第八話
クーちゃんは、五尾がなかなか戻ってこないので心配だったが、今は回復に専念するしかなった。戻って来ると、心配とは逆に、五尾は涼しい顔をしている。
予想はしていたけど、心配して損したよ。
「どうだ。ヒットポイントは回復したか?」
そう言うと、五尾は安全地帯に入る。
「あと少しで回復します」
「そうか。俺も少し回復しておくか。ヒットポイントへのダメージはないが、スキルや魔法を使いまくっているから、そちらは、少々消耗している」
「すみません。俺、全然役に立てなくて」
「気にするな。恩に感じているなら、絶対に負けるな。石にかじりついても生き残れ」
「頑張るっす」
二人はしばらく沈黙する。
「あと、この先にキーアイテムがあった。鉄パイプだったんだが、何か心当たりあるか?」
クーちゃんは考え込む。
「鉄パイプですか? いや、まったく」
「しかも、このエリア内でしか使えない上に、通常のヌイグルミには使えないそうだ」
「それじゃあ、俺にもつかえなんじゃないですか?」
「ここは、ピンクリボン専用のクエストだ。それにこのエリアの最初にあった安全地帯の看板に『クエストの主人公、キーアイテムを入手し、大事な宝を最寄りの安全地帯に運べ』と書いてあっただろう。おそらく、ピンクリボンにしか使えないはずだ」
俺にしか使えないと言われても、使い道が思いつかないよ。武器として使うにしても、両手の爪の方が威力ありそうだし。パイプとして使うにしてもどことどこを繋ぐんだ?
クーちゃんが考え込んでいるのを見て、五尾は諦める。
「その内、使い道がわかるだろう。今は頭の片隅に置いておくといいだろう」
五尾のアドバイスを受けたが、どうしたら良いのか考えも付かなかった。
「回復、済んだか?」
五尾が聞くとクーちゃんは肯く。
クーちゃんと五尾は、鉄パイプがある場所まで来る。
「俺が手に入れて良いんですか?」
「おそらく、ピンクリボン以外では、手に入れられないだろう。モンスターが来てしまう。早くしろ」
クーちゃんは、恐る恐る、鉄パイプに触れると、目の前から消えてしまう。そして、クーちゃんの右手に装備されていた。
「あれ。この鉄パイプ。武器だったんだ」
ヌイグルミは、装備している武器の強さがわかるので、鉄パイプの威力をクーちゃんは確認する。
「げ。これ爪より威力弱い! もしかして呪いのアイテムか。あ、でも爪で攻撃するか、鉄パイプで攻撃するか選べるみたいだ」
「それなら、呪いのアイテムではないな。どこかで使い道があるんだろう。ただし、このエリア内でだが」
うーん。何処で使い道があるんだろう。
「とりあえず、次の安全地帯まで走るぞ」
「ま、待ってください」
二人は次の安全地帯へ向かって走った。
クーちゃんと五尾は安全地帯に到着していた。
「『大事な宝』って何処にあるんですか?」
クーちゃんは、ヒットポイント回復の為、ジッとしながら、五尾に聞いた。
鉄パイプを入手してから、もうすでに五回ほど安全地帯を移動していた。その都度、死にかけるのだ。さすがにウンザリしていた。
「次のルートにあるのは分かっている」
五尾のセリフに、クーちゃんは安堵する。
「だが、『大事な宝』は入手しただけで終わりじゃないからな」
五尾は釘を刺す。
「え。そうなんですか?」
「やっぱり、このエリアに入って直ぐの安全地帯に書いてあった看板の内容を忘れているな」
五尾は溜息を吐く。そして、地面に看板に書かれていた内容を前足の爪で書く。
『
クエストの主人公、キーアイテムを入手し、大事な宝を最寄りの安全地帯に運べ。
順番を違えてはいけない。主人公以外が入手、および、運搬をしてはいけない。
』
「つまり、大事な宝は入手じゃなくて安全地帯まで運ぶんだ。なるほど」
「あと、鉄パイプが装備できた事から、大事な宝を安全地帯に運ぶのは、ピンクリボンの仕事だぞ」
「入手して安全地帯で使うだけですよね。大丈夫です。頑張ります」
五尾は心配そうにクーちゃんに見る。
「運搬クエストってやったことあるか?」
五尾が尋ねると、クーちゃんは首を傾げる。
「運搬クエストですか? いえ、そう言う名前のクエストはやったことないです」
五尾は溜息を吐いた。
「わかった。とりあえず、俺がアドバイスするから、ちゃんと従うんだぞ」
「なんかあるんですか?」
「運搬クエストは慣れが必要なクエストなんだよ。経験がないのは仕方ない。やれる事をやるだけだ。俺は下見に行ってくる」
そう言うと、五尾は安全地帯から走って行ってしまう。
なんか不安になるじゃないですか~
クーちゃんが不安になっているのを他所に、五尾は遭遇するモンスターを片っ端から倒しながら進んでいく。五レベルの五尾には、ほぼ一撃で倒せるが、とにかく数が多いので面倒だった。
しばらくすると、黄色の大きな球体が、通路の真ん中に置かれているのを発見する。雑魚を倒しつつ、ゆっくり近づいていく。すると、黄色の大きな球体から三十センチ程離れたところの地面に円形の模様が浮かび上がる。
さっきから大量に発生している木彫りのクマ人形より、大きな木彫りのクマ人形が、円形の模様の上に現れた。
ちっ! ボスか。中ボス程じゃないだろうから、小ボスと言ったところか。
分析の魔法を使うと、通路を徘徊している木彫りのクマ人形より、ヒットポイントも攻撃力もあるのがわかる。とはいえ、五尾にとっては雑魚に過ぎず、攻撃して来た前足に噛み付き、足を引っ掻けて投げ飛ばすような感じに地面に叩きつけた。そして、踏みつけて動きを封じる。そこで黄色の大きな球体に分析の魔法を使う。
『
運搬アイテム
愛奈の思い 愛奈のクーちゃんを大切にしている思いの結晶
このエリア内のみ 有効
』
五尾には、この様に分析出来た。
この運搬アイテムを安全地帯まだ運べば、このエリアの攻略完了だ。とは言え、近い安全地帯は三ヶ所ある。一番運びやすいのはどれだろう。実際に行ってみて調べるしかないか。
五尾は、踏んづけていたモンスターが暴れるので、踏みつけて倒す。すると、先ほど、円形の模様が同じ場所に浮かび上がり、そこに同じモンスター、 大きな木彫りのクマ人形が現れた。五尾は、再びあっさり倒す。しかし、再び、円形の模様が同じ場所に浮かび上がり、大きな木彫りのクマ人形が、また現れた。
どういう事だ。もしかして無限にモンスターが現れるのか?
五尾が『愛奈の思い』から距離を取ると、大きな木彫りのクマ人形も消滅した。
『愛奈の思い』に近づくと、あの小ボスが現れる仕組みになっていると、五尾は見破る。しかし、大きな木彫りのクマ人形が無限発生の対処法を考えないと、『愛奈の思い』を運び出せない。
そもそも、愛奈って誰だ? たしかこのクエストのタイトル『愛奈ちゃんを救出し、人喰クマを撃退せよ』だったな。なんとなく、ピンクリボンの持ち主が愛奈だと思っていたが、違うのか?
あとで、ピンクリボンに確認しよう。他にも調べないといけないことが多いしな。




