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第十話

 五尾に転ばせされて動きを封じ込められた大きな木彫りのクマ人形、藻掻いている。しかし、しっかり五尾が封じ込めている。

「どうした。何か問題でもあるのか?」

 クーちゃんは苦笑する。

「でも、この鉄パイプ、俺の爪より威力がないんですよ。これで殴ったところで倒すのが大変なだけかと」

「だが、他に使いどころがないだろう。そもそも武器として装備できるということは、その鉄パイプは武器だろ」

 話し合っていても仕方ないので、とりあえず、言われた通り鉄パイプに切り替えて攻撃することにした。

 クーちゃんは大きな木彫りのクマ人形の頭側に回り込むと、頭目掛けて鉄パイプを振り下ろした。

 岩を殴ったような感触があるに違いないと、クーちゃんは思っていたが、しかし、大きな木彫りのクマ人形は一撃で消滅し、したの地面にドスッと鈍い音を立てて止まった。

 すると、上空にカウントダウンするタイマーが出現する。

「え。何が起きたんだ」

「ピンクリボン、しっかりしろ。『愛奈の思い』を運ぶんだ」

 五尾のセリフにクーちゃんは我に帰る。

「いそげ。雑魚の木彫りのクマ人形が集まって来る」

 クーちゃんは、黄色の大きな球体、『愛奈の思い』を拾おうとする。

「お、重い……」

 重くてクーちゃんでも普通に動けない。

「急げ、先ほどいた安全地帯まで運ぶんだ」

 五尾はそう言うと、進行方向からやって来る五体の木彫りのクマ人形の方へ行き、あっさり倒していく。

「急げ、上空をみろ。多分、あれが次の大きめの木彫りのクマ人形が現れるまでの時間だ。それまでに運びきるんだ」

 五尾は、そう言うと、クーちゃんの横を走り抜け、クーちゃんの後ろ側から迫ってくる、木彫りのクマ人形五体へ向かって走る。五尾はとにかく大忙しだ。

「マジっすか。それを先に言ってください」

 すでにタイマーは、十分から開始し、すでに三十秒ぐらい経過している。

「俺も、いま知ったばかりだ!」

 クーちゃんは、よたよた歩きで『愛奈の思い』を運ぶ。それでも全力なのだ。それほど、『愛奈の思い』は重いのだ。

 五尾は、クーちゃんの周りを縦横無尽に走り回り、木彫りのクマ人形を倒し回っているので、クーちゃんは攻撃を受ける心配なく運べている。運べているがとにかく重い。両手で抱えているのに、手が痺れて来る。これで本当に安全地帯まで運べる自信はなかった。

 でも、クーちゃんには諦めると言う選択肢はなかった。自分の命より大事な愛奈ちゃんの為なら頑張れた。鈍いクーちゃんもさすがに分かる。これは愛奈ちゃんにとっても重要なアイテムであることを。

 それに、直ぐ傍で休むことなく走っては、モンスターを倒し、モンスターを倒しては、走る。五尾は、ずっとやり続けていた。それを目の当たりにしては、自分がこんなところで、運ぶのを諦める訳には行かない。

 上空のカウントダウンタイマーが、残り五分を回った頃。

 五尾は、クーちゃんがあと少しで十字路に差し掛かると見て取ると、クーちゃんの背後の敵を一気に一掃すると、今度は十字路へ一気に走る。すると五尾の予想通り、木彫りのクマ人形が横道から一斉に襲ってくる。

 五尾は、慌てることなく、次々に倒していく。

「ピンクリボン。お前は真っ直ぐ進め。俺は雑魚を片付けてくる」

 そう言うと、五尾は、十字路の横道に潜んでいる木彫りのクマ人形を退治して行く。クーちゃんが無事十字路を通過したのを見て取ると、今度は進行方向にいる木彫りのクマ人形を倒していく。


 凄いな。五尾さん。レベル差があると言っても、この強さは尋常じゃない。八面六臂の活躍とはこういうのを言うんだろうな。五レベルになったら、誰でもこんな風に活躍できるモノなのだろうか? 俺でも五レベルになれたらこんなに活躍できるのだろうか?


 意識が朦朧としているなか、クーちゃんは思った。クーちゃんの疲労がピークに差し掛かっている事に五尾は気付く。

「ピンクリボン。へたばるにはまだ早過ぎるぞ。お前、持ち主のためなら何でもすんじゃなかったのか?」

 五尾に叱咤されて、意識を取り戻す。

「当たり前でしょ。愛奈ちゃんの為なら、俺は死んでも良い!」

 クーちゃんは息を吹き返す。

「そうだ。その気合だ。走れ! 走れ! 走れ!」

 五尾は、自分自身も休みなく走り続け、楽な状態では無かったが、それでもクーちゃんを思いやり、声援を送る。ここで自分が止まっても、クーちゃんがここで止まっても、このクエストは失敗だ。

 上空のカウントダウンタイマーが、残り二分を回った。

「次のT字路を左に曲がれば、あと少しで安全地帯だ」

 そう言うと、五尾は、T字路に先行して行く。案の定、二十体の木彫りのクマ人形が両脇からやって来る。


 なんだよ。あの数。さすがの五尾さんでもヤバいんじゃないか?


 クーちゃんでも心配になるほどの数だった。しかし、五尾はまったく怯むことなく、次々と倒していく。T字路付近の木彫りのクマ人形を倒すと、今度は安全地帯側の木彫りのクマ人形を退治しに行く。

 クーちゃんがT字路に差し掛かろうとすると、安全地帯とは逆側から木彫りのクマ人形が大量にやって来る。

「ピンクリボン。お前は安全地帯へ進め。俺はコイツらをここで抑える」

 五尾は、再びT字路に戻って来ると、安全地帯とは逆からやって来た木彫りのクマ人形を退治始める。

 五尾の計算はほぼ間違いなく、かつ、計算通りに進めていた。

 しかし、唯一失敗があった。

 クーちゃんが、安全地帯まであと三メートルと言うところで、上空のカウントダウンがゼロになった。五尾もそれに気付き、クーちゃんの元へ走る。しかし、まだ二十メートル程距離がある。

 クーちゃんは、足元に例の円形の模様がクーちゃんの足元に浮かび上がる。クーちゃんはそれを無視して『愛奈の思い』を運び続ける。


 これだけでも、安全地帯に運ばないと!


 クーちゃんの額から汗が流れる。あと少しと言うところで、大きな木彫りのクマ人形がクーちゃんが通り過ぎた、円形の模様の場所に現れる。

 そして、大きな木彫りのクマ人形は、クーちゃんに襲い掛かる。前足による攻撃が、クーちゃんにヒットする。しかし、クーちゃんは意地で『愛奈の思い』を落とさない。そして、自分自身はまだ安全地帯に届いて居なかったが、『愛奈の思い』は、安全地帯の中であると見るや、地面に置いた。

 その瞬間、大きな木彫りのクマ人形がもう一撃ヒットする。クーちゃんは、ダメージを負って倒れしまう。五尾が慌てて、蘇生アイテムをクーちゃんに使おうとすると、大きな木彫りのクマ人形が邪魔をする。

「じゃまだ! カス!」

 五尾は、大きな木彫りのクマ人形をあっさり倒す。

 しかし、時は遅し、クーちゃんは五尾の目の前で消滅する。そして、五尾は信じられない光景を見た。

 『愛奈の思い』は、確かに安全地帯に置かれている。しかし、ほんの少し、安全地帯からはみ出ていた。

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