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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その17


いつものようにキャラクリエイトをしたら、特定される。

あの時のプレイヤーだと、後ろ指さされ、罵倒され、暴力を振るわれ……

それだけの事したのだから当然だが、タクは体を震わした。

自分にはVRMMOしかない。

意を決して


「ら……ランダム作成でお願いします!」


とキャラクリエイト画面で叫んだ。

ぱあああっと、タクの体が光に包まれて無機質な女性アナウンスが聞こえる。


[ランダム作成完了。種族はオーガの『白鬼』。基本魔法は『光』です]

[個別スキルは表示されている内容の通りです]

[問題がなければ、最後にアバター名を設定し、完了を選択してください]


「わ……これが僕!? って、声も変わってる!」


映し出されている姿はタクがどう頭を捻っても作らないだろう、高身長、銀髪銀目の美男子。

大正時代の『書生服』を纏った白オーガ。

顔も声も幼い印象のタクだが、外見と合わせた大人びた声に変化した事で困惑する。


「別人みたい……っ……うう……」


独り言を喋ると何だか恥ずかしいタク。

最後のプレイヤーネームも、何にしようか考えて何も思いつかず。

最終的にAIに頼む事にした。


「『白凪(しろなぎ)』……こんな名前、僕っぽく……っ……うう……やっぱり、無理だよこれ……」


特定されると里香に注意を受けたが、やはり声色だけが、どうしても恥ずかしいタク。

せめて、せめて声だけでも。

タクが声だけ戻すと、少しだけ落ち着いた。


完了を押して、新たなオーガとして異世界の扉を開くと――

オーガ国内の里の隔たりとなっている山脈地帯にランダムスポーンされた。


「わぁ……雰囲気が違うなぁ……! うん? モンスターだ!」


早速、登場したモンスター相手に身構えるタク。戦闘に集中すると、途端に雰囲気が異なった。

実は彼は戦闘技術は高い。

伊達にVRMMOを没頭している訳ではないのだ。

実力だと琴葉たちを優に上回る程なのだが、彼は誰かの役に立ちたいとクラフト系に走ってしまう。


「よし! さっきから『パリィ』が決まりやすいし、白鬼は僕のスタイルに合っているかも!!」


荻野もやっていたように、光属性は打撃などのダメージをカウンターで返せる性質がある。

タクは『パリィ』という敵の攻撃を弾く戦術を好んでおり。

白鬼のスタイルと奇跡的に噛み合い、そこらの敵を余裕で倒す事ができた。

久々に戦闘を行い、タクは自然と気分が晴れた。


「ふぅ……ん? あれは街??」


タクが山脈を戦いで駆け回ったせいで、初期スポーンの位置から大分離れた方角にある里まで来ていた。

それは『風ノ賭博』。

賭博、なんて怪し気な場所に抵抗はあったが、街の一つではあるし探索しようと足を踏み入れる。


幸いにもタクはNPCに絡まれることは無かった。

それはタクが『白鬼』であったから。

緑鬼側からすると白鬼はノリの悪い無欲な奴、賭けを持ち掛けても意味ないと認識されているからだ。


しかし、タクの方はNPCについ絡んでしまう。

彼は競走馬生産の牧場に訪れ、1頭の馬と出会った。

『残桜』と呼ばれるその馬は成績不振で、次のレースで1位を取れなければ処分すると管理者たちが女性テイマーに宣告していた場面に出くわす。

タクはいてもたってもいられず「待って下さい!」と彼らに割り込む。


「僕がこの馬を必ず1位にさせて見せます!」


いつもの悪癖をかますタク。

管理者たちは鼻で笑っていたが、次に彼らが変なオーガ(荻野こと不知火)に絡まれて困惑するという光景が広がる。

そんなものを構わず、タクは女性テイマーにドヤ顔をかますが。

彼女は訳のわからない表情を浮かべていた。


「僕に任せてください。残桜をテイムして可能な限りの事をします。そして、僕がこの子を1位になるよう手綱を握ります。乗らせて下さい!」


そう自身満々に語って「お願いします」と頭を下げる光オーガ(タク)に女性テイマーは唖然とするばかり。

さっきから、何を言っているのだろうと。


「貴方、異邦人?」


女性テイマーが聞き返して、一瞬思考が巡ってから「はい!」と返事したタク。


「貴方の世界だと……何? 競馬はテイマーが馬に乗ってレースをするの??」


「へ? えっと、その、はい。そうですけど……?」


「ああ、そうなの。ここだと()()()()()()()()()()()()()()()()、馬だけで走らせるの」


「………へ?」


「あとテイムするって、どういう意味? この子はもう私がテイムしているのだけど」


「だから! レースの練習をするんです!! 残桜に特訓をさせて、どういう走り方がいいのかを」


「練習なんてしないわよ」


「な、何を言ってるんですか! だから残桜は勝てないんですよ!! 貴方が頑張らないから」


「あのね……他の馬も同じよ? 皆、練習なんてしない。ありのままの状態で、自由に走らせるだけだから。私達がするのは馬の健康状態のチェック。あとストレスをかけないようにするの」


「……え……え?」


現実の競馬とかけ離れたやり方に、ただただ困惑するタク。

女性テイマーは再度溜息を漏らす。


「強いて言うなら、この子は私が初めてテイムした子だから。処分されるのは少し寂しい……でも、ここだと()()()()()だから、受け止めないとね」


「待って下さい! いい訳ないじゃないですか!! ここで貴方が頑張らなかったら、残桜が死んでしまうんですよ!!」


タクが女性テイマーの肩を掴んで、自分と目を合わせる。


「僕が何とかしてみせます! 信じて下さい!!」


こうしてNPCやプレイヤーを説得してきたタク。

だが、女性テイマーは鼻先で笑い、タクの手を退けて言い放つ。


「なんか、貴方って見かけの割にお子ちゃまね。話してるだけで、こっちが恥ずかしくなるわ」


「―――」


子供っぽい、と言われてタクは激しく動揺してしまう。

女性テイマーは「早く出ていきなさい。残桜のストレスになるから」とタクに蹴り入れる始末。

愕然とした心情を隠しきれないタクは、ふらふらと牧場から出ていった。

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