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第七話

 クーちゃんは、四尾のあとを付いて行く。すると突然四尾は立ち止まる。

「まずは、何処に行きますか?」

 クーちゃんは、黙ったままの四尾に話しかけた。

「ちょっと黙っててくれ」

 そう言うと、四尾の体が直立不動の姿のまま光り輝く。

「喫茶店南風に、町長はいるようだ」

 四尾は、淡々と言うと、再び歩き出す。

「え。どうして分かるんですか?」

 クーちゃんは、四尾をあとを追いながら聞いた。

「魔法に決っているだろう」

「それじゃあ、もう、見つかったも同然ですね」

「そう上手く行けば良いけどな」

「見つからない場合もあるんですか?」

 四尾は溜息を吐く。

「相手は町長だ。移動する可能性もある。動かないモノを探すのとは違う」


 クーちゃんと四尾は、喫茶店南風への近道の細道を通ると、四尾とは色違いの水色の可愛いキツネのヌイグルミ三人と、テディベア三人が睨み合っていて、通行を妨げていた。

「邪魔だ。どけ」

 四尾が言った。

「四尾さん。そんなケンカ腰に言わなくても」

 クーちゃんは慌てて言う。

「お前も、こいつらの仲間か!」

 三人組のテディベアの一人が言った。

「僕たちは町長を探しているところで、このヌイグルミたちとは関係ないよ」

 クーちゃんが言った。

「こんな狭い道でケンカなんかするな。邪魔だ。ケンカするなら他でやれ」

 四尾は、容赦ない。

「生意気だぞ」

 一斉に三人のテディベアは四尾を襲ったが、一人は壁に叩きつけられ、一人は殴り飛ばされ、一人は地面に叩きつけられ失神した。

「す、すごい」

 ここでクーちゃんはこの前の、ドクロマークが付いたドンキーの事を思い出す。

「あ、あの。これって管理局に怒られませんか?」

「怒られるわけないだろ。戦闘モードで殴たら怒られるけど、通常モードでいなしただけだからな」

 三人組のキツネのヌイグルミが四尾の元へ集まる。

「ありがとうございます」

 三人組のキツネのヌイグルミが四尾に礼を言った。

「別にお前たちを助けたわけじゃない」

 そう言うと、四尾は歩き出す。クーちゃんは、その後を付いて行く。


「四尾さんって強いんですね」

 クーちゃんは黙々と歩く四尾に話しかけた。

「俺は四レベル。レベルの低いヌイグルミよりは強いな」

 四尾は、面白くもなさそうに答えた。

「なるほど。さっきのテディベアはレベルが低かったから弱かったんだ」

「さっきのテディベアたちは、二レベルだ。お前よりレベル高いぞ」

 クーちゃんは驚く。

「どうして、二レベルって分かるんですか?」


 それに俺よりレベルが高いって……、俺が新人だから一レベルって分かったのかな?


「分析の魔法をさっきから使い続けているからな。アイツらのレベルもたまたま見えただけだ」

「はぁ。なるほど。でもなんで分析の魔法を使い続けているんですか?」


 魔力とか消費しないのかな。


「町長を見つけたらすぐに分かるようにだ。そもそも、この世界の住人はすべて、日本でのヌイグルミや人形の姿をしている。例えば、俺は、ヘブンズホストーイ社製のピンクファンシーフォックスと言う商品だ。当然量産品だから、俺そっくりなヌイグルミはこの世界に大勢いる。それで、俺と同型のヌイグルミと並んでいたら、どうやって区別するんだ」


 そんな事知るわけない。


「どうやってやるんでしょう」

「だから魔法を使って判断するの。町長はGIジョー人形だが、量産品で同型の人形と区別がつかないからな」

「なるほど。それで、四尾さんは魔法を使えるから区別できますけど、俺はどうやって区別をつけたら良いんですか?」

 四尾は黙り込む。

「知るか」


 クーちゃんと四尾は喫茶店南風の前に到着した。

「やっと到着しましたね。中に入りましょう」

 クーちゃんは中に入ろうとするが、四尾は立ち止まっている。

「まて、ここでもう一度探知の魔法を使う」

 四尾の体が直立不動の姿のまま光り輝く。

「もう、ここにはいない。だが、近くにいる。走るぞ」

 四尾は、突然走り出す。


 は、速い!


 クーちゃんも慌てて走り出すが、四尾はあっという間に十字路を左に曲がって行く。

「速過ぎる」

 クーちゃんは、四尾が曲がった角を曲がると、GIジョー人形が四尾に袖を噛まれて動きを止められていた。

「どうしたんだよ。君は一体何者だ。君に何かしたっけ?」

 GIジョー人形は、慌てる。

「町長の癖に惚けるな」

 四尾は強引に袖を揺さぶるので、GIジョー人形は転ぶ。

「ミーは、町長なんかじゃないよ。人違いならぬ、人形違いさ~。WAHAHAHA」

 GIジョー人形は、惚ける。

「分析の魔法を使っている。騙されないぞ」

 四尾が言うと、町長は観念する。

「わかった。悪かったよ。だから袖を放してくれ」

「どうしてミーティングすっぽかしたんだよ。お前が呼び出したんだろ」

 町長は固まる。

「すまん。すまん。マジで忘れていた」

 四尾は更に激怒する。

「あと、コイツは転居届を渡したいそうだ」

 四尾は、クーちゃんを町長に引き合わせる。

「おお。ミーを見つける為に四尾を利用するとはなかなか賢いね。君。やるなー」

 町長は、とにかく陽気だ。

「利用するなんて、違いますよ。ザンさんが、一緒に探しに行くように、取りなしてくれたんですよ」

 クーちゃんは言った。

 四尾は首根っこを咥えると町長を引き摺りながら歩き始める。

「町役場へ行くぞ」


 良いのかな。町長を引き摺ったままで……



 町役場に到着すると、町長は町役場の職員たちに取り囲まれる。クーちゃんと四尾の元にはザンがやってきた。

「ちょっとまで、お客さんの対応が先だよ」

 そう言うと、町長は、クーちゃんの前に立つ。クーちゃんは、転居届を渡す。町長が転居届を受け取り、手を翳すとピッと音がした。

「千ドールは?」

 クーちゃんはキョトンとする。

「所持金は、所持金オープンと言うと見れますよ。この世界では、支払おうと思うだけで、お金を払えます」

 ザンが説明した。

 クーちゃんが、所持金オープンと言うと、空中にウィンドウが現れ、所持金が千ドールと表示された。

「俺、今まで一文無しだったんだ」

「ヌイグルミである我々は金が無くても生きていける。困ったら、日本に戻って一時間ぐらい休憩を取れば、たいていの事はなんとかなる」

 四尾が言った。

「珍しく親切じゃないですか。新人には優しいですね」

 ザンがからかう様に言った。

「違うよ。お前に俺の存在を思い出してもらおうと思って言っただけだ」

「分かっていますよ。報酬ですね」

 ザンは水色の石と赤い石三つ、四尾に渡す。

 四尾が水色の石に触ると消滅する。四尾の経験値が増えた。そして三つの赤石を受け取ると、四尾のアイテムボックスへ転送された。

「石全部消えたように見えたんだけど」

 クーちゃんが驚く。

「青い石は使うと消滅する。使ったから本当に消滅した。他は転送したから消えたように見えただけ」

 四尾が言った。

「四尾。ミーティングを始めよう」

 町長が言うと、「それじゃあな」と言って、四尾は町長と一緒に町役場の奥へ行ってしまう。


 俺もそろそろ帰るか。

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