【ヴァルフェリアオンライン】漆瑠璃
さてと、ちょっとした状況説明をする。
風ノ賭博 紫ノ鉱脈
蒼ノ都 紅ノ荒野
黄金ノ村 銀ノ峰
中央に山脈を挟んだ上での各里の配置はこのようになっている。
『風ノ賭博』……『蒼ノ都』と来て、無難に『黄金ノ村』を目指していく所だろう。
ステータス補正も上がったし、今から向かえば日が落ちる前に『黄金ノ村』へ到着はできる、が!
実は『蒼ノ都』から一瞬で他里に移動する術があるのだ!!
有料の時空間通路を使えばね!
国内で色々と交通整備はされつつあって、その一つが闇魔法による時空間通路。
通行料がハンパない為、平民のオーガには使えない。
平民の人達は、中央の山脈を通って他里へ向かうしかないのである。
『風ノ賭博』はかなり割高な通行料の為、活用するのは『蒼ノ都』以降と決めていたが……
地図にある時空間通路の箇所を確認する私。
唯一、『蒼ノ都』から『紅ノ荒野』にだけは渡れない。
対立する属性同士、険悪さの関係は太古より続いているようで、未だ時空間通路の整備計画の目途すら経っていないという……
ここは一旦、『紫ノ鉱脈』から移動しようかな。
里同士の因縁あいまって、料金が変動している場所があるので、それを考慮すると
蒼ノ都→紫ノ鉱脈→黄金ノ村→銀ノ峰→(歩き)→紅ノ荒野
というルートが良さそうだ。
『紫ノ鉱脈』の紫鬼たちは甘党で、その甘味となる砂糖の原料を作る『黄金ノ村』とはかなり友好料金となっているぞ。
それでは『紫ノ鉱脈』の時空間通路へ、いざ!
「待て! そこの緑鬼」
な、なんですか。何も悪い事してないっすよ。また計算勝負?
『紫ノ鉱脈』の時空間通路の入場口で足止めを食らった私。
係の青鬼が何やら、下の方へ視線を向けている。
「動物は別料金を支払って貰うぞ」
「え?」
振り向いたら――あの猫ちゃんがいるではないか!
いや、私テイムしてないんだけど!?
しっしっと追いやろうとしても「なーお」と頑なに動く気配がない。困ったなぁ。
一旦、入場口から離れて、私は猫ちゃんを説得(?)することに。
「どうしたの、また遊びたいの? 餌でも欲しいの? もー、何がしたいの~」
「なーお」
私が手に入れた宝珠で猫ちゃんと遊ぼうとするけど、不思議な事に猫ちゃんは遊んで来ない。
くっ、猫は気まぐれ。
今は遊ぶ気分ではないというのか。
ちょっと構ってくれたから、餌でも貰えるんじゃないかっていう野良根性で纏わりついて来てる?
話が通じるか怪しいが、駄目元で猫ちゃんに伝えた。
「悪いけど、私は他の里に行かないといけないから君は連れていけないんだよ~」
「………」
最終手段、民宿の女将さんのところで足止めして貰おうかな……
そう悩んでいると、私の前に突然ウインドウ画面が表示される。
[水猫が仲間にして欲しそうな様子です。テイムしますか?]
え!?
君マジで言ってるのかぁ!?
何となく、気分や雰囲気で一緒について来てた訳じゃなかったのね?
まぁ……この手のゲームやってると、あるのよ。変な期待し過ぎて、テイム関連とか、NPCとかの交流とかで好感持たれているかな?って勘違いしちゃうケース。
結構、自意識過剰だから「もしかして?」って突っ込んじゃうけど、実際は全然なんともなかったとか。
恥ずかしい想いもしてきたし、よっぽどの事がないと好感度ありきの交流なんてして来なかったんだよね……私。
「なーお!」
ぎゃああああああ! ひっかかれるぅ!!
すみません、猫ちゃん。いや、お猫様! 是非ともテイムさせて頂きます!
ありがとうございますぅ!
<称号:はじめての仲間>を獲得しました。
<称号:素敵な出会い>を獲得しました。
うむ、テイムに成功すると『飼育員の服』をゲットできる。
これも記念衣装の為、盗まれないし耐久もない。
そして『素敵な出会い』……これは好感度によるテイム成功の称号だ。
これまた特別な記念品『ペットボックス』をゲットできるぞ。
『ペットボックス』はテイムしている動物の体格に合わせたケージ、寝床を出現させる特殊アイテムだ。
よし……名前をつけよう!
やっぱり、ちゃんと名前をつけてあげないとね。
ううむ。水っぽい名前は安直過ぎるけど、だからといって無理に変わった名前をつける訳にもいかない。
あかん……いざって時に思いつかないもんだな。
宝珠で猫ちゃんのご機嫌を取りつつ、悩みに悩んで命名した結果。
「『漆瑠璃』にしましょう。色々ポイントがありまして。まず、漆と瑠璃でそれぞれ姓名っぽい感じになっています。それと『漆塗り』という語感に似せています。勿論、いい意味ですよ? 貴方の毛並みの質感。正しく漆塗りのように滑らかではありませんか! 瑠璃も青のイメージと雌の貴方っぽさを現した気品ある名前となっております」
どうや!?
「………」
反応薄!
「すみません。普通に瑠璃にしましょうか」
「なーお!」
「瑠璃も駄目ですか!?」
「なーお!!」
「ぎゃああああああ! 猫パンチやめてー!!」
★
その後、『蒼ノ都』にて少しだけ猫に尻をしかれている緑鬼の事が噂になったとか、ならなかったとか。




