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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【ヴァルフェリアオンライン】寄付


「い、いいんですだ!? こんなに」


「ええ。その代わりのお願いがあるのですが……」


私は巫女さん達に確保していた薬草や、釣り上げた魚を『寄付』していた。

ゲーム内で、ましてやデータの存在であるNPCに同情しても、この界隈では鼻で笑われる。

だからこそ私は独善的かつ自身の欲望の為に、あえて寄付をしたのである。


とは言え。

折角、粘って釣り上げた『鬼鮭』を十匹も差し出すのはアレ過ぎた。ちょっと後悔気味。

これでもちゃっかり、一匹時空間に保存してあるけどね。


私は魔導書とペンを取り出して、巫女さんにお願いした。


「今、神社の境内に入れませんので、せめて境内にある石碑の文言とかを教えて下さい。あの、これに書いちゃっていいです」


「え、ええ? これ術書(オーガ内での魔導書の呼称)じゃないですだっ。悪いですだよ」


「すみません。他に紙は持っていないので……」


巫女さんが困惑していると、私を探していたのか稔さんが話しかけて来た。


「緑鬼のあんさん! 丁度よが! 知里ちゃん! このあんさん『御朱印』欲しいんだ。書いてくれねが?」


「えっ、あ、いや、いいですよ。御朱印は! 石碑の文言だけで良いので……」


知里と呼ばれた巫女さんは「ああ!」と納得した様子で答えてくれる。


「巡礼に来なすった方でしたが! 申す訳ねぇ!! 薬草も食材も貰ったんだ、石碑の奴と一緒に書いてあげますだ。お待ちになって下せぇ」


「あ、ああ……すみません。何かすみません」


双方に頭下げている私を、瑠璃さんは鳴き声一つ上げずに、呆れた様子で見つめているのだ。

拗ねちゃっている?

お魚あげちゃった事とか……

一応、瑠璃さんにも謝罪しておこ。


「瑠璃さん、すみません。お魚はまた取ってあげますので、安心して下さい」


「なおん」


ふんっ、的なリアクションをする瑠璃さん。

寄付より暗号優先な私に呆れているのだろう。

稔さんにも頭を下げてしまう。


「本当にすみません。余所者の私にできる事はこれくらいしかないです」


「いいんだ。それよか、折角来てくんだのに、オラん里の飯食わせてやれなぐて申し訳ねえですだ……」


「……貴方方は誰も悪くありませんよ。非常識な異邦人たちのせいです。彼らを恨んでいいんですよ」


「んな事しちゃいけねえですだ。オラたちの国はそんでずっど争ってだんずから、同じ事は繰り返さねえだ」


本当にNPCの方がまともだよ!

現実の人間共が総じて糞過ぎる!!

はぁ……何かペナルティみたいなのは、どうせ無いんだろうなぁ。


一昔前、キツいペナルティを導入したオープンワールド形式のVRMMOがあったけど、逆にそのせいで集金が急転直下して、サービス終了に至った経緯がある。

私も、そのVRMMOをやっていた身だけど、一気に人が減って、NPCだけの世界になっちゃってたなぁ。


勿論、平和なので安心してバイターの仕事に勤しんでたし、なるべく課金もしてたけれど。

そんな回想を脳裏で行っている私の元に、知里さんが戻って来てくれた。


「お待たせしますただ。御朱印と、あとこちらでよろしいですだか?」


仕切り直して、知里さんが持って来てくれた境内にある文言を確認すると


一に白米

二に鮎河(アユカワ)

三四にお味噌汁

五に漬物


………うん? え!? こんだけ!!? これ書いてあったのマジ!?

しかし、これだけではあまりにノーヒント過ぎるので、巫女の知里さんに質問をした。


「あの、すみません。他の神社ですと鬼神様の教訓のようなものがあったのですが、こちらの神社はこういう感じで……?」


「えっ!? あー……ここの神社にある石碑の内容は、鬼神様の朝食と聞いてますだ。オラたち巫女も毎朝この食事を取って一日を始めますだ」


「ええと……具体的に、そのどんな感じに? 『三四にお味噌汁』の部分とか、二杯分頂くのでしょうか? 漬物の種類とかは??」


「これは食べる順番ですだ。一口ずつ、順番通りに食べるだけですだ。漬物もお味噌汁も季節で具材を変えでええことになっでますだ」


「成程……ありがとうございます」


あ~……なんだろう?

どこかで手順通りに操作して、特殊アイテムを解放する的な感じかな。

いや、ううん。これだけでは分からん。

簡単に揃えられそうだし、実際作ってみるとか?


私は稔さんたちに別れを告げて、次の里へ目指す事にする。

彼女は里が落ち着いたら、また来て欲しいと言葉を残してくれたが……果たして平和は訪れるだろうか。

不謹慎ながらも、今度こそ『紫ノ鉱脈』へ向かう為、時空間通路へ向かった。


「すみません。こんな時に。『紫ノ鉱脈』に向かいたいのですが」


「も、もうちど待っでくんねが? 紫鬼共が向こうの出た先で『()()()()』始めちまっでよぉ」


なんでだよぉ……

しかしながら、現状宿に宿泊できる状況ではないし、長居もできないし、そろそろログアウトしたいし。

あとログアウトしたら、ただでさえ悪印象の異邦人だとバレるし……

頭を下げて何とか受付の黄鬼さんに通して貰う事に。


「不味くなっだらすぐ戻って来い?」


「すみません! ありがとうございます!」


そして、時空間を抜けた先は――


「おおおおおおおおおおおおああああああああああ!!! みみこりんが正義じゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


「ゆにちんが史上だろうがああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


「「「うおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああ!!!!」」」


なんか……オタクの大絶叫会場だった。

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