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第六話

 クーちゃんと五尾の世間話中に、クーちゃんたちから見えない物陰から分析の魔法の呪文詠唱をするヌイグルミがいた。五尾は、その詠唱を聞き取り、自分たちが対象になっていると気付き、咄嗟に認識阻害の魔法を完成させる。

 五尾は、ショートカットスキルが使える為、いくつかの魔法と、いくつかの日本に帰るときなどを含むコマンドをショートカットスキルに登録していたので、詠唱抜きで行うことが出来た。認識阻害の魔法もショートカットスキルに登録しておいたのだ。

「俺たちに向かって分析の魔法を掛けた奴がいる。気を付けろ」

 五尾がクーちゃんへ言った。


 え。えー! どうやって気を付けるの?


 クーちゃんは、周りを見回すが、何か起きそうにも思えなかった。とは言え、クーちゃんの立場に立って考えてみれば、何をしたら良いのかなんてわかり様もなかった。

 五尾にしてみたら、『敵襲の可能性があるから、警戒しろ』という程度の意味だったのだが。

 クーちゃんが戸惑っている間に細い路地から一斉にヌイグルミが大勢出てきて、クーちゃんたちを取り囲んだ。


 な、なんだ~。なんだって言うんだ。


 クーちゃんたちの目の前に可愛い茶色を基調とした可愛いリスのヌイグルミ、金ネックレスが現れた。ニックネーム通り、金色のネックレスを首に付けていた。

「お前が五尾だな」

 金ネックレスが聞いた。

「五尾なんて奴。知らんな」

 五尾は、怯む感じもなく、良い淀む感じもなく、迷うことなく、いけしゃあしゃあと言い放つ。


 え。えー! あっさりウソ吐いた。


「お、俺も違うっす」

 クーちゃんも何とか言った。さすがに知らないとは言えない。

「五尾がピンク色のキツネのヌイグルミなのは知っているから」

 クーちゃんはホッとする。

「それに、魔法探知系五レベルの分析の魔法を、認識阻害の魔法で妨害できるのは、同じ五レベルの魔術探知系のヌイグルミじゃなければできない。五尾を除いた残りの魔術探知系五レベルのヌイグルミの顔を俺は知っている。だから、残りの五レベルは五尾、お前しかいないんだよ」

 金ネックレスは、得意げに言った。

「あっさり、認識阻害の魔法で、分析の妨害された癖に偉そうだな。俺はお前達に分析の魔法を掛けて、お前だけが五レベルで、他は全員一レベルの魔術探知系のヌイグルミだって分析済みだ」

 五尾は、挑発気味に言う。

『と言う事だ。正面のリスのヌイグルミ以外は、ピンクリボンの敵じゃない。大して不利な状況じゃないからな』

 五尾は、クーちゃんにだけ聞こえる小声で言った。

 逆に金ネックレスとは五尾の挑発に乗って、悔しそうにしている。

「俺は、認識阻害の魔法を使う必要がないから使ってないだけだ!」

 金ネックレスが、怒って言う。


 五尾さんと前のリスが五レベル同士で、他は一レベル魔術探知系のヌイグルミか。俺、一レベルのヌイグルミより、確かに強いけど、こんなに数が居るのに大丈夫なのか?


 クーちゃんは自覚なかったが、ピンクリボンこと、ピンクのスカーフのお陰もあり、二レベルのヌイグルミの中では、強い方の部類である。さらに同じ一レベルのなかでも、魔術探知系は、他の系統の一レベルのヌイグルミより弱いので、レベル差系統差でクーちゃんの方が強いと言う見立ては正しかった。


「俺はケンカしに来たんじゃないぞ。お前が魔術探知系五レベルの五人衆への新入りのお前より、俺の方が上だって分からせる為に来たんだよ」

 金ネックレスは、得意げに言った。それに対して五尾は、呆れた顔をしている。

「町長にも言ったがな。俺は五人衆とやらには入らないし、低レベルのヌイグルミの面倒なんてみないし、お前たちと慣れ合うつもりもない」

 五尾はビシッと言い切る。金ネックレスは、驚きで思考を停止する。

「それにな。魔術探知系以外のヌイグルミには、六レベル、七レベルは少なくない。多くはないが八レベル、現在たったの四人しかいないが九レベルもいる。それなのに五レベルで満足できるか!」

 五尾の最後の方のセリフは怒鳴り声になっていた。

『何言っているんだコイツ』と金ネックレスは思ったが、アタフタするばかりで何も出来なかった。

「俺は最終的には、九レベルになるし、当面は単独で六レベルを目指す」

 クーちゃんを含む、ここにいる全員が度肝を抜かれた。


 五尾さんって、そんな目標持っていたんだ。スゲー。


 すると、五尾は突然消えた。

「あ、消えた」

 辺りにいた全員が驚く。


 カラクリを知らない人が見たら驚くよな。やっぱり。


「お、お前。五尾が何処に消えたか、言え!」

 金ネックレスが驚き、クーちゃんに聞く。

 クーちゃんは、自分だけがカラクリを知っている事に、思わずニヤケてしまう。

「日本に帰ったと思うけど。それで今頃コンソールルームにいるんじゃないか。多分だけど」

 金ネックレスの部下の一人が、金ネックレスに耳打ちする。

 その部下は、クーちゃんに分析の魔法を、五尾が去った後に掛けたが、五尾の認識阻害の魔法はまだ解けておらず、レベル等を見破る事が出来なかった。その報告をしたのだ。

「忌々しいヤツめ」

 金ネックレスは悪態を吐いた。

「俺も、帰っても良いかな。こんなところでケンカして、管理局に睨まれても、面白くない。お前たちと戦って、弱い者イジメを認定されても困るしな」

 クーちゃんは、ハッタリをかました。

 金ネックレスは魔術探知系とは言え、五レベルである。戦えばクーちゃんでも勝つ事はできない。

 金ネックレスの部下が道をあけたので、クーちゃんはそのまま通り抜けた。そして、いつもの大通りに出る。ここは、いつもの広場まであと少しの場所だ。


 この世界でも、派閥争いあるんだ。でも、五尾さんカッコ良かったな。一匹オオカミならぬ、一匹キツネだ。俺も当面は三レベルへのレベルアップを目指そうかな。


 三レベルを目指すことにしたのは良いが、良い方法がわからない。そこで再び町役場へ行って、ザンに相談することにした。

「僕は、ヌイグルミではないので、具体的にはわからないのですが、クエストの経験値の良い順で言うと、個人専用クエスト、配信クエスト、小クエスト、スキル迷宮、チュートリアルクエストの順になっています。受注のし易さの順番は、ご存知でしょうけど、逆順になります」

 ザンは、一般論を説明した。

「そう考えうると、殆ど受注できない、個人専用クエストや配信クエストが受注できたら、受注し、通常は小クエスト狙い。小クエストがない間は、常設のスキル迷宮を受注すると、レベルアップし易そうだね」

 クーちゃんは考えながら言った。

「経験値だけで言うと、そうなんですけどね。チュートリアルクエストが小クエストのトリガーになっているケースもあるみたいだよ。だから、効率が悪くてもチュートリアルクエストも進められるようなら、やった方が良いようだよ」


 結構複雑だなあ。


「あと、そうそう。三レベルになったら、助っ人サポートプログラムに会員登録すると良いですよ。他人の個人専用クエストや配信クエストの助っ人として、管理局が斡旋するプログラムです。助っ人として斡旋してもらえれば、経験値稼げますよ」


 なるほど。助っ人か。

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