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VRバイターが往く!~近未来の生存戦略~  作者: ヨロヌ


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タクの日常 その14


「わぁ! 凄い!! これが博覧会かぁ……!!」


博覧会当日。

早速、タクはログインするとモルモーを抱きかかえて博覧会のイベント空間に転移していた。

全ての種族が、様々な品物を展示、出品。販売も行っている。

サービス開始して間もないせいか、出展者のほとんどがNPCばかり。

僅かにプレイヤーの出展者がいるものの、出展が容易なクリエイター作品だけだった。


こういう場で、タクがひと暴れしそうな気配はありそうだが。

そんな事はならなかった。

公共のイベントのような人目が多い場所だと、彼は子供のようにはしゃいで、色んなものをキラキラした純粋な瞳で眺める。


一方で、実際に食事をしたり、商品を購入したりはしない。

タクは周りの子供のように欲しいものがあったら、親に強請って困らせたら良くないと、何故か変に戒めており。

見るだけ見て、何かが欲しいと親に強請った事は人生で一度たりともない。

結果、悪い意味で個性のない人間へ成長してしまった訳である。


「えっ? 漫画だ! うわぁ……凄いな」


タクは色々見て回って、遂にオギノの作品も出展されているクリエイター展示スペースにたどり着く。

展示されている作品を目を輝かせて観察しているタク。

そこへ……


「そこの方!!」


巡回していたイベントスタッフのNPCがタクに注意を呼び掛けた。


「会場内にテイム対象の持ち込みは禁止されています。今すぐお戻りになり、テイム対象をご自宅などに置いてから再入場して下さい」


「え、でも普通に入れて……」


「イベント会場にペットの持ち込みは非常識ですから、わざわざお伝えしないのです。もう一度警告します。テイム対象を――」


「待って下さい! モルは大丈夫です!! ちゃんと『テイム』で躾けています! 大声で鳴き喚いたり、トイレを我慢できなかったり、そんな事は起きません! お願いします!! モルを置いていったら寂しがるし……僕だってイベントに参加できないじゃないですか……!」


何事かと周囲のプレイヤーやNPCが注目する中。

突如、タクの中から淡い光が放たれる。

モルモーだ。モルモーが光に包まれ、タクの体を弾いて、周囲のスタッフすらも弾く。


「も……モル!?」


「きゅ……きゅ……きゅ……」


「これは一体!?」


「おい、何が起きてやがる!」


「あんなモルモー初めて見るわ! なにかしら!?」


「何故、害獣のモルモーを連れているのだ。あの人間は!」


NPCたちが各々語り合う中。

タクは「もしかして」とある事を叫んだ。


「きゅ……きゅ……きゅ……」


「モル……! 遂に『進化』をするんだね!!」


『進化』。

他のVRMMOではテイムしたモンスターが経験値などを得て、体が進化していく。

プレイヤーたちはタクが出まかせに言った内容を真に受けてしまう。


「きゅ……きゅ……きゅ……」


「うおおおおおおおお!? ペットの『進化』要素あったのか、このゲーム!」


「あのモルモット『進化』するって!」


「ちょ、早く録画!」


「おい邪魔だどけ!!」


「俺にも見せろ!」


野次馬たちが騒ぎ立てるのを裂く勢いで、モルモーは大絶叫をした。


「きゅいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!」


ぱあああああああああっ!

と、淡い光が何十重も破壊されていく演出と共に、現れたのは……


ただのモルモー。

淡い光を薄く纏って、宙を浮いているだけのモルモー。

何の変化もない。

肩透かしを食らって困惑する一同。すると、


「ぷ……ぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷいぷい」


絶え間なく鳴き出すモルモー。

そして、モルモーの体から大量のキラキラ光るアイテムエフェクトが溢れ出るのだった。

アイテムエフェクトを拾ったプレイヤーが、声を上げた。


「うっわ! う○こだ! これ全部う○こだぞ!!」


「えっ!!?」


「きゃああああああああああ!!!」


「ふざけんな! ただのう○こしただけじゃねえか、コイツ!!」


タクは必死に『テイム』を発動するが、鳴き止む事も、糞を止める事もできなかった。

これこそ『テイム』のデメリット、友好度が最低値に到達した際の強制解除。

自由に解放されたモルモーはぷいぷい鳴きながら、糞というアイテムエフェクトを流し続けている。

その先には展示中の漫画が……


「うわ……あの作品の人、可哀想」


「モルモットの糞まみれじゃん……」


ある意味、糞塗れになってしまった哀れな作品こそ、()()()()()()なのだった。

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