表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

181/366

【Fatum Essence Online】星底キラレ


「はぁ……」


VRアイドル『星底キラレ』こと星川加代流(かよる)は本日何度目か分からない溜息をつく。

今日も動画配信では何事もないように振る舞っていたが、内心は平常心ではいられない。


加代流が、注目FEOの始めたはいいものの。

彼女のプレイキャラ=演者のカグヤが食い煩いで暴走し、手に負えない状況となった。

そんな時――まるで白馬の王子のように颯爽と彼女の手助けになったのが、タクだった。


「僕に任せて! 料理を作るのは得意なんだ!!」


手際よく、それでいて美味しい料理を提供してくれるタクは、まさに地獄の仏。

加代流にとっては救世主。

何より、男性であるタクが絶品の料理を提供してくれた事に感動した。

男性なんて家事を女性にやらせるものだと、家庭内環境で思い知らされていた加代流。


最初、タクが料理を作ると言い出した時も正直、いい出来ではないんだろうと思っていた。

でも……違った。

本当に料理を作ってくれるし、料理そのものだって美味しい。

加えて、タクは謙虚な性格で謙遜の態度を取っているのも、加代流にとって好感度が高かった。


更にゲームも上手だ。

攻略に手間取った際、アドバイスをくれたのもタク。

他プレイヤーが獲得しなかったネロを獲得できたのだってタクの実力だ。


なのに……


(イベントで、ちょっと見落としただけなのに、周りの人達の方が冷た過ぎるよ!)


イベントでタクがグループ全体に迷惑をかけたバッシングを受けて、タクはログインをしなくなってしまった。

結果、カグヤの食い煩いが発生し、手に負えなくなり、ツクヨミを始めとする数々のプレイヤーたちが加代流に協力し、事態は解決した……が。

当の加代流は上の空で、上辺では他プレイヤーたちにお礼をしつつも、タクの安否ばかり意識している。


(タク君……戻って来てくれないかな……)


そんな時、加代流の元にメッセージが届く。


「え!? タク君!」


なんとタクからのメッセージだった。

慌てて加代流はチャットを開いてタクとやり取りを交わす。


[ゼウス:返事が遅くなってごめん]


[ゼウス:誘ってくれてありがとう! でも、僕が料理教室に参加するのは良くないと思う]


[ゼウス:イベントで色んな人に迷惑かけちゃったから、参加したら空気が悪くなるんじゃないかな]


[カグヤ:そんなこと無いよ!]


[カグヤ:それよりタク君が戻って来てくれて良かった…!]


[ゼウス:ありがとう、カグヤさん]


[カグヤ:私のことはカヨルって呼んでって前に言ったじゃん!]


[ゼウス:カヨルさん? 何でカヨルさん??]


[カグヤ:私の本名だよ! タク君には普通に名前で呼んで欲しいなって……]


[ゼウス:ごめん! 忘れてて……]


[カグヤ:全然ログインしてなかったから、仕方ないよ! 気にしてない!!]


加代流は何となくVRアイドルの活動を始めた。

段々と人気が出て嬉しかったものの、現実との差に苦悩し続けていたのである。

現実では、冴えないし、外見もパッとしなくて注目されない。


周囲の人間はVRアイドルの『星底キラレ』を期待している。

普通の女の子としては接してくれない……でも、タクは違った。

『星底キラレ』を知らない、純粋に自分を1人の女の子として扱ってくれる。


そうだ、と加代流はタクに説明する。


[カグヤ:料理教室をやろうと思ったんだけど、やっぱり無理かなって]


[ゼウス:え? どうして??]


[カグヤ:ほら。前にタク君がフレンドルームでAIが勝手にお喋りしちゃって、意思疎通できなくなった事あるでしょ?]


[カグヤ:タク君以外の人達も同じ事が起きるかもしれないし、ちゃんと料理教室ができるか不安だから]


[ゼウス:それはそうだけど]


[ゼウス:でも、やるだけやってみようよ!]


[ゼウス:料理の作り方を説明するくらいならAIも邪魔しないと思う]


[ゼウス:これが出来ないなら折角のフレンドルームだって意味がないじゃないか]


[カグヤ:うん。私もそう思ってる。でも、不安に思ってる人もいるんだよね]


[カグヤ:あと、料理教室の形式も困ってて]


[カグヤ:1人1人時間をかけてやるのも、GWみたいに余裕がないと無理だし……]


[ゼウス:それでいいと思うけど?]


[カグヤ:それをやるなら各自で録画したのを見せ合いっこした方が良いって、皆言うんだよね……]


[ゼウス:駄目だよ! もし、分からない事があったら質問が出来ないじゃないか]


[ゼウス:折角フレンドルームがあるんだから、交流するべきだよ!]


[カグヤ:うん。そうだよね……]


[ゼウス:どうしたの?]


[カグヤ:どっちにしても、ジャックさんは参加できないなって]


[カグヤ:ほら、切り裂きジャックのプレイヤーの人!]


[カグヤ:参加したいんだけど、何が起きるか分からないから動画を送るって]


よくも悪くもキャラ基準でAIが作動してしまう訳で、切り裂きジャックを含めた一部のキャラの言動に困っているプレイヤーもいるにはいる。

料理教室を開催するにしても、そこに女性キャラ多く集えば。

女性を殺戮するキャラが何をしでかすか分からないのは当然の事。

少なくとも、ジャックのプレイヤーは配慮して、調理の動画のみ送るとメッセージを送ってくれた。


しかし……


[ゼウス:分かった! 僕がジャックさんに交渉してくるよ!]


「………え?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ