【ヴァルフェリアオンライン】結果
私が選んだ盾は結構大振りな凧型盾だ。
STRだけはスキル補正でバリバリついているので余裕で振り回せる。
対して、エリザベートさんは細腕に似合わない大剣だ。
確か光の『アイボリードラゴン』からドロップする武器だったか?
てか、エリザベートさんは銀髪だから光属性だし、そういう選出だよね~
合図と共に[制限時間まで武器を破壊されないように!]とクリア条件が表示された。
細腕のエリザベートさんが『アイボリードラゴン』の大剣を振るうと、ゴムのように伸縮自在な軌道を発揮。
で、私はどうするかっていうと。
盾を背負って、クソダサ前転で攻撃を回避したり、攻撃を受け流したり、攻撃を受け止めたりするだけだ。
我ながら運動神経が底辺なんで、プロプレイヤーから見れば世界一しょうもない動き方だと思う。
VRMMOでのタンク役には色々歴史はある。
私がやっている戦術はソロ向けの、古戦法の一つ。回避盾と通常タンクの組み合わせ。
馬鹿でかい盾を真正面から仁王立ちして構えたりすれば、盾は消耗するし、自分は棒立ち。
そうじゃなくて、こうして可能な限り回避する回避盾のように動き、回避の勢いで防御と受け流しによる勢い殺し。
攻撃の受け止めによる衝撃を利用して、回転をつけて、相手から距離を離すという。
地味だけど、時間稼ぎするというコテコテな動きだ。
今は魔法を封じられている状況なので、動きは限られているけど、他にもWFOで出来そうな戦法はいくつもあるぞ。
カスみたいな消耗戦が終わり、試験は終了する。
実のところ、全ての項目をクリアしたら合格!という訳ではない。
全ての項目が規定ラインをクリアしなくとも、ギルドマスターの称号は得られるというガバガバ具合。
まぁ、ここはプレイヤーが自由にギルド立てられるように、ガバにしたんだろうね。
ギルドマスターには階級がある。
これは先程の項目の規定ラインをクリアするごとに1つランクを得られる。
私の場合は
「……オギーノ。貴様はギルドマスター2級だ」
えー。2級ってことは、1つだけ規定ラインを到達しなかったのだ。
「何が不合格だったんでしょうか」
どうせ戦闘だろうけど。
「調合だ」
はぁ!? 納得いかないんだけど!!?
「あれほど手際よくエリクサーを生成した癖に、何故ポーションとエーテルを下手に作るんだ。意味が分からん」
「いや……あれ、味を」
「味などどうでもいい!」
ええ……?
本には、冒険者の為に色々ポーションを加工するって、ギルドマスターの教本にあったんだけど!
ノーブル限定の嫌味仕様じゃんこれ!!
……はぁ。
しゃーない。2級で妥協しよう。
ギルドマスター試験は、一つの項目だけ受けられる仕様じゃない。
また全部受けなきゃ階級更新できんのだ。面倒くさい。
『ジェルヴェーズ王国ギルドマスター2級』
取得条件 ジェルヴェーズ王国の冒険者ギルドの試験で、規定ラインを4つクリア
効果 全てのステータスに+40の補正値。
結構でかい称号の補正値だ。
名称で分かる通り、これが他種族国家分ある。かなりのステータス補正を得られる訳だ。
まさにエンドコンテンツの強化である。
試験を終えた頃、いい具合の時刻になっていて、更に雨が上がっているようだ。
私はヴェストゥームさんの食堂に寄ってから、ホーエンハイムさんに依頼をするべく人気ない場所で彼の名前を呼ぶ。
相変わらず、ホラーチックに地面から登場するから怖い。
しかも夜限定にしか現れないから、更にホラー。
「おや、若いの。今度は何を聞きたいのかね」
「ええと、タク……ではなくタクヤさんと、彼の周りにいた女性たちの動向を知りたいですが」
「ふむ。また変な事を聞くね。タクヤといったアレは、モルモーの躾けを頑張っているようだよ」
……は? マジで??
意味がないと思った事を、マジでやる。それがタクという人間だと私は思い知らされた。
てか……ホーエンハイムさんの内容を聞く限り。
ぶっちゃけ、虐待じゃね? と思ってしまうものだった。
それを必死にやった原因は、ハーレム女子たちの不満を解消する為という。
モルモーは糞をそこら辺でするし、鳴き声は止まないし、言う事を聞かない。
でも……悪いのはモルモーではなく、タク本人だ。
動物に罪はないだろう。
まぁ、VRゲームの動物だけど……
モルモーが助かる手段は二つある。
一つは、テイマー2級以上の資格を保持する者にテイムを解除して貰う事。
テイマー2級以上の資格保持者は、ある特定の条件下であれば、相手のテイムを強制解除できるのだ。
その条件は、テイム対象との友好度が一定のマイナス数値以下である事。
もう一つは『テイム』のデメリット効果。
友好度のマイナス数値が、最低値に到達した場合、強制的にテイムは解除され。
二度と、対象を『テイム』する事が出来なくなるというもの。
これが発動したら、タクは二度とあのモルモーを『テイム』出来なくなるのだ。
恐らく、後者のデメリット効果が発動して『テイム』は解除されるだろう。
ただ、タクは即座に新規の別アカウントを作成してしまったら……無限ループになってしまうが。
でも私には、助ける義理もないというか。
所詮はゲームだからね。
そんな風に、ある意味モルモーを見捨てる選択をしたせいか、この後、私はとんでもない罰(?)を受ける羽目になるのだった。
主人公にも、ざまぁはあります




