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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その24


神族・ノーブルの派遣が決定された『逢魔鴇(おうまがとき)』国内の反応は様々だった。


赤鬼たちは、別に神社に子供を匿わなくても、神族など追い返してやると息まいたり。

青鬼たちは、比較的冷静に子供たちを神社に誘導しつつも、職務を通常通り行い。

緑鬼たちは、里長が特別企画として、神隠しに合うのはどの鬼かの賭けをイベント規模で開催。

黄鬼たちは、異邦人の襲撃による避難所に使われていた神社が子供の匿いに使われ、病人怪我人、家をなくした者が路上に溢れてしまった。

紫鬼たちは、彼らの中にいるノーブル推しの者達が感極まって騒ぎを起こしていた。


そして、白鬼たちは平常心で子供たちに「神社でのお泊り会」を称して、誘導を行う。

ただ、子供で未成年者の中には、事情をある程度、把握している子もおり家族との別れを不安に思う者もいた。


オーガたちの一種の騒ぎに置いてきぼり状態なのは、異邦人であるプレイヤーたち。

とは言え、イベントが起きるのを半ば興味本位で楽しんでおり、彼らの邪魔にならないよう居座って様子見する者が多かった。

ただ……その中、タクだけは影を落としている。


「お母さん、お兄ちゃん……私も残る」


「駄目よ、貴方は行きなさい」


「うう、でも……」


悲しみと不安を抱えるやり取りを、タクは子供たちの誘導中、幾度も目の当たりにする。

子供たちは無事でも、彼らの家族はもしかしたら神族に連れ去られてしまう……

何とか出来ないのか。

どうにかできないのか。

こんなの、おかしい……駄目に決まっている。

タクはそんなもどかしい想いを募らせていくのだった。


「シロナギ~! おまたせー!」


「日美子ちゃん……うん。一緒に神社へ行こうか」


少女である日美子を安心させる為に、タクは彼女の手を握って共に神社へ目指す。


「神社にお泊りできるの、うれしい! あの神社はね、日葵お姉ちゃんがいつもお祈りしてる神社なの!! 色んなところ見せて貰えるかな!?」


「うん。見せて貰えると思うよ」


「やった~!」


無事に神社までタクが日美子を届ける寸前、日美子はふと思い出した不安をタクに言う。


「シロナギ。どうしよう、モモたちに餌あげるの忘れちゃった……」


「えっ」


「モモたち『にんしん』しているから沢山食べなきゃいけないのに……あたし、家に戻る!」


「だ、大丈夫! 日美子ちゃん。僕がモモたちの餌をあげるから、心配しないで」


「……うん」


どこなく納得できない様子で、日美子は頷いた。

彼女を送り届け、タクは真剣な眼差しとなって里を駆け出す。

やっぱり、納得できないのだ。

全てをなかった事にするのも……それで誰かが犠牲になるのも……タクは里の外に出ようとしたが、番をしていた白鬼に止められる。


「土鼠の件を知っているだろう!? 今晩は山脈に一切近づいてはならん!」


「神族を怒らせれば何が起こるか分からんのだぞ!」


「すみません! どうしても、どうしても行かなければならないんです! お願いします!!」


タクが必死になって頭を下げて頼み込む。

しかしながら、白鬼たちは拒んだ。


「これでお前が神族の逆鱗に触れるような事をすれば、通した我らにも責任が及ぶ! どんな事情であろうと通さん!!」


「そこを、そこをお願いします! 何かあっても僕の責任です!!」


「駄目に決まっているだろう!」


「何かなど……事を起こす気ではないか! やはり異邦人は……」


「違います! これは僕達、異邦人が背負う責任なんです! こんな形で解決するなんて、納得できないんです!! 僕が、僕達がやらなきゃいけないんだ……! だから……」


番をする白鬼たちは顔を見合わせて、頭を下げるタクに言う。


「お前がどう抵抗しようが……神々がそう決定されたのだ。我らにはどうする事も出来ぬのだ」


「ああ、お前の気持ちは十分理解できるが……」


「これを教訓にしていけば良い事だ。自身を責めるではない」


彼らは、タクが身勝手な異邦人とは違い、責任感があると思って同情の言葉を投げかけた。

タクがそんな同情を受けると、自然と頭を上げて「ごめんなさい……ありがとうございます」と言葉を漏らして、あっさり踵を返すのだった。

不思議な事に、タクは何故か「どうにかしないと」「何かしないと」「納得できない」という感情が消え去った。





神社で友達と合流し、少しの間は和気あいあいとしていた日美子だったが、モモたちの事が不安に思った。

白凪(タク)が餌を与えると言ったが、夜だけでなく朝も餌をやらなくてはならない。

それをタクに伝え忘れたのを日美子は思い出す。

モモたちは日美子が管理すると日和に言ったばかりなのに。


「日和お姉ちゃんに怒られちゃう……!」


日美子は神社から抜け出してしまった。

未だ、神社に入って来る子供たちに紛れて、見逃される形で大人の目をかいくぐってしまう。

『白鬼流』の基本動作で、瞬発的な柔軟性を生かし、跳ねるように駆けていく日美子。

明かりもない自宅の扉を開き、モモたちのいる部屋へ。


「モモ、ミケ、チャチャ。待ってて! 今、餌あげるね」


モモたちに餌をやる日美子に忍び寄る影があった。


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