【ヴァルフェリアオンライン】侵入者
昼食を済ませた私は、ノーブルのアカウントでログインする。
ううむ、小屋の中を清掃し、こちらでは蜂蜜トースト、スクランブルエッグ、サラダに改良したコンソメスープという洋風の朝食を頂く事に。
オギノでログインした理由は、こちらでも『魔族の館』の報酬をゲットする為だ。
館そのものはオーガの方でゲットしたから、装備品とか、ガチャチケとか、魔族関連のアイテムとかね。
その前に!
逢魔鴇で沢山ゲットしたお土産を、お世話になったNPCの人達にあげようと思う。
エリーゼさんのロストページもこのタイミングで渡すつもりだ。
小屋から出て……あ、そうだ。
セキュリティチェックとエレメントチェリーの様子は? 問題ない??
「オーギノ! 貴様、いままで何処を放浪していた!!」
って……いきなり、ニューソがいるのだけど……
まあ、一応お土産を渡そうかなと思って近づいたら、彼はとんでもない事を言いだした。
「貴様が留守の間、新入りの異邦人が侵入しようとしていたのだぞ! 私が彼女たちを守らなければ、どうなっていた事か……」
ええ!? うせやろ!!?
改めて『創造言語』の履歴チェックしたら、それっぽい痕跡が。
うわ、怖っ!
こっちでプレミアムパック入っていないから隙つかれた奴かよぉ……これだからVRMMOは!!
今回ばかりは「すみません。対処して頂きありがとうございます」とニューソに頭を下げる私。
ついでにお土産も渡す。
「ふん。であれば、感謝の証としてエレメントチェリーを私のレストランに提供するのだな」
と、ニューソが言う。
彼がそれを要望するのなら、まあ構わないのだけど……だけど……ね?
もしかして、狙ってやってらしてる? みたいな疑念の目を向けてしまうのは当然の事で。
ニューソが分かりやすく焦った様子で「何だその反応は!?」とリアクションする。
「いえ、別に構いませんよ。水と土属性のエレメントチェリーだけでよろしいですか」
「む……一先ず、それだけで……いや! やはり全属性だ! 残りの属性は試作品として送るがいい」
ちょっとした報酬とか貰える?
ううん。今回に関してはNPCと友好関係を築く意味で、積極的に行動しよう。
あと念の為、ニューソに尋ねてみた。
「ちなみに侵入しようとした方が、何方かは……」
「なんだ。貴様ら異邦人同士で交流関係はないのか? バルフォードとナーサリー、キャシーだ。……ああ、キャシーではなく『キャサリン』だったな」
え!?
その内、二人知ってるんですけど!!?
ナーサリーさんって、あの図書館で寝てた人だよね!?
バルフォードさんはヘーゲルさんの宿泊まってた人……残りのキャサリンは知らん!
な、何故……どうして? 怖いよ、何考えてるか分からん。コワイ。
彼らはプレイヤーだからPvP目的で侵入したんだろうか?
本当にタイミングが良かった。
これを期に、小屋にあるものを館の方に移動させてしまおう!
★
お世話になったNPCの方々にお土産を渡し巡る。
なんだろう、反応が何と言うか淡白で薄い、社交辞令感覚だから喜んで貰えているのか分からん。
私は古のVRMMOプレイヤーとして、ちょっとでも好感度を稼げていると信じるしかない。
最後に手渡す事となったのはコーデリアさん。
彼女はキッチンカーで国内を転々としている為、マップで位置確認をしなくてはならない。
転移魔法で移動した先にいる彼女に「どうも」と話しかける。
コーデリアさんは相変わらず無表情、クール系なトーンで「いらっしゃい」と返事をする。
でも、一定の好感度を得られているお陰か、ちょっとした反応があった。
「久しぶり。逢魔鴇で沢山食べれて満足?」
「え、あ、はい……向こうの食事は美味しかったですね」
相変わらず行動筒抜けの個人情報ばら撒き!
オーガのアカウント作った事も見抜かれてしまうのか……お土産買った事も?
しかし、買ってしまったものは、しょうがないので私は『銀ノ峰』の工房で購入した兎の置物を渡す。
「その……これ、お土産です。つまらないものですが……気に入らなかった捨てても構いません」
「ふーん。なんで兎なの」
「ちょっと、コーデリアさんに似てるので」
「オギノーは私が性欲凄いように見えるんだ」
違うヨ!?!?!?!?!??!
「ち、違います! その、この、耳がコーデリアさんのツインテールっぽい感じ」
「はぁ?」
うう……もう止めて……コロシテ、コロ、シテ……
なんか、凄い。NPCから初めて威圧感ある「はぁ?」を言われちゃったよ。悪気なかったのに。
駄目だ……ノーブル相手に好感度高めるの難し過ぎる。
私が末期状態になっているのを他所に、コーデリアさんはお土産の置物をキッチンカーのカウンターに設置する………
え!?!?
そこに置いちゃうの!!??!??!
恥ずかしい! 流石に恥ずかしいって!! 嬉しいけど恥ずかしい!
他プレイヤーの人達にこれあげたの私とか言わないでよね!!?
「そうだ。オギノー。レーピオスがオギノーのこと探してたから、病院に行ってあげて」
「え? はい」
……な、なんだろう? 接点なかったのに……




