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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【ヴァルフェリアオンライン】双子


「ちょっとアレン! こんな所で何をしているの!! その女は誰!?」


「誰だよ、お前!」


「え? なに?? 貴方の元カノ??」


「ちげーって!」


メリッサは、アレンと見知らぬ女を追いかけ問い詰めていた。

とんだ修羅場に巻き込まれたアレンらしき男性の態度は、何かガサツでチャラい感じ。

普段のアレンと雰囲気が異なったが、それでも髪型から顔立ちや身の丈までそっくりだった。

しかし、男性が言う。


「ステータスちゃんと見ろって! 俺の名前はアレス! ア・レ・ス!!」


「……アレ、()?」


メリッサがステータスを改めて確認したが、確かに男性の名前は『アレ()』だった。

しかし、見た目がほぼ同じ。名前が一文字違い。

こんな事がありうるのだろうか?

半信半疑でメリッサが問いただす。


「貴方、本当にアレンじゃないの?」


「だーかーら! アレンじゃねーし、そもそも俺はテメェみてーなブスとは付き合わねぇよ!!」


アレンとよく似た顔でそんな事を言われ、流石に腹が立ったメリッサはアレスにビンタをかます。

面倒事に巻き込まれたくないから、アレスと共にいた女性が逃げていく。


「あー! おい、ブス!! テメェのせいで逃げられたじゃねーか!」


「だったら一緒に来てくれる!? 貴方が本当にアレンじゃないか確かめるから!」


「アレンじゃねーよ!」





「メリッサ、帰って……え?」


「え……あ、アレン……」


結果として、アレスはアレンではなかった。

実際に、彼らがカタリナを匿っている小屋にアレン本人がおり、連れてきたアレスも普通に存在する。

全く瓜二つの外見で、名前も酷似していて、中身が全く別人という。

一瞬、魔族が変身しているのかと疑ったが、それよりもメリッサは別の可能性を問いただす。


「あ……アレン。貴方って双子の兄弟がいたの!?」


対して、アレンは気まずく答えた。


「……分からないよ。君も知っているだろう? メリッサ。僕は()()()だ。親や兄弟がいるかなんて……」


「あ……ごめんなさい」


そう、アレンはヒュルアニア公国の教会に捨てられていた赤子だった。

親も分からない、兄弟がいるかも定かではない。

アレンという最初からつけられていた名だけが、彼の存在の証。

つまるところ、メリッサは意図せず生き別れのアレンの兄弟を発見したという訳だ。

ほぼ部外者のようなアレスが、アレンに対し色々聞いてくるものだから、アレンの方は戸惑い気味である。

メリッサの方は――


(こんなにアレンそっくりなのに、中身は全然アレンに似てないわ)


と、ちょっとした失望感を覚えた。

アレンは教会のシスターがちゃんと教育してくれたから、礼儀正しい人間に育っただけで。

環境が違えば、変わってしまうものかもしれないと思ってしまう。

アレスがこんな事を切り出す。


「なぁ~兄弟。マジでコイツと結婚すんのぉ? コイツ、俺とお前の区別つけられないんだぜ? 似てるからって、同一人物扱いしてきてさぁ」


「ちょ……! それ、は」


メリッサは反論しようとしたが、事実だった。

本気で一瞬でも、アレンが浮気をしたんじゃないか、カタリナを放置して遊んでいたんじゃないかと疑ったのは事実なのだ。

アレンが首を横に振る。


「今回の件は仕方ないだろう。瓜二つの相手が存在するなんて、誰も想像しないんだから。メリッサ、僕は気にしていないから大丈夫」


「……いえ。私こそ……ごめんなさい」


落ち込むメリッサや、彼女の謝罪をスルーしてアレスが問う。


()()って何? 患者??」


「メリッサの妹、カタリナちゃんだ。『瘴気腫瘍』を患っている」


「えー。あんな重症化すんなんて、魔族と接触でもした?」


「ん? あ、ああ……カタリナちゃんの意識が戻らないから、感染経緯は不明だが……恐らく」


瘴気腫瘍は、モンスターや魔界の瘴気、魔族と接触する事で発生する感染症。

体内の魔素が瘴気により悪性化し、最悪の場合、死に至る。

だが、地上では瘴気の濃度は低く、通常のモンスターとの接触感染でも皮膚の炎症が残ったり、臓器に異常が起きるものの死に至る程ではないのだ。


つまり、強力な瘴気を持つ存在――魔族との接触感染となる訳だ。

普通の人間であれば、ここまでの知識を持ち合わせないが、スラスラとそのような話題にアレスが流したのに、アレンは少々驚く。

「ふーん」とじろじろカタリナを観察してからアレスが言う。


「俺が直そっか?」


「「は?」」


「俺の場合、治療じゃなくてー、ちょ~っと変わったやり方だけど、遺伝子情報引き出して細胞複製させりゃ、いけるいける! ……あーでも、魔力足りなくなるからエーテルちょうだい☆」


「ふざけないで!」


メリッサが叫んでアレスを追い出す。

彼女は医者として、アレスの態度が気に入らなかった。

本当に重症化状態の『瘴気腫瘍』を完治できるなら、アレスは何故こんな所で女遊びをしているのだ。


「カタリナの事も、医療も適当に扱ってる貴方なんか、たとえ本当に治療が出来ても治療させない! 世の中舐めてんじゃないわよ!!」


閉め出されたアレスは「えー」とぼやく。


「マジ直せんのになぁ~……………………まあ、いっか。別に。生き別れの兄弟だから、ちょっとやってやろうと思ったけど、モチベなくなったわ。さっさとこの国出よっと」

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