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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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【ヴァルフェリアオンライン】無敵


あれは今から……って具体的な数字言ったら年齢分かっちゃう。

私が中学生の頃、修学旅行先で適当に購入した『馬刺し』。あれが初めて食った馬刺し。

そして、その馬刺しが滅茶苦茶美味くて、もっと買っておけば……! と後悔していた青春時代。


「はぁ~い。ご注文の『馬肉定食』でぇーす」


やる気ないトーンの女性店員が運んでくれた定食をじっくり頂く私!

うおおおお! この歯ごたえ!! たまらん!

ここまで忠実に再現してくれるなんて……やはり最新鋭のVRMMO! まさしく神ゲー!!

期限内にプレミアムパック購入します!!


私がいるのは競馬場、の中にある定食屋さん。

競馬で盛り上がれるように大人数収容できるような広々とした和風食堂。

他にも、色んな動物のお肉が食べられるようだけど、どれも賭け事関連の動物ばかり。


『処分』されたものが、こうして提供されているんだろうね。悲しいけど。

でも、美味いぞ! 美味い!!

やっぱり馬肉最高! 馬肉最高! お前も馬肉最高と言いなさい!!


「ねぇ~。あの人、また『おかわり』して来たんだけど~。どんだけ食べんのぉ?」


「馬肉以外にもあるのにねー」


…………食欲落ちたわ。

なんで店員の、しかもNPCがそんな事、言うんだよぉ!

オーガだから沢山食ってもいいでしょ! 他のオーガのおじさんだって食べてるじゃないか!!


「なぁ、ちょっといいか? お兄さん」


ごはぁっ!?


急に話しかけられたからむせた!


「お、おいおい、大丈夫かよ」


アンタが話かけたからじゃろがい!

嫌味は言わないで、息を整えてから私は緑オーガのおじさんに聞き返す。


「な……なんですか?」


「明日、でかいレースがあるんだよ! 一発、俺と勝負しねえか?」


やっぱり賭け事じゃねーか……ん? ()()??


「明日の何時頃でしょうか」


「明日の昼過ぎだ。『風雷カップ』って優秀な戦歴の競走馬が揃う夢のレースさ!」


ほー……現実でいうG1的なもんかな。

それ以上に、魅力的なのは『明日のレース』という点だった。

私は頷いた。


「いいですよ。勝負をしましょう」


「よし来た!」


恐らく相手の思惑は別にあるのだろうが、私の思惑はただ一つ。

()()()()の確保である。

どういう事かと言うと『風ノ賭博』内で行われる勝負の最中は、他の勝負と平行できないという裏技がある。

つまり、このNPCとの勝負中は、他の賭けに誘われても「あ。今別で勝負中なので」とお断りする事が可能な訳だ。


念の為に、勝負は『風雷カップ』の結果が確定するまで、と制約を設けると私が仕込んでおく。

私の賭けた馬に何かがあって、賭け終了で~すwwwみたいな戦法を取らせない為に。

NPCのおじさんは「だぁもうわーったよ」と呆れていた。

しつこく、言い過ぎたかもしれない。


私達は食堂から出て馬券購入所に足を運ぶ。

そこにはモニターが幾つも設置されて、現在行われているレース模様や、明日の出走情報が流れている。

結構、現実的なハイテクさだ。


「お、ちょうど映ってるな。これだよこのレース。勝負はわかりやすく単勝! 好きな馬に賭ければいい」


まぁ、私もそうしようかなと思ってたけどね。

ふむふむ……分からんな。

一応、馬の種類は知識に入っているが……おや? この馬って。


「『残桜』だ! 『残桜』が今、一番熱いぜ!!」


「馬場的にも『残桜』優位だからなぁ~……つまらん勝負だ、賭けにもならん」


「いや、今回は先行と差しが多い。『残桜』は馬群に飲まれちまうだろ」


……と、同じくモニターでレース情報を確認していたNPCたちが言い合う。

だが彼らの言う『残桜』と呼ばれる馬は、先程牧場で処分間近と宣告されていた奴だった。

もしかして、仕込み?

勝負を持ち込んで来たNPCのおじさんが唸ってから、選択する。


「俺は『風坊』に賭けるぜ。確かにここのところ『残桜』の調子はいい。だが『風坊』に勝って欲しいんだ。昔から応援したもんでな。俺が一発逆転できたのも『風坊』のお陰なんだよ」


「へえ。紫鬼の推し的なものですか」


「ちょ……あんな変なモンと一緒にすんじゃねえよ。とにかく、俺はコイツに賭ける」


「私は『残桜』にしますね」


「無難にってか? 安牌ってのもアリだな」


という訳で、賭博勝負特有のウインドウ画面が私達の前に表示される。

制約内容も私が念押しした内容。

賭け金はお互いに1万G。

てか、私が約1万Gしか持っていないので、これだけなのだ。

同意ボタンを押して、勝負中のアイコンが私とおじさんの頭上に浮かぶ。これで良し。


「すみません。私これからギルドマスター試験を受けるので」


「ん? ああ、ギルドマスターの……は? ギルドマスターの試験なんて受けてどうすんだよ」


「称号でステータスが上がるじゃないですか?」


「は? ……そうだっけか。なぁ、その後は」


「『緑鬼流』の試験ですね」


「へ? なんで」


「称号でステータスが上がるじゃないですか。ちなみに神社の御朱印を回収するので、暇ではありません。あと明日は私、この世界にはいません」


「は? え? はあああ??」


「私、異邦人でして。用事を済ませたら、向こうの世界に戻って家事とか食事とか取らないと駄目なんです。こっちで食事しても向こうの体は満腹になっていないので。忙しくてすみません。私が不在でも勝負の結果は出るので問題ありませんよね? それでは」


「ちょ……」


おじさんには申し訳ないけど、この無敵時間を使って、やる事を済ませないとね!





「なんだアイツ? 異邦人ってのは分かってたが、称号なんざ取ってどうするんだが」


「『緑鬼流』の試験とか意味ねえってのになぁ?」


「まぁいい。異邦人だからでかいレースと勘違いして『残桜』に賭けやがった。十分儲けだ」


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