第十三話
クーちゃんと五尾は、一緒に木彫りのクマ人形を探しながら進む。すぐに現れたが、三体同時だった。
「向こうはこっちに気付いていないようだ。俺が真ん中と左にいるのを倒す。ピンクリボンは右にいるのと戦え。時間との勝負だぞ」
五尾がそう言うと、クーちゃんは肯く。
五尾が、中央に居た木彫りのクマ人形をあっさり倒し、左の木彫りのクマ人形もあっさり倒す。右に居た木彫りのクマ人形は、五尾の存在に気付き、クーちゃんに気付かない。そこにクーちゃんが、突進のスキルと鉄の爪のスキルを使って、先制攻撃が決る。クーちゃんの連続攻撃を受けた木彫りのクマ人形は怯む。クーちゃんはそのまま畳み掛けようとするが、途中反撃を喰らってしまう。それでもクーちゃんは木彫りのクマ人形を倒す。
「まだ、行けるな」
クーちゃんは肯く。
クーちゃんと五尾の進行方向に、二体の木彫りのクマ人形が居た。
「それじゃあ、あっちにいる二匹も退治してみるか。左の奴は俺が倒す。俺が先に仕掛けるから、ピンクリボンは隙をみて右を倒せ」
そう言うと、五尾はダッシュで左側の木彫りのクマ人形を一撃で倒す。右側の木彫りのクマ人形が五尾に気付く。
五尾に攻撃しようとしているのを見て、クーちゃんは、突進のスキルと鉄の爪のスキルで先制攻撃をし、怯ませる。そのままクーちゃんはラッシュを掛ける。しかし、木彫りのクマ人形はガードを固め、反撃をしようとした。そのタイミングで五尾が、木彫りのクマ人形の足を軽くはたく。すると木彫りのクマ人形はバランスを崩し、クーちゃんの攻撃で倒れる。
「やった。倒しきれた!」
「俺が木彫りのクマ人形の足を叩いたタイミングを覚えているか?」
クーちゃんは、苦笑いをする。
「五尾さんが途中、手伝ってくれたのは分かっています。でも、タイミングまでは……」
クーちゃんと五尾は、クーちゃんの戦闘練習の為、木彫りのクマ人形を倒し続ける。しかし、クーちゃんは、足を叩くタイミングを理解できず、累積的にダメージが溜まっていく。
それで、最寄りの安全地帯で休憩することにした。
「足を叩くタイミングは理解しているか?」
五尾がクーちゃんに聞いた。
「ええ。なんとなくですが」
「ピンクリボンは、理論より感覚で理解するタイプだと思ったら、詳しい説明はしなかったんだが、暇だし、話しておくか」
それで、足を叩くタイミング、叩く足について説明した。
叩くタイミングは、怯みから攻撃に移るタイミングまたは、ガードから攻撃に移るタイミング。
叩く足は、体重が乗っている軸足。
を鋭く早く叩くと。
「うーん。仰ることはわかるのですが、具体的にはどうしたら良いのか……」
五尾は、溜息を吐く。
「じゃ、まず、怯みから、攻撃に移りそうになったとき、軸足に攻撃を加えるのを練習するか」
「それが、できるようになると反撃を受けなくなるってことですよね」
五尾は、渋い顔をする。
「もう少し、基本から話そうか?」
クーちゃんは、苦笑いする。
「戦い方には、
一つ、敵から攻撃されないように、一気に攻撃する。
二つ、敵からの攻撃を避けて、攻撃する。
三つ、敵からの攻撃をガードして、攻撃する。
四つ、敵からの攻撃を受けて、攻撃する。
の四種類だな」
ん? 三つ目と四つ目とどう違うんだ?
「どうかしたか?」
「いえ。三つ目と四つ目と、どう違うのかなと思って」
「別物だ。敵の攻撃を盾や武器で受けたり、受け流したりして、敵の隙を突くのが、三つ目。防御行動、回避行動を一切行わず敵の攻撃を受け続けても気にせず、攻撃に専念するのが四つ目だ」
「違いはわかりましたが、四つ目なんて可能なんですか?」
「ヒットポイントが半端ないほど多い場合や、防御力が半端ない程強力な場合は可能だ」
「なるほど……」
「だが、一つ目と二つ目は防御力が無くてもできるが、三つ目はそこそこ防御力が必要だし、四つ目はさっき言った通りだ。つまり自分はこの四つのウチどれが、一番適性あるか知って、戦い方を決めていく必要がある」
うーんと、唸りながら、クーちゃんは悩む。
「俺はどれに向いていますか?」
「どれも向いているとも、向いていないとも言えない」
「どういうことですか?」
「ピンクリボンは、恐らく同レベルのヌイグルミの中では、攻撃力も防御力も強い方だろう。あと、素早さも器用さも平均的か平均よりちょっと良いぐらいだろう。これと言って特徴はない。だから、どれかに向いていると言うのがあまりない。その代わり、どれも出来ないわけじゃない」
「それじゃ、俺はどうした良いんですか?」
「理想は、全種類マスターして、必要に応じて使い分けられるようになるのがいいだろう」
俺には、難しすぎるとおもうんだが。
「初めから、全部マスターするのは難しいだろう。だが、ピンクリボンの今の戦闘方法は、一つ目の戦法と四つ目の戦法を混ぜたような戦い方だ。そして、俺が今教えているのは、一つ目の戦法だ」
「なるほど~」
「だから、まず、不意を突いて攻撃し、敵が怯んだところで、ダメージを稼ぐ。そして、敵が不意打ちから体勢を整えて反撃をして来ようとしたところを、体勢を崩すような攻撃して、反撃に移る邪魔をする。そういう戦法だが、とりあえずこれだけでもマスターすると良いだろう」
そんな会話をしていると、五尾の体に突然変化が起きる。五尾の体は、多重尾スキルを使い始めてからうっすらオーラがでていたのだが、そのオーラが微妙に不安定になる。
「五尾さん。どこか具合でも悪いんですか?」
「心配する必要はない。これは多重尾スキルの影響だ。ゲージも溜まって、一尾で居られる時間の限界が来たんだろう。そろそろ尻尾が一本増える」
五尾がそう言うと、五尾の体全体を覆うオーラの色が濃くなり、不安定になる。すると尻尾が二本に増えた。
「想定していたより、クエストの攻略が進んでいないが、まだ、想定内だろう」
もしかして、俺がクエストを失敗したせいか?
「予定ではどのぐらい進んでいる予定だったんですか?」
「予定と言うか予測だよ。予定していた訳じゃない」
「予測ですか……。それじゃあどのぐらい進んでいると予測していたんですか?」
「尻尾が二本に増えるころには、第三エリアはクリアしているだろうと思っていた。第四エリアをクリアする頃に尻尾が三本に増え、最終ボスは尻尾が三本でクリアできるだろうと、思っていた」
「え。尻尾が五本に増えないでクリア出来るんですか?」
「そう言う風に予測していただけだ。本当にできるかどうかは試して見ないとわからない。五尾になるのは本当に最終手段だ」
そう言えば、尻尾が五本の状態を十分ぐらいしか維持できないと言っていたな。
「尻尾が五本でいるには持続時間が短いからですか?」
「その通りだな」




