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第七話:バルシア公国に到着、招いた人物と会いましょう


 バルシア公国


 ルクイアーダと並ぶ4大国家の一つ。


 海運で富を得ており、公国の名のとおり貴族が統治している国だ。


「さて吹上ユツキ様」


 入国手続きを終えた後、ガク大使が話しかけてくる。


「無事入国を果たしました。これより吹上ユツキ様を招いた方について教えます」


 やっとか、まあそれはそうだろうな。いくら追放したとはいえ門外不出の聖女を自分の国に招き入れるのだ、用心に重ねることは無い。


 一息入れるとガク大使はその名を告げる。


「貴女を招いたのは、トウザ伯爵家です」


「トウザ伯爵家!?」


 想像以上の大物の名前が出てきた。


 トウザ伯爵家。


 バルシア公国ナンバー3。


 頂点に君臨する公爵家1門、支える侯爵家2門、そしてそれぞれの分野を統括する伯爵家2門。実質その4門でバルシア公国は運営されている。


 ほとんど表舞台に姿を現さない頂点の3門、それこそルクイアーダなら王子といった王族ではないと会えない。


 その中で伯爵家はその3門との繋ぎ役として絶対的な権力を握っている。


 トウザ伯爵家に万が一でも不興を買えば、公国では活動できないのだ。


 私も聖女として活動する上で4大国には頻繁に行き来はしたものの聖女は所詮は「例外貴族」の扱いで、バルシア公国では精々男爵家ぐらいしか出してこない。


「…………」


 一気に場が緊張してくる。なるほど確かに大使を使いパシリにするのなら納得できる相手だ。


「我々は貴族居住区のトウザ伯爵家正門まで案内し、後はトウザ伯爵家の使用人が案内する手筈となっております、もう間もなく到着します、準備を」


「ガク大使」


「なんです?」


「トウザ伯爵家の誰がどのような用件で呼び出したのです?」


「……存じません」


 と憮然とした表情で答えたのであった。




 トウザ伯爵家は、入る物を拒むような高い壁に囲まれており、中に入った後、馬車がから降り立った先、3人の使用人が並んでいた。


 ガク大使は使用人たちに挨拶をすると、そのまま走り去った。


「私は本来であればこちらからお迎えに上がらなければならない無礼、深くお詫び申し上げます」


 慇懃に頭を下げる使用人、いや、、。


(男爵家の紋章がある)


 使用人には間違いないが彼女もまた貴族か。なるほど、使いパシリに出来るのは何も大使だけではないという事か。


「それでは案内いたします、どうぞ」


 と豪華な衣装を施した馬車に乗り、貴族居住区に入っていく。


 中は、それこそ別世界だった。


 広大な敷地に点在するカントリーハウス。


 その中の一つのカントリーハウスの前に到着して、そのまま家政婦の後をついて歩く。


 私を招いた人物について、誰かだけは馬車に乗り教えてくれた。


「吹上ユツキ様、今回お招きした人物は、現トウザ伯爵家当主の三女、イナンボク夫人です」


「……イナンボク夫人」


 当然に知っている。


 トウザ伯爵家は、バルシア公国のナンバー4にあたる名門伯爵家であることは繰り返し述べたとおり。


 バルシア公国は、公国の名のとおり貴族が統治をする社会、御三家と呼ばれる公爵家と執事の侯爵家を頂点に据える公国にとっての、所謂窓口であるが、今の男爵家の関係者を使いにやるように表舞台には出てこない。


 私自身も名前しか知らないが、不興を買った何人もの人物が「行方不明」となっている。


「それでは、失礼します」


 と個室に通された後、家政婦が退室し、私1人が残された。


「…………」


 広いなぁ、ここまでくると個室というよりも広い高級マンションって感じよね。


(しっかり個室という割にはベットが2個あるし)


 まああれか、なんかハリウッドスターも寝室8部屋ぐらいある豪邸持っていたとか、ニュースで聞いたことがある、絶対にいらないだろと思ったが、まあこれもステータスなんだろう。


【ようこそ、吹上ユツキさん】


「?」


 あれ、なんか、今人の声が聞こえたような。


 どこからだろう、なんか目の前のベットから聞こえたような。


 気のせいかな。


【ここですよ】


 と再び声が聞こえた時だった。


 ズオオオという効果音が聞こえてくるかのように起き上がり。


「初めまして、吹上ユツキさん」


 と目の前のポルポに挨拶されたのであった。



 あ、これ、マフィアに勧誘される奴や(カタカタ)





 前回までのあらすじ。


 追放されたユツキはポルポに面接を受ける羽目になった。


 やばい、まさかこう来るとは思わなかった。


 完全に政治的な取引でも来るのかと思って色々と考えていたが。


 いや、怯んでなどいられない。


「私にスタンドの才能なんてありません!! 矢に撃ち抜かれても死ぬのがオチです!!」


「はい?」


 っと怪訝な様子、しまった間違ったか。


 となれば転生前で培ったの世渡り術。


(自分の意見を発しない! 相手が望むことを言う!!)


「まずは自己紹介から! 吹上ユツキと申します!! 人が人を判断する上で大事なのは信頼! 一番してはならないのは侮辱! 殺されても文句は言えないと思います!」


「な、なんなんですか、さっきから」


 や、やばい、何か困惑している様子。


 どうしよう、マフィアなんて絶対に嫌だ。


 きっとあれだ、何か無茶な要求をされて断ると、裏には強面の男達が出てきて、私を見てこういうの。



――「こりゃあついているぜ! 今まで見たことも無い上玉だ! この美貌はまさに傾国の美女といっても過言ではない!!」



「といって売られるに違いない!!」


「……貴方テンパっているように見えて、実は凄い冷静でしょ?」


((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←ユツキ


「あーもう! 話が進まない! 改めて私はトウザ伯爵家当主三女、トウザ・イナンボクと申します」


「は、はい、東西南北夫人、初めまして」


「東西南北ではありません、トウザ伯爵家当主三女、トウザ・イナンボク。イナンボクは、美人で有名な女神様ですの、おっほっほ!」


 美人女神様の名前を冠する外見がポルポみたいな伯爵嬢は、口元に手を添えて巨体を揺らしながら笑っている。そのまま指を食べてしまわないだろうか、大丈夫だろうか。


「あのー、ポルポ夫人」


「だからポルポじゃねえっつてんだろ! 分かるぞ、そのポルポって奴ロクな奴じゃないだろ!」


「すすすすみません、はい、えっとーーー、イナンボク夫人、ご用件は?」


「その前に、アナタは聖女の爵位を剥奪され国外追放となった。それは間違いありませんか?」


「は、はい、間違いありません」


「次に貴方は回復魔法を使えることも間違いありませんか?」


「それも間違いありませんが」



「その回復魔法は歴代回復魔法の祝福を受けた聖女の中でも歴代屈指最高と言われるものであるとも?」



「…………」


 まあ、ここは。


「歴代最高は過大評価だと存じます。今や歴代最高の回復魔法使いは聖女ノバルティスに後塵を拝する次第です」


「……そうですか」


「イナンボク夫人、その回復魔法で私に何をして欲しいのです?」


 その時に、コンコンとノックをして、入ってきたのは。


(おおう)


 髭がセクシーなダンディな紳士さんが出てきた。その紳士は私を見て


「今戻った、この方が、例の?」


「ええ、吹上ユツキよ、ユツキさん、紹介します、私の夫のネヴハラと申します」


「ネヴハラです。公国軍第三師団参謀を務めております」


「(こんなセクシーダンディがポルポ夫人の旦那、これが政略結婚か、あったな向こうでも、さぞかし冷め切った夫婦に違いない)初めまして吹上ユツキと申します。お目通り光栄に存じますわ」


「貴女失礼な事考えてるでしょ? ちゃんと恋愛結婚だよ、ラブラブだよ、というか、アナタも割と大概だなおい、追い出された理由がちょっと分かったわ」←イナンボク


「そそそそそそんなことありませんわわわおほほほほほほ」


「まあいいでしょう、ユツキ、会って欲しい人がいるのです」



――



 夫妻に通されたのは、とある部屋、そこには。


「…………」


 子供が寝ている。


 いや、最初は生きているとは思えなかった。

 

 身体はやせ細り、かろうじて呼吸によりかすかな胸の上下が無ければ、生きている証左がないと言った程に。


「余命一ヶ月です」


 絞り出すようなイナンボク夫人の言葉。


 なるほど、、、、。




「貴方の回復魔法で、息子を救って欲しいのです」





 そうか、私をここまで連れてきた用件はこれか。




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