【ヴァルフェリアオンライン】暴風雨
ログイン十八日目。
さて『WFO』のログイン時にやるルーティーンでも……
ザアアアアアアアアアアアアアアアアア
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ
ぎゃああああああああ! 大雨! 強風!! なんだこの大荒れな天気は!
良かった、小屋の中で睡眠ログアウトしていて!
本格的なオープンワールドのVRMMOでは珍しくもない。
この異世界にも天候が存在する。原理は現実の天候現象と似通っているが、一部魔法的な天候もある。
今回は、寒暖差ある空気が衝突し発生した暴風雨だろう。
畑の方はエレメントチェリーによる防衛システムが機能を果たしていて安心。
しかし……雨かぁ。
実は特定の天候下でしか出現しないモンスターや動物などがいる。
一方で、雨に加え暴風雨という天候下では、筆のインクが乱れ、魔力も乱れる。
戦闘も探索も難しい状況なのだ。
今日は雨という事もあり食事は控えめ。
コーンスープとクロワッサンにサラダ(ドレッシングは私自身が作ったオリジナルだ)と、エレメントチェリーを添えて頂く。
それから、翻訳の仕事に専念し。
一段落ついたらカラーの練習を行うのだ。
………………………………………………………………………………
………………………………こんな感じかな。
でも違和感っていうか、ごめんやっぱり微妙! やり直し!!
あ、そうそう。博覧会なのだけど、展示スペースが確定した。
それにより、展示スペースを自分好みにリメイクする事が可能らしい!
場所は……他作品の間、って感じの所だ。
クリエイター作品の展示エリアは、あまり広くない。
スペースも限られてて、言うほどリメイクできる場所もないっていう。
他の人はどうするんだろうか……漫画グッズの販売とかするのかな?
私は淡々と練習あるのみ。
これが上手くならなかったら、イラストではなく番外編を限定販売する方向に切り替えるつもりだ。
休憩するついでに、タクの動向を確認する。
……うん? なんだろう。
奴のステータスを確認したら個別スキルが『テイム』一つだけになっている。
その『テイム』のスキルレベルが極端に高い。
モルモーのテイムの為に、スキルレベルを上げた……?
え? よく分からん。
ぶっちゃけ、モルモーなんて躾けできない動物なのに。
大した事もできないんだから、こんなスキルレベル上げる必要はないんだけどなぁ??
一つ分かったのは、ここ最近タクはWFOのログインばかりをしており、『まほ★まほ』と『FEO』のログインは完全に途絶えている。
そんでもって、冒険者ギルドで何度もクエストを受けて、自分のギルドに戻ってを繰り返していた。
驚く程、畑に寄らなくなったのである。
嬉しく受け止めていいのだろうか?
『FEO』で彼の不在を知った他プレイヤー達は悠々と仲良く周回中だ。
私もハデスさん達と、難易度ルナティックのレイドボス討伐周回を深夜中やった程、何とも無い。
至って、平和!
『まほ★まほ』も奴がいなければ、カーバンクルと仲良くしてただろうに……はぁ。
不安だから、動向を探っておきたいけど……こんな天気じゃ、ホーエンハイムさんに会ってもな。
わたしゃ、暇じゃないから、ゲーム内時間1日過ぎたらログアウトよ。
明日晴れてたら、ホーエンハイムさんに依頼をしてみようっと。
★
「モル! 待て!!」
タクがスキルを行使しながらモルモーに命じた。
無言で歩んでいたモルモーは、ピタッと動きを止めて、タクが餌の牧草をモルモーの前に置いて、しばらくした後「いいよ、モル!」と再び命令。
だが、モルモーは餌をスルーして歩み始める。
苦笑いを溢し、タクが優しくモルモーに牧草を差し出す。
「あはは……ほら! モル。食べていいんだよ」
良かった……タクは安堵する。
あれから必死に『テイム』のスキルレベルを上げたタク。
それでも、モルモーは中々いう事を聞かなかったが、途中から突然、モルモーがタクの命令通りに動くようになったのである。
ぷいぷいとも、きゅいきゅいとも鳴き喚く事がなくなった。
トイレの場所を覚えた。
待ても出来るようになった。
「これなら、琴葉たちと一緒に過ごせる。モルも嫌われる事はないんだ。よく頑張ったね! モル!!」
優しくモルモーを撫でていたタクは、モルモーの異変に気づかない。
ガタガタ!と小刻みに体を震わせたモルモーは、澄ました顔ながら「きゅ……きゅ……」と小さく声を漏らす。
それを他所に、タクはメニュー画面を開いて、イベント項目が点滅している事に気づいた。
「なんだろう? ……博覧会の開催!? へえ! クラフト系のイベントだ!! 行ってみたいなぁ……! あっ。開催日は明日なんだ!!」
タクが興味津々でイベント概要を把握している最中に、モルモーはタクの膝元から離れ。
ある場所へ向かおうと、ぎこちない足取りをする。
モルモーが目指しているのは――トイレ。
正確には、タクがここにトイレをするようにと命じた場所。
モルモーは本能的に排便を行う。理性でコントロールはしていない。
だが、排便を本能で求めている為、モルモーは幾度も幾度もトイレを目指して進んでいるのだ。
そんなあともう少し、寸前のところで
「モル? あ、いつの間に――『テイム』!」
「きゅ……!」
タクがモルモーを『テイム』で引き寄せてしまうのだ。
モルモーの気など知らず、タクは嬉しそうにモルモーを撫でる。
「明日のイベント、一緒に行こうね! モル!!」




