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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その33


「どうして診てあげないんですか! 本当に翼に異常があったらどうするんですか!! ちゃんと診て下さい!!」


まるで一種のクレーマー状態になっているタク。

プレイヤーに案内された育成所で、ドラゴンの子供を引き取って貰おうとしたが、彼らは拒否するどころかドラゴンの子供を嘘つき呼ばわりするのだ。

俄かに信じられないどころか、動物の子供がそんな真似する訳がないとタクは拗ねた子供のような表情で鋭い眼光を飛ばす。

呆れた育成所のテイマーが、ドラゴンの子供に対して水の魔素を当てた。


「ちゅら!? ちゅら!」


「「あ」」


何とタクの腕から逃れながら、ドラゴンの子供は翼で飛び上がったではないか。

同行していたプレイヤーとタクが唖然とし、ドラゴンの子供は慌てた様子で外に飛び出してしまう。

テイマーは溜息混じりで告げた。


「ドラゴンの知能は優れているのよ。子供でも人族の五歳児程度の知能を持ってて、大人になると人族と会話できる個体もいるくらいにはね。貴方達は、あの子がここの迷惑常連だって知らなかったから仕方なかったんでしょうけど……少しは私達の話も聞いて欲しかったわ」


「え……あ……」


戸惑うタクを他所に、同行していたプレイヤーの方が先に「すみませんでした」と頭を下げた。

タクも彼につられる形で謝罪をする。


一方で、タクはショックを受けていた。

今までのVRMMOに登場する動物やテイムモンスターは、確かに相応の知能を持ち合わせていた。

でも、プレイヤーを騙す存在はいなかったのだ。


タクがテイムに拘っていた理由の一つに、テイムした動物や、テイムできる動物は嘘をつかない正直な存在だからというのがあった。

その理論が崩壊した事で、タクは育成所を出てから放心する有り様。

心配して、同行者のプレイヤーが「大丈夫か?」と声をかけてくれる。


「僕……僕、今まで色んなVRMMOをやって来ました。でも、動物が嘘をついたり人を騙すなんて事、初めてで……」


「ああ……個人的にWFOのAIの凄さを感じたけどね。君の言う通り、従来のVRMMOでここまで詳細にNPCや動物のAIをしっかりさせているのは無い。リアリティはあっても、AIはテンプレート的。まあ、ある意味ショックかもしれないけど、技術力の進歩だと前向きに見た方がいいよ」


「そう……ですね……」


タクと付き添ってくれたプレイヤーは、街に戻ってからその場でログアウトしてしまったが。

取り残されたタクは別の意味で立ち尽くす。

そんな時――


「ぷいいいいいいいいいい!!!」


「え!?」


まさかの動物の鳴き声にタクは我に返って、駆け付けた。

プレイヤーからNPCまで、様々な人々が取り囲んでいる中心には、3匹のモルモーが宙に浮かび上がった状態で苦しんでいるのだ!


明らかに体へ鞭打たれているように苦しむモルモー。

苦しく悲し気な鳴き声を漏らすモルモー。

更には、悲鳴を上げながらアイテムエフェクトを放出し始めたモルモー。


かつて同じ光景を目の当たりにしたタクは「止めろおおおおお!」と叫んでモルモーたちの方へ駆け寄ろうとしたが、周囲のプレイヤーに止められた。


「何をするんですか! どうしてあのモルモー達を助けてあげないんですか!!」


「お前、知らないのか? アレ、プレイヤーだぞ」


「……へ?」


「逢魔鴇でNPC大量虐殺したり、里の侵略をしようとした連中がペナルティ受けてる罰だよ。だから、関わらない方がいいって」


「君、掲示板とか見ないタイプ?」


そうこうしている内に、ペナルティを受けていたモルモーがドワーフプレイヤーに戻り、彼らは慌ててログアウトしている事から、彼らもまたタクと同じくペナルティを把握していなかったのだろう。

呆然とするタク。

悲劇の主人公のように叫んでいたタクを、周囲のプレイヤーたちがヒソヒソと噂する程だった。

羞恥心で顔が真っ赤になるタクは、思わずその場から逃げ出す。


「うう……! もう嫌だ……!」


初めてタクはVRMMOで嫌気を差していた。

何かやろうとすると空回りし、恥ずかしい思いをし、一体どうしてこんな事になってしまうのか。

無我夢中に走っていたせいでタクは、通行人の誰かと激突してしまうのである。


「うわっ!? い、たたたた……」


このムーヴも何度目かも分からない。それを繰り返し続けるタク。

アニメや漫画のように派手に尻餅をついて、痛がるタクが相手を見上げると


「……あれ? えっと……確か……」


そこにはカタリナの治療を行っていたアレンの姿があった。


「えっと、確か……アレンさん! どうしてここに? もしかして、カタリナちゃんの薬の材料を探しに? 僕にも手伝わせて下さい!」


タクは水を得た魚のように怒涛の勢いで、目の前にいるアレンに迫る。

だが……アレンの反応は無機質だった。

僅かに眉をひそめた程度で、何も返事も変化もない。

キラキラと眼差しを送って反応を期待するタクを一瞥してから、アレンは立ち去ろうとするのだ。


「へ? ちょ……ちょっと、待って下さい!」


慌ててタクが追いかけるが、アレンは黙々と歩き続ける。

タクは無意識に魔法を発動させた。

体内の火の魔素を動かし、身体能力を活性化。瞬発力でアレンを追い抜き、彼の前に立ち塞がる。


「待って下さい! どうして無視するんですか!!」


キッと相手の目と合わせるように睨むタクに、アレンは目を逸らそうとするので。

タクはアレンの視線に合わせるように動き回る。

対して、アレンは舌打ちを打つものだから「何ですか!」と更に怒鳴るタク。

そこへ――


「アレ()!? アンタ何をやっているの!」

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