【ヴァルフェリアオンライン】オーガ
オーガの国――『逢魔鴇』は少々特殊である。
まず、島国であること。
私のいたノーブルの国『ジェルヴェーズ王国』は人間などの他種族の国と陸続きに繋がっているが。
『逢魔鴇』と獣人の国『汝ノ国』だけは島国。
次に国と言っても大きな山脈を隔て、六つの里に分かれている。
まぁ、ぶっちゃけると魔法属性ごとにエリアが分かれてて、里ごとに特色というか文化がある。
以前にも、この辺はちょっと触れてたっけ?
で。
私が選択した『緑鬼』が住む『風ノ賭博』では……もう名称で分かると思うけど、賭け事が盛んだ。
喧嘩早いオーガたちは、血を流さぬ為、各々の里に準ずるもので勝敗を決める事とした。
『赤鬼』は激辛。どちらがより辛さを耐えられるか。
『青鬼』は知恵比べ。どちらがより賢く聡いものであるか。
『黄鬼』は大食い。どちらがより沢山食べられるか。
『緑鬼』は賭博。どちらがより豪運であるか。
『白鬼』は料理。どちらがより良い料理を生み出すか。
『紫鬼』は推し合い。どちらがより推しを引き立てるか。
この喧嘩が、とにかく面倒だとプレイヤーの間で話題になっていた。
NPCに事あるごとに喧嘩を吹っ掛けられては、勝負を挑まれて、一々やっていたらキリない。
ただ、あくまで該当の里にいなければ喧嘩が発生することは無いので、プレイヤーたちは山脈で戦闘と疑似的な生活を送っているらしい。
かくゆう私もランダムスポーンをして、山脈地帯のどこかで飛ばされたかと思えば、周囲に集団のオーガプレイヤーとエンカウントしてしまったくらいには、プレイヤーで溢れているようだ。
「あれ? 新規の人?」
「いえ。オーガで別アカ作ってみた所です」
「じゃあ里には行かない? それとも闇オーガの里に行く? 闇オーガの里はあっちだよ」
てな感じで結構フレンドリー!
オラオラ系でPKしてくるタイプの人達じゃなくて良かった。
ただ、私は里に行かねばならぬのだ。
「多分、緑オーガの里が近くにあると思うんですが……向こう側でしょうか? 称号目当てで立ち寄りたくて」
木々が生い茂っているせいで、見えないんだけど、頭に入っている地図的には、恐らくこちらの筈。
親切なプレイヤーさん達が不安そうかつ、何とも言えない感じで「ああ」と言う。
「確かに、あっち行けば風オーガの里だけど……まあ、頑張れ?」
「称号は取られないんだっけ?」
「うん。称号はセーフだった筈」
プレイヤーさん達が話し合うように、『緑鬼』の賭け勝負では色んなものを賭けられるのだが、称号だけは賭けの対象に出来ない仕様となっているのだ。
私は「ありがとうございます」とお礼を伝えて、移動していくと、雑魚モンスが登場!
「ふん!」
お、おお!? 凄い、凄いぞ!
妖怪チックなモンスターたちを拳で蹴散らして倒せる! 爽快感ある!!
やっぱり戦闘特化の種族なだけはあるなぁ!
どんどんレベルも上がる。
拳で倒せば『武器:拳』のスキルレベル、蹴りを駆使したり、回避に成功すると『体術』のスキルレベルが上昇していく。
時折、風魔法を駆使して、敵を一掃するなど、いい具合に経験値稼ぎをしていく。
だが……
ぐぅと腹が鳴る。
いつの間にか疲労感が半端ない。
やはりスタミナ切れか……マーケットで軽食を購入しつつ、モンスターのドロップアイテムを出品。
派手に動くと、すぐにスタミナ消耗してしまう。
つまり、無駄な動きが多いって事かな?
動きを節約してスタミナを最小限に抑える感覚を掴まなくては。
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ふぅ。本に目を通しておいて正解だったが、動きはまだ洗練されていない。
練習が必要だぞ。
『緑鬼流見習い』は風の流れるままに体を委ねる流派。
風、とはいうが雷の属性も含まれており、風の魔素に含まれる……現実で例えるとプラス粒子とマイナス粒子をコントロールすれば、電気や電磁力を起こせる。
で、自分の体の電磁力で動かして威力を上昇。
そんでもって、スタミナを消耗しない最小限の動きで戦う事ができるようになる。
理屈はわかるが、感覚を掴むのは大変。そんな感じである。
うおっ。見えて来たぞ……
派手なカジノのライトアップが! 和風国家のど真ん中でラスベガスがある!!(ラスベガスそのものではないけど)
あれが『風ノ賭博』にある上級階級が利用するカジノ。
手前にいくほど下級層となり、入出国辺りは貧民街の負債者のエリアという。
「くく……ようこそ『風ノ賭博』……希望と絶望犇めく混沌へ……!」
……とNPCが出迎えてくれた。
なにこの、賭け系特有の言い回しは。
何度も言うけど、私は賭け事をしに来た訳ではなくて、称号目当てで来たのだよ。
入国手続きならぬ、入里手続きだけ済ませて、今日はログアウトしておく。
だって、もう夜遅い時間(ゲーム内)だったもの。
仕事は『まほ★まほ』で済ませて、今日もFEOのイベント周回じゃ。




