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第一話

 クーちゃんは、ピンクのスカーフを背中側に巻いて、顎の下で蝶ネクタイのような感じに可愛いリボンの様に巻かれていた。

 観念投影世界(イデアビジェクションワールド)にやって来たクーちゃんは、恥ずかしかったので外そうとしたが、どうしても外せなかった。広場のフランス人形に外せないか相談したが、分からなかったので、町役場に行ってみたら、『人間界で巻かれたモノは、外す事ができない』と言われた。


 事の成り行きは、愛奈が、一人でおやつを食べていると、ジュースを飲もうとした時、誤ってジュースをこぼしてしまった。そしてこぼれたジュースはクーちゃんの背中にかかった。

 大人であれば、ティッシュなどで拭いたのだろうが、動転した愛奈は、クーちゃんを持って母親に助けを求めた。それが、かえって汚れを広げ、シミとなった。

 母親は、インターネットでヌイグルミの洗い方を調べ、一生懸命シミを取ろうとしたが、残ってしまった。仕方ないので、母親はクリーニング屋に頼もうとしたが、愛奈ちゃんが嫌がったのだ。それで、ピンクのスカーフを巻いてシミを誤魔化す事にしたわけだが、かえって愛奈ちゃんはそれが気に入ってしまい。巻かれたままになっている。


「でも、そのスカーフ。リボンみたいで似合っていますよ」

 日本刀を持った学生服の人形ザンが言った。

「でも、ピンク色だし」

 クーちゃんが、困っているところにピンク色の可愛いキツネのヌイグルミ、四尾が通り掛る。

「ピンクの何が悪い」

 四尾が言ったので、クーちゃんは戸惑う。

「四尾さん。クーちゃんさんが、ピンクのリボンを外したいそうなんですけど、どうにかなりませんか?」

 ザンが、四尾に空気を断ち切るように話しかけた。


 ザンさんはどうして、四尾さんて分かるんだろう。このピンクのキツネのヌイグルミって町中彼方此方で見かけるんだけど。


 四尾は、大量生産されて大量に売れている、安価で人気のヌイグルミである。同型のヌイグルミが日本中に存在している。クーちゃんには、いまいち見分けが付かなかった。

「防御力強化効果にヒットポイント上昇の効果があるのに勿体ない。それなのに外すのか?」

 四尾は怪訝な顔をしてクーちゃんをみる。

「え。そんなに凄いのこれ!」

 クーちゃんだけでなく、ザンも驚く。

「そのスカーフ。日本なら、人間がスカーフとして巻くモノで、人間にとっても高級品のスカーフだ。本来ヌイグルミに巻くようなもんじゃない。どうしても外したかったら、スカーフを外す個人専用クエストができる様に強く願うんだな」

 そう言うと、四尾は行ってしまう。


 そんな凄いアイテムだったとは、気付かなかった……


「持ち主の強い思いが籠ったアイテムは強力な効果があると言われています。外すの勿体なくないですか?」

 ザンが諭すように言った。

「そんな効果があるって知らなかったんだよ。分かったら、外すに外せないでしょ」

 クーちゃんは複雑な表情をする。

「クーちゃんさんは、ジャパントレジャー社製のブラウンシャイニーテディベアですよね。高級品で、あまり出回っていませんけど、同型の別のヌイグルミとの差別化でき、クーちゃんさんの個性として、トレードマークになりますよ」


 スカーフを外すのは諦めるか。


「話しは変って、質問があるんだけど、聞いても良いですか?」

 クーちゃんが、ザンに聞いた。

 ザンは、クーちゃんを促す。

「四尾さんって、量産品のヌイグルミで同型のヌイグルミが大勢いるじゃないですか。どうして他のヌイグルミと区別がつくんですか?」

 ザンは、困った顔をする。

「どうしてと言われても、困るのですが……。四尾さんって口は悪いですが、苦労人特有の優しそうな瞳と雰囲気ですかね」


 俺にはさっぱり分からないよ。同型の他のヌイグルミと同じにしか見えん。口調と言うか、話し声に特徴があるから口を開くと、なんとなく四尾さんと分かるけど、ザンさんは、口を開く前に区別していたしなあ。


「僕もなんとなく区別が付くだけなので、上手く説明出来なくて、すみません」

 ザンは苦笑いしている。

「あと、もう一つ質問があるんだけど、聞いても良いかな?」

 ザンは戸惑う。

「僕に答えられることでしたら」

「どうして、四尾さんは、このスカーフが防御力やヒットポイントが上昇するって分かったのかな」

 ザンは、斜め上に視線を動かしたあと、口を開く。

「多分だけど、解析の魔法を使ったんじゃないかな。四尾さんは、解析の魔法を使えるからね」


 そう言えば、町長の居場所を探す時にもいつの間にか使っていたな。


「そんなに頻繁に魔法を使ってMPとかなくならないの?」

 クーちゃんが聞くと、ザンは、ニッコリして口を開く。

「それなら、心配いりませんよ。全力疾走したら、一次的に疲れて走れなくなりますけど、しばらく休むとすぐにまた走れるようになりますでしょ。魔法についても同じ感じだそうですよ。僕は魔法使えないので受売りですけどね」


 そんなもんなんだ。


「ありがとう」


 クーちゃんは町役場を出ると、すぐにコンソールルームに戻る。すぐに、コンソールを操作し始める。

 コンソールには、自分のステータスを見ることができる機能があった。クーちゃんは、今の自分のステータスを見るために操作したのだ。

 すると、画面には、前回自分のステータスを見た時の日時や、前回からのステータスの変化が分かるように表示された。

 防御力は三十パーセントぐらいアップ、ヒットポイントは十パーセントぐらいアップしていた。


 確かにこれは凄いな。でも、このピンクのスカーフ、アイテムや装備ではなく、体の一部という扱いになっているじゃないか。しかも、細かくピンクのスカーフに関する説明があった。


 ピンクのスカーフ

 日本でも人間用の高価なスカーフである。クーちゃんの持ち主により、取り付けられたモノ。クーちゃんの持ち主の過ちにより、背中のシミを付けられてしまう。その背中のシミを隠す為に付けられたモノ。

 背中のシミは、人間界で取り除かれるまで、弱点となる。この弱点は、直接打撃を受けると通常時の十倍ダメージを負ってしまう。このピンクのスカーフは、この弱点を完全に守るだけでなく、クーちゃんの防御力とヒットポイントをアップする効果がある。

 しかし、この効果は、クーちゃんのみしか発揮しない。その為、無理やり剥ぎ取って、他者が装備しても同様の効果はない。


 俺は、愛奈ちゃんに守られていたんだ!

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