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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その22


新たなモルモー……『モル助』を迎え入れて、しばらくした後の事。

タクがクエストを受けている最中、日美子が世話をしていたモモたちの様子を確認すると……

()()()()が判明し、日美子は姉・日和の助けを求めた。


「おねーちゃーん! お姉ちゃん、どうしよー! モモたちが~!!」


「もう! 大声を出さないの、日美子!! ご近所に迷惑でしょ!」


「早く来て~! モモたちが『()()()()』したって! 『にんしん』って赤ちゃんを産むんだよね!?」


「……ええ!?」


日和は別の意味で驚き、タクの家へ急行した。

改めて、確認すると……日美子が叫んだ通り、確かにモモは『妊娠』をしている。

しかも――ミケとチャチャまで!!

カゴの中にいる唯一の()であるモル助の存在に、日和は頭を抱えた。


「何をやっているのよ、白凪!」


こうならない為に、日和はこれまでモモと同じ()のモルモーだけをタクに渡していた。

だというのに。

例の被害を受けた、新たなモルモーを引き取る際。

タクは、()ではなく()のモルモーを引き取ってしまい、事あろうことか、()のカゴに入れてしまったのだ!

これでどうなるかは、考えるまでもない。

何より……


「モモが妊娠してしまうなんて……!」


「お、お姉ちゃん? なんで嬉しそうじゃないの? モモに赤ちゃんが生まれたら駄目なの?」


妹の日美子の存在で我に返った日和は、慌てて笑顔を取り繕う。


「ううん。いい事よ。モモたちが新しい命を運んでくれる。これほど素晴らしい事はないわ。日美子、手伝ってくれる? モモたちには新しいカゴを用意しないと。出産する為の、ね。出産が終わるまで、雄のモル助とは離れさせないといけないから」


「わかった! おばあちゃんの家に行って、新しいカゴ貰ってくるね!!」


日美子は何も知らず、元気に叔母の家へ駆けていく。

対して、日和は険しい表情を隠せないでいた。





「妊娠? モモたちがですか?!」


クエストに戻って来たタクに日和は事実をつたえる。

彼が嬉しそうなリアクションをしたのに、日和は顔をしかめた。


「もしかして、貴方は狙ってモル助をカゴに入れたの。雌のモルモーしかいないカゴに」


「え? えっと……」


「モモは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「え!? し、死ぬって、どういうことですかっ!」


「これはコッチの台詞よ!」


日和の怒声にタクは怯む。


「モモはようやく元気になったばかりなのよ! 体力なんて回復してない!! 男にはどれほど出産が大変なのか分からないのかしら!?」


そう、ようやく回復したばかりの、あるいは回復しつつあるモモが、出産という体力と気力が必要なものに耐えられる訳がない。

タクは、それを理解していた筈。

否、誰がどう考えても、普通にそのような考えに至る筈なのだ。

日和は――彼女でなくとも、タクの行動を理解できないだろう。


「どういう神経で雄のモル助を、雌のモルモーしかいないカゴに入れたの!?」


まさしく鬼の形相の日和相手に、タクは下に視線を逸らしながらもごもごと言うのだ。


「だって。まさか、こんな事になるなんて――」


信じられない言葉だった。日和の怒鳴る勢いを増す。


「モルモーの生態は散々学習したでしょ!? モルモーは本能的な生物よ! 雌と雄を同じカゴに入れればどうなるか。馬鹿でも分かるわ!」


黙りこくるタクに、息を吐いて冷静になった日和は告げる。


「白凪、これは()()()()()()()よ」


「ぼ、僕は、そんなつもりじゃ」


「どれだけ貴方が言い訳しようが、貴方の責任になるのよ。モモ、ミケ、チャチャ、モル助をテイムしているのは貴方。彼らに何かがあれば全て貴方の責任」


「……」


「今回、貴方の不手際でモモたちは望まれない妊娠をしたの。モモも、ミケもチャチャも、モル助でさえも望んでない」


「待って下さい! そんな言い方しないで下さい! 産まれて来る子供に罪なんて」


「謝りなさい」


「え……」


「モモに謝りなさい! モモだけではないわ!! ミケとチャチャ、モル助にも謝りなさい!! 貴方のせいで死ぬかもしれないモモに頭を下げなさい! さっきから、そんなつもりじゃ、こんな事になるなんてって……言い訳ばっかり! 何度だって言うわ! 貴方の責任よ! 貴方が悪いのよ!!」


事実を付きつけられ、反論のしようがなく、逃げ場もないタクは、えぐえぐと涙を溢れ出す。

日和の指摘通りだったのだ。

妊娠や交尾なんて、時間をかけてやるものだろうから、ちょっと入れるだけなら、大したことない。

妊娠して、出産しても死ぬことなんてないだろうから問題ないや……と。

でも、違った。


「ごめん……! ごめんよ……!! 僕、ぼぐっ……モモを、死なぜるづもりなんで無がっだんだ……! ごんなっ、ぞんなづもりっ……ながったんだ……! うううう、うううううう!! うっ!?」


パチン!

とタクは日和に叩かれる。

何故?みたいな顔をするタクに日和は怒声を浴びせた。


「だから! 言い訳をするなって、言ってるでしょう!? 謝罪をしなさい! ただ謝罪するのよ!! 自分の非を認めなさい!!!」


「っ……う……ごめん……僕が、ぼぐが……悪かった。僕が間違ったんだ……僕のせいで……ごめんよ……モモ……ミケ……チャチャ……モル助……」


彼がどう謝罪を続けたところで、現実は何も変わりはしない。

奇跡が起きない限り、モモは決死の出産を迎える運命から逃れられないのだから。

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― 新着の感想 ―
[一言] 女だって自分で経験しなきゃわからないよw 男の性衝動の強さも経験しないとわからないように
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