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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【ヴァルフェリアオンライン】襲撃


「す、すみませんだぁ……まさか、土鼠が襲ってぐんだなんで思わなぐで」


古い薄着の着物姿に茶髪のお団子ヘアという古風な恰好の黄鬼の女性。

青アイコンなのでNPCなのは分かるが、尚更、何故彼女が襲われたのかが理解できない。

ぶっちゃけ、プレイヤーよりNPCの方がこの世界を理解している方だからだ。

私は「怪我がなくて何よりです」と会話を始める。


「道中、何もなく突然襲われたのでしょうか?」


「はいぃ。普通にいづもの道、通っでだだけですだ。ちょど急いでだもんで、走っちゃいましだが……あぁ!? あ、あの、ここ『風の里』の方ですだ!? オラん里に行かねぇど!」


「いえ。ここは『蒼ノ都』方面ですね」


「なーお」


「へ? 『水の里』?? で、でも里に近ぇから、夜までに着ける筈!」


「そんなに急ぐ必要はないかと思いますが……」


「さ、里が異邦人に襲われだんだ! 兄弟達が無事が心配で……!!」


げええええええええええええ?!

まーたやってるよ、VRMMO定番の世界観壊し共がよぉ!


彼女は『紫ノ鉱脈』で作物を売りに出しに行っていたらしいが、情報通の紫鬼から彼女の里『黄金ノ村』で異邦人襲撃の知らせを聞き、急いで飛び出したのだという。

恐らく、平民の彼女は時空間通路を使えなかったから、ここで被害にあった訳で。


……うーむ。モルモーの件といい、不穏要素しかない。

もしかしなくても、プレイヤーたちがいないのも……いい人そうだったのに、そんな事するなんて。

本当に人間不信になるよ、この界隈。


「あの、私も同行してもよろしいでしょうか。『黄金ノ村』に用事があるので」


「なおーん」


「え、ええ? そうかぁ? ま、旅は道連れって言うもんなぁ」


こうして便乗気味に彼女と同行する事になった私と瑠璃さん。

VRMMO内で、NPCのプレイヤーに対する不信感が募ると一種の差別活動が活発化してしまう。

そうなる前に、やる事を済ませた方がいい。


「『土の里』に何用ですだ?」


「御朱印巡りをやっているんです」


「おー! 鬼神様の巡礼かぁ~、オラん里だと成人になっだら、それやんだぁ」


ほう。図書館にあった文献とは違って独自の情報か。

ちょっと念の為、彼女から情報を聞き出す。


「『黄金ノ村』の神社には、どのような教訓が示されているのでしょう。今の所、それぞれの神社には教訓が石碑になっていたんですが」


「へ~、んでもオラ。平民だがら文字読めんだ……巡礼すん時までに文字読めた方がいいんですだ?」


おうふ……


「是非そうした方が良いと思いますよ」


「そか~。あ! 母ちゃんから聞いだ事あっけ。なんが、鬼神様が大事にしとっだ食材の事、分かって」


「食材……成程。ありがとうございます」


「ははは、風鬼のあんだは興味ねえだすだか? オラん里は色々育てんが楽しみなんだかんなぁ」


「何を仰るんですか。私は食べるの大好きですよ。その為に、なるべく節約して沢山食べられるよう努力してます」


「お、おお。ならオラん里はええですだ! 沢山食いもんあんだ!! ……異邦人に荒らされてなきゃええが」


道中のモンスターを瑠璃さんと一緒に蹴散らしながら、何とか日が落ちる前に到着。

……だが、要所要所煙が立ち込めていて、被害の範囲が伺えた。

農作物とか無事では済まないだろう。これは。

同行してくれた黄鬼の女性も顔が真っ青だ。


入里手続きしてくれる場所さえも崩壊していて、NPCの黄鬼の男性が番を務めている。

黄鬼の男性は「おお!」と声を上げた。


「稔ちゃん! すまねぇ、稔ちゃんが出稼ぎしとる間に異邦人共が……」


「み、皆、無事なんか!?」


「オラはここから動けんから向こうの事は知らん……そこの風鬼は?」


「その……御朱印巡りで伺ったのですが、そんな場合ではないですよね」


「神社に怪我人を運んでっから、巫女も御朱印やっでくれっか分かん」


ですよねー。

一応、黄鬼の女性……稔さんのご家族の捜索を手伝う名目で、私は里に入る事に。


まあ……酷いものだ。

案の定、木製の平民の家はことごとく燃やされ、農作物も駄目になって、挙句の果てに貯蔵庫も荒らされているという。

当然ながら、NPCの死亡者も多い。

泣き崩れている黄鬼たちの姿がちらほら……火災は大方鎮火しているようだが……


「ああ……お、オラの家が……」


稔さんの家も破壊され尽くしている。

お、瑠璃さん。匂いを嗅いでいるようで、何か分かりますか!?


「なーお」


「瑠璃さんがご家族の匂いを嗅ぎ取ったようです。案内して貰いましょう」


「ほ、ほんとが!?」


犬の嗅覚には劣るが、猫も嗅覚は鋭いのだ。

瑠璃さんを追って私達がたどり着いたのは、緊急の配給が行われている場所。

大食いの彼らの為、他の場所から運ばれた食材を、今まさに調理し配っている最中だった。

私も頂きたいほどいい香りだが、流石に空気を読んで食べないぞ。


「あ! ねえちゃん!!」


瑠璃さんが稔さんのご家族の元に駆け付け、彼らも稔さんに気づいたようで彼女に駆け寄る。


「皆、無事だっだがぁ!?」


「オイラたち川で遊んどったんだい……」


「ねえちゃー……家が……」


「とにかく、皆無事で良かっだぁ……! 良かっだぁ!!」


彼らは無事感動の再会を果たした。

さて……私はどうしたものか。


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