第十一話
クーちゃんは、ボスを倒した後の広間をいろいろ調べていたが、結局、特にお宝の類はなかった。
五尾は、一人壁をいろいろ調べている。
「どうして、その壁ばかり調べているんですか?」
「この壁に隠し扉があるのは分かっているんだが、開かないんだ。開けば、最終ボスまで中ボスをあと一体だけで済むんだけどな」
「え。そうなんですか!」
クーちゃんも壁を触ったり、叩いたりしたが、結局どうすることも出来なかった。
一つ目の中ボスの広間を後にすると、再びメカメタルクマが現れるようになる。五尾はそれを丁寧に退治して行く。
「丁寧に雑魚モンスターを退治して行くんですね」
「ああ。一応、五レベル相当だからな。雑魚でも数倒せば、それなりに経験値になる」
「経験値の為に雑魚を掃討していたんですか?」
「理由はいろいろある」
そう言うと、五尾は再び雑魚退治に勤しむ。
雑魚を掃討しながらの割には、さほど時間も掛らず、二つ目の中ボスの広間の前に到着した。
「また、巨大な木彫りのクマ人形が出てきますかね?」
「それは、出てこないと分からないな」
二人が広間へ入って行く。
すると、頭がクマ、胴体が筋肉質の人間であり、両手は胴体や腕の大きさに対してバランスが悪い程大きい手をしていて、鉤爪までついていた。頭と、両手、腰、足先のみに毛が生えている。つまり、四つ目のエリアにいる雑魚モンスターと同じ姿、クマ頭人形が現れた。ただし、かなり巨大な姿の。
「げ! あんなのありかよ」
クーちゃんが驚いている間に五尾は、速攻で巨大なクマ頭人形に接敵している。五尾は、巨大なクマ頭人形の足先を攻撃している。
巨大なクマ頭人形は、激しく五尾を狙って攻撃しているが、五尾はあっさりかわしている。
しばらくすると、巨大なクマ頭人形は、溜めに入る。
五尾は、少し距離を取り、様子を見る。しばらくすると、八体の通常の大きさのクマ頭人形が現れた。
今のは、雑魚を召喚するための溜めだったのか。
「ちっ!さっきのは雑魚を召喚する溜めか!」
五尾は舌打ちをした。
クーちゃんは、何もしないで、巨大なクマ頭人形の動きを観察していたが、雑魚が出てきたため、そうもしていられなくなった。
三体の雑魚がクーちゃんの方へ向かっていく。クーちゃんは突進コンボで、三体を迎え撃つ。
他の雑魚も放っておくと、五尾の邪魔になるので、討伐を急ぐ。
五尾は、このような状況でも冷静に対処して、巨大なクマ頭人形に攻撃している。
クーちゃんが、通常の大きさのクマ頭人形の討伐を終えると、再び、巨大なクマ頭人形は溜めに入る。
今度は、五尾は激しく攻撃を始める。巨大なクマ頭人形は、八体のクマ頭人形を召喚した。
クーちゃんはすかさず、雑魚退治を始める。
巨大なクマ頭人形は、再び雑魚召喚の溜めに入る。
五尾は激しく攻撃する。クーちゃんは、雑魚退治を続けている。
再び、 巨大なクマ頭人形は、八体のクマ頭人形を召喚した。
大技後の硬直を狙って、五尾は激しく攻撃する。
また巨大なクマ頭人形は、溜めに入るが、今までと違うポーズだ。五尾は、距離を取って様子を見る。
巨大なクマ頭人形は、両手を大きく振り被り、一気に五尾を狙って振り下ろす。五尾はあっさりかわす。振り被った両手の攻撃から、衝撃波が発生し、地面を切り裂いた。
「げ! 雑魚のクマ頭人形にない攻撃じゃないか」
巨大なクマ頭人形は、もう一度、両手衝撃波攻撃の溜めに入った。
五尾は、今度は距離を取らずに、弱点部位を攻撃しながら、すれ違い、背後にまわる。当然、巨大なクマ頭人形の攻撃は不発に終わる。
五尾は、もう対処法をあみだしてしまう。
巨大なクマ頭人形は、大技後の硬直する。五尾は、その隙を逃さず、激しく攻撃する。すると、巨大なクマ頭人形は、五尾が見たことない新しい溜めの体勢に入る。
五尾は、無理せず再び距離を取る。
すると、巨大なクマ頭人形は、五尾の予想を裏切って炎の息を吐いた。しかも、炎の息を吐いたのは五尾に対してではなく、クーちゃんに吐いた。
クーちゃんは予想外の攻撃を受け、一撃で倒されてしまう。
気が付くとクーちゃんは、泣いている愛奈に抱きしめられていた。
クーちゃんの主観からすると、クエストの五つ目のエリアの途中まで攻略し、濃い時間を過ごして居たのに対し、愛奈にとっては、クーちゃんが日本から去った時から動いていない。
リキャストタイムは十五秒である。
この十五秒は、今のクーちゃんにとって、物凄く長く感じる。
倉庫の中に、愛奈の泣き声だけ響く。
クーちゃんが再び観念投影世界の自分のコンソールルームに戻って来ると、やっぱり五尾が待っていた。五尾の尻尾は三本のままだ。
「すみません」
「なぜ謝る」
五尾は首を傾げる。
「俺のせいで負けました」
五尾は、短く鼻息を吐く。
「ああいう、初見殺しの攻撃の対処は、慣れないうちは難しいものだ。炎のブレスのモーションは覚えた。次回は対処できるはずだ」
「でも、愛奈ちゃんは泣いている」
「俺たちの時間は流れているので、時間が経っているように感じるが、お前の持ち主の流れは止まっているようなものだ。数十秒で泣き止んだりはしないだろ」
クーちゃんは、黙り込む。
「三レベルのお前が、五レベル相当のエリアで動けているだけでも立派な事だ。コンソールで自分の状況をみてみろ。おそらく大量に経験値が入っているはずだ」
クーちゃんはコンソールを操作し、自分のステータスを見ると、経験値が大分跳ねあがっていた。
「嬉しい誤算だが、あとニ、三回繰り返せば、ピンクリボンのレベルが四レベルに上がるかもしれないな」
「そんな簡単にレベルって上がるもんなんですか?」
「残念ながら、それはクエストにより、まちまちだから一概には言えない。だが、三レベルのピンクリボンが、四レベル相当のエリアや五レベル相当のエリアで活躍することは効率よく経験値が入るのは確かだろう」
「俺はレベルを上げたい訳じゃないです」
「レベルを上げれば、クエストの成功率が上がる」
クーちゃんが再び黙り込むと、五尾は、短く鼻息を吐く。
「こんなところで話して居ても、お前の持ち主を助けられないぞ」
クーちゃんは、仕方なく、クエストの準備を始める。




