレスの捜索クエストは、まだ残っていた。

受付嬢も気まずそうな表情を浮かべて、小声でタクに告げる。


「実はね……誰も受注してくれないの」


「え!? そんな、どうして!」


「この人が全然見つからないのが理由だと思う。最初は受注してくれる人が結構いたけど、この人が出国しちゃったのが判明してから、クエストリタイアする人ばっかり。この国にいない以上、こっちで探すより他国のギルドや個人ギルドに任せたほうがいいって……」


「え……待って下さい。じゃあ……!」


タクはカタリナの容態が気になり、慌てて彼女のいる小屋を目指そうとした矢先。


「ドンク!」


「え!? あ! メリッサ……さん……」


以前よりも形相の酷いメリッサがタクの腕を掴んでくる。


「何してたの……何をやっていたの……! 貴方のせいでカタリナが、カタリナが!!」


「な、にって。メリッサさんがもう大丈夫って、休んでいいって言ったからじゃないですか! 僕だって、疲れて――」


バゴッ!


タクは拗ねた態度で反論すると、メリッサがタクに殴りかかった。

あまりの行動に、タクは一度攻撃を受けてしまい。

「何を」と言いかけたところで逆サイドから殴られる。


タクがお得意のパリィで受け流そうと構えたが、メリッサの方は光の粘着性を付与し、パリィを発動しにくくさせて、更に殴りかかるという技を披露する。

医者であるメリッサは暴れる患者を抑える為に取得した技を、タクに苛立ちをぶつける暴力に利用してしまった。


NPCがプレイヤーに攻撃する。

しかも、強盗などの悪党ではなく一般人がそんな事をするので、何事かと周囲のプレイヤーは愕然としてしまう。

GWという事もあり、注目の目は多かった。


タクを殴る蹴るの暴力を振るいながら、メリッサは叫ぶ。


「偉そうな! 態度! 取ってんじゃ、ないわよ! 何も! してない! 癖に!! カタリナが苦しんでいる、のに! 呑気にメシ食ってんじゃ、ないわよ! メシと、食事、だけでしょ! すぐ戻ってきなさい! この! 薄ノロ!! 口だけ野郎!」


「う、うぐ、メリ、ッサ、さん」


タクの世界と、こっちの世界では時間の流れが違う。

だから、仮眠程度を軽く取っても、ゲーム内時間では2日経過してしまっている。

更に、タクは「もう大丈夫」という言葉を間に受けて、まほ★まほやFEOなど、他のゲームを楽しんでしまった。

カタリナが心配なのは本心だが、もう大丈夫と告げられたら、大丈夫なんだと思ってしまったのだ。


「ちょちょ……! ギルド内で暴れないで! 誰か、誰か来て!!」


暴れているのがギルドの中なので、職員たちがメリッサを何とか抑え込む。

だが、メリッサはタクが職員たちに保護され、治療されようとしているのが納得できずに。

更に叫んだ。


「異邦人の方達! コイツ、モルモーを虐待した奴よ! 博覧会でモルモーを連れ込んで暴れてたのはコイツ! 自分で自白してたわ!! コイツを許さないでぇ! モルモーの次は……私の妹を殺そうとしているのよォォッ!!」


メリッサが叫んだ内容に、周囲の雰囲気がざわつく。

タクはこのタイミングでそれを言われた事に、動揺を隠せなかった。


「ぼ……僕は、そんなつもり、じゃ……」


普通、NPCであれプレイヤーであれ、こんな事を言い放って、周囲の人々が間に受ける事はない。

しかし……プレイヤーも人間なのだ。

そして、VRMMOという界隈にいる以上、そういった事件やブラックリスト入りしているプレイヤーなどは現実のニュースと同じレベルで把握しており。

更に、周囲の個々の目と観察力は、無個性なモブではない。


「おい、アイツってモルモー晒しされてた奴のところに割って入ろうとしてたよな?」


「あー……待って、そうだわ」


「ドラゴンの子供抱えて、ギルドの脇で泣いてた奴じゃね?」


「次はドラゴンの虐待をするのかよ」


「言われてみたら」


「あの子供っぽい感じ」


「アイツだよ」


「うわ、マジか」


「まだゲームやってんの?」


「何も反省してないじゃん」


「今度は動物じゃなくてNPCって」


周囲のプレイヤーたちからの言葉に、タクは動揺を隠せなかった。

タクはそんなつもりはなかった。

だが、周囲のプレイヤーの様子からタクの行動は、一際浮いていたと分かる。


ドラゴンの子供を抱えて泣いていたのも、勘違いしてモルモー晒しの場面に割り込んで来たのも。

全て見られていて、全て晒されていた。

それを見た人々から「変な奴」と思われていた。


羞恥心が爆発して赤面状態のタクに、何かが直撃。

これにより、タクは気絶状態になってしまった。

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