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第一話

 クーちゃんが、レベルアップを目指し始めてから、日本で一ヶ月が経った。

 本日も、クーちゃんは、愛奈が寝ている間に観念投影世界(イデアビジェクションワールド)へ行き、クエストなどへ行き、帰ってくると一緒に寝る。愛奈が起きている間は、ずっと日本にいる。

 それをいまだに続けていた。


 ヌイグルミ達は、観念投影世界に行くようになると、日本での時間と観念投影世界での時間のズレが大きくなって来るのが普通であった。

 そして、その時間のズレがある程度大きくなると、日本で過ごす時間を取るようにと管理局から指導されるようになるが、クーちゃんは、全くその心配がないぐらい、日本での愛奈と一緒に過ごす時間を大事にしていた。その為、クーちゃんは、ほとんど時間のズレが大きくなることなかった。

 つまり、クーちゃんは他のヌイグルミに比べると、活発に活動していたとは言い難い。

 それでも、小クエスト一つクリアと、スキル迷宮で新たな二つのスキルを入手した。

 小クエストは、商店街のお店の店主の人形が無くしたと言う財布を見つけるという内容だった。

 観念投影世界は、お金を払う意思を持つとお金が払える世界なのに、なぜお財布なんて持っているのだろうかとクーちゃんは思った。しかし、日本で存在するモノは、この世界でも姿を変えて存在している事もある。いろいろ苦難の末、所謂がま口の財布を見つけ出した。クーちゃんが中身を確認すると、スロット屋で使うコインがいっぱい入っていた。もちろん中身もそのまま持ち主の人形に届ける。

 結局、報酬としてもらったのはお金、ドールだけだったが、クリアしたから経験値も入っていた。

 また、スキル迷宮では、鉄の爪を入手したのと同じような感じで、ひたすらモンスターが現れる迷宮を探索し、台座に乗った半透明の球状の物体、スキルオーブに触れば入手出来た。一つは『鋭い牙』で、通常の噛み付き攻撃より、ダメージも多く、素早く、しかも命中し易くなる。もう一つは、『突進』で、そのまま体当たり攻撃をしたり、爪で攻撃したり、噛み付いたりし、攻撃の威力を増すのに使う。ただし、使用する際、突進する距離が必要であった。


 クーちゃんはレベルアップこそ出来ていないが、一応、順調に経験値を稼げている。それに引き換え、愛奈の家の周り、クマの猛威は鎮まるどころか、逆に激しくなっていた。季節が秋になったせいでもあり、クマたちはエサを大量に必要としていたからだ。

 それと呼応するかのように、クマを駆除する自治体に抗議をする者たち中からも、行方不明者がでるようになった。人々にはクマと行方不明者の増加との因果関係を明確に明らかにした者はいなかったが、直接現地に行って抗議する人間も減ってきていた。

 その分、電話やメールで抗議する者たちが逆に増えていた。

 クマの駆除を反対する人たちに対して否定的にな見方をしていた人達は、『自分たちは安全な場所にいて、他人には危険なままでいろって、どれだけ人でなしな考えなんだよ』と言った、揶揄する者たちも出て来た。

 その揶揄が適切であるかどうかは別として、自治体はやっと、地域住民が望む、クマの駆除に本格的に取り掛かることできる環境が整った。

 クーちゃんは、愛奈の両親がそのことを話していたので知った。


 クマが駆除されて、愛奈ちゃんが安心して保育園に行けるようになるといいなあ。


 クーちゃんはしみじみと思った。とは言え、愛奈が保育園に行けるようになったら、クーちゃんは愛奈と一緒にいられる時間も減ってしまう。クーちゃんは、そのことも十分承知していたが、愛奈の事を思うと、そう思わずにはいられなかった。



 ままごと中に、愛奈は部屋から入側(いりかわ)を通し、さらに外に目をやる。そしてままごとを中断する。

「たまには、お外で遊びたいなあ」

 愛奈は、ボソリと言った。


 そうだよな。遊び相手は、俺だけ。何も話さない。まったく自力で動かない。俺では、愛奈ちゃんを楽しませてあげられない。でも、ダメなんだ。外は、危険なクマがいるから。


 愛奈は、クーちゃんを抱き上げると、ソファに座らせる。そして、ままごと道具をしまい始める。片づけ終ると、ソファの上のクーちゃんを胸に抱いて、入側へ行って座り、外を眺める。

 愛奈の家は一軒家で、広くはないが庭もある。愛奈の視界は、当然愛奈の家の庭である。庭には大きくはないが、柿の木が一本立っていた。柿の木の向こう側には、完成していない生垣がある。愛奈の家の敷地と愛奈の家の敷地に面した道路との境を示していた。そして、道路の向こう側には、他所の家の物置小屋があり、時折、軽トラが止まる。運転手は、車の外の様子を伺いながら、問題ないと判断し、車を降りる。そして、手早くその小屋に荷物を入れたり、逆に取り出したりしている。クマを警戒して、荷物の出し入れは、なるべく手早くすませる為だ。

 道路手前にある愛奈の家の柿の木の実は、なり過ぎていたため、大きくなり切らず、やや小振りだった。そして、まだ食べごろには早過ぎる為、まだ緑色だった。実を大きくしたければ、間引く必要があるが、愛奈ちゃんの家族でそこまで手がまわる人間はいない。それでそのまま放置されている。

 陽の光で、暖かい入側でジッとして外を眺めていたら、眠くなり愛奈は寝てしまう。クーちゃんは、愛奈に抱っこされているので、愛奈の様子はわからないが、寝ていることはわかる。

 こういう、イレギュラーで発生した昼寝は、どのぐらい寝るのかわからない。なので、クーちゃんは観念投影世界に行こうか、行かないか悩んだが、結局、愛奈の膝の上でジッとしていた。


 いつの間にか、ポカポカ陽気につられてクーちゃんもウトウトしていると、愛奈の母親がお昼ご飯に呼びに来た。愛奈が寝ているのに気付き、母親は起こす。クーちゃんも一緒に目が覚める。愛奈は、まだ眠そうにしているが、母親に促され、食卓へと向かう。


 愛奈ちゃん。俺を置いていかないでくれー!


 愛奈は、寝ぼけていたためクーちゃんを置き去りにしたが、食卓に到着してから、クーちゃんがいないのに気付き戻って来る。

「クーちゃん。ご飯ですよ。食堂へ一緒に食べに行きましょう」

 愛奈は、クーちゃんを抱っこして、食堂へ向かった。


 良かった~。

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