【ヴァルフェリアオンライン】宝珠
ログイン二十三日目。
ついに『青鬼流』師範試験当日!
……ま、多分だけど、合格はしなくてもいいんだろうけどね。
重要なのは試験会場にある最後の数字。それが暗号を解き明かす最後の鍵であろう事は判明しているのだ。
「なーお」
何かを期待しているのか、あの猫ちゃんも私と共に試験会場へ。
で、今回ばかりは『青鬼流』のスキルを用意して、試験に挑むつもりだ。
『青鬼流』は所謂、電卓機能があるもの。
スキルレベルが上昇する事で、算出時間が短縮されるぞ。
私がこれを活用するのは師範試験を合格する為――ではなく、例の暗号解読の為、時間と場所を有効活用する魂胆なのだ。
パソコンで算出するのすら大変な『RSA暗号』を電卓なしで解読とか無理です!
某夏休み映画の主人公みたいな天才じゃないので! 凡人ですので、普通に頑張りま~す!!
……ちょっと、師範の試験も見ておこうか。
げ~~~~!? マジで言ってんのか、これ。
魔素の天体関連の距離を仮定した問題! 光の速度ならぬ魔素の速度を計算しろって奴!!
いやぁ、めんどい!
計算だけじゃなくて、ある程度の知識もないとむずい奴。
これと……あともう一問あるな。
『問2.煉獄山中腹から地上まで移動するのに必要となる魔力およびステータスを導き出せ。ただし、地上は「逢魔鴇国」周辺の平均海面0尺を基準とする』
え、えぐい……ガチで大学レベルの問題出すんじゃねーよ……
ちなみに、時折触れられている『煉獄山』とは、異世界内において最高峰にして、最下層にある山。
『煉獄山』は魔族の住む魔界にある。
そして、その魔界は我々のいる地上の遥か下、地球でいうマントルに相当する場所に実在しているのだ。
魔族が地上に侵攻すると異世界人らには恐れられているが、実際は、この問題にある通り、地上へ移動する為の膨大な魔力と、それをコントロールするINTが必須なのである。
とか考えている間に、終了の呼び鈴が。
私と共に試験を受けていた青鬼たちは各々深刻そうな表情をしていた。
私は、まだ暗号の計算が終わってないので、消化不良の表情を浮かべていた。
「なーお」
試験会場から出てきた私を出迎えた猫ちゃんが、猫パンチ!
ちょ、待って待って!
取り合えず、何か食べてからにしましょう! 君もお食事どうですかっ!!
「なーお!」
ぎゃああああああ! 連続猫パンチ!! ダメージはないけど、ちょ、勘弁して!
どうやら「先に暗号解いてからにしろや!」と猫ちゃんが叱咤(?)しているようなので、神社に向かいつつ、マーケットで販売されていたドーナツを頬張る私。
頭を使ったら、やっぱり甘い物だよ。
食べないのと食べたのとじゃ、大違い! ……ここバーチャルだけどね。
ゆっくり、暗号の最終確認を終える頃。
神社に到着した私(と猫ちゃん)。
猫ちゃんが再び鳴いて、私をある場所へ誘導してくる。
思いっきり、神社内に入っていき、内部に鎮座している青鬼の鬼神像……の台座の裏。
ん?
どこかな……おっと、ここかぁ!
台座の裏側に、見えない形で数字の入力盤があるのを、手探りで発見できた。
周囲に他プレイヤーがいないこと確認しつつ、慎重に入力すると……
「よし、開いた……?」
ガチャと音がたったのと同時に青鬼の鬼神像の前に光が灯る。
淡い水の色合いをした方陣が浮かんでおり、その中央に水の粒子が収束していく。
やがて一つの『珠』が完成したのだ。
これは――
「にゃあん♪」
私が余韻に浸る間も無く、猫ちゃんが『珠』に猫パンチ!
すると、『珠』から水の波動が粒子状に広がるエフェクトが広まった。
『珠』は意味ありげな動きで浮遊。猫ちゃんは夢中でそれを追いかけるという……
ああ、そういう……君、これで遊びたかっただけなのね?
「にゃーん!」
一応、称号と一緒にあの『珠』の詳細も確認しておこ。
『憂いありき探究者』
取得条件 『蒼ノ都』の境内にある暗号を解き明かす。
効果 『蒼ノ宝珠』獲得
『蒼ノ宝珠』
攻撃:100 耐久度:-
特殊効果:『青鬼流』の処理速度+100。
この武器に対する攻撃に対し、自動カウンター処理が行われる。
このアイテムは特別な記念品の為、盗まれる事や消耗する事はありません。
恐らく他NPCが暗号を解読して、猫ちゃんをこの宝珠で遊ばせていたのだろう。
しかし、ううむ。チート系とか。
ワールドアイテム的なもんかと思ってたけど、言うほど凄い武器じゃなかった。
肩透かし食らっちゃったよ。
文面的に強く見えるけど、武器に対する攻撃だから、それこそ猫ちゃんの猫パンチに対処する程度の範囲な訳で。
カウンターも、猫ちゃんの様子をみる限り、威力を期待できない。
こんなのだったら、自意識過剰に警戒しないで『風ノ賭博』の記念武器?回収しとけばよかったよ~とほほ。
まぁ、師範の試験受ける際に立ち寄る時にでも、って奴かな。




